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本当に、オフィスがないと企業文化は壊れる?リモートワークって合理的?──固定観念に縛られない、ベイジのワークプレイス戦略

オフィスワークとリモートワーク。あなたはどちらの働き方を希望しますか?そして、双方のメリット・デメリットをどう捉えていますか?

BtoBマーケティングとUX/UIデザインを強みとするWeb制作会社、株式会社ベイジは、コロナの流行を受けて2020年3月からフルリモートに移行。そして、9月からはオフィスワークとリモートワークを各自が選択できる混在型に切り替えました。

代表取締役の枌谷 力(そぎたに つとむ)さんは、「リモートワークは全員に向いている働き方ではないと確信した」といいます。インタビューを通じて見えてきたのは、フルリモートでの課題や、私たちが無意識的に抱いている固定観念。そして、これからのオフィスが担うべき役割でした。

「対面じゃないと文化が壊れる」は、間違った固定観念

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ベイジ社では、3年ほど前にもリモートワーク導入を検討したことがありました。しかし当時は、従業員の成果を管理することが難しいと感じて、断念。

今回、コロナの流行を受けて半ば強制的にリモートワークを実践してみたところ、意外な発見があったと枌谷さんはいいます。

従業員は、厳しく管理しなくてもしっかり働いてくれることがよくわかりました。むしろ、みんなが働きすぎてしまうことに気をつけないといけないくらい。

業務上の支障もなく、当初は「これならフルリモートを続けていける、ゆくゆくはオフィスをなくしてもいいかもしれない」とまで思いましたね。

コロナ収束の兆しが見えないなか、新しい働き方への手応えを感じたことが後押しとなり、全社的にリモートワークへの最適化を図っていくことに。

意識したのは、普段以上にコミュニケーション機会を増やすこと。メンバーはマネージャーと毎日ミーティングを行い、マネージャーは代表に週1回のペースで報告を上げる。こうした密なコミュニケーションによって、会えないなかでも従業員の様子をしっかり把握することができたそうです。

ボイスチャットツール「Discord」の活用も、大きな手助けとなりました。バーチャルオフィス内で誰かに簡単に話しかけたり、複数人で会議室に移動したりしながら、まるでリアルオフィスにいるような感覚でコミュニケーションをとっています。

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Discordを使ったベイジ社のバーチャルオフィス

枌谷さんは、新しい働き方を実践するなかで、巷でよく聞く「リモートワークでの弊害」に対しても疑問を抱くようになったといいます。

物理的にリモートが不可能な業態でない限り、デメリットはさほど多くないと思います。「リモートワークになると企業文化が壊れる」とよくいわれていますが、オフィスに出社しなくなったくらいで壊れる企業文化は、そもそも脆弱すぎるんじゃないかと。たとえば当社の従業員は、管理されなくてもしっかり仕事をしてくれます。これがリモートワークになったからといって、急に不真面目になることはありません。

それに、コロナ前からずっとリモートワークだけでやってきた会社もあります。そこに企業文化がないかというと、決してそんなことはないですよね。対面じゃないと文化がつくれない、対面じゃないと文化が壊れるというのは、実は間違った固定観念です。

非言語コミュニケーションを強みとする企業は、リモートワークを嫌がる傾向にあります。でもそれは、本当にリモートワークが難しいのではなく、「いつかは言語化すべきだったもの」が浮き彫りになるという課題を突きつけられることへの抵抗なのかもしれません。

リモートワークは、むしろオフィスの価値を高める

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リモートワークのメリットを実感し、一時期は「オフィスがなくてもいいかもしれない」と考えながらも、9月からオフィスワーク・リモートワークを併用することにしたベイジ社。

その背景にあったのは、従業員とのコミュニケーションから見えてきた、とある変化でした。

きっかけは、リモートでメンタルの不調を訴える従業員が出てきたことです。「出社するとなんともないのに、家で仕事をしていると頭痛がする」といった明らかな体調の変化が見られたり、なかにはまとまった期間休むことになったメンバーもいたり。

その他のメンバーも、口では「問題ありません」というけれど、疲れが蓄積している印象を受けたんです。

もちろん、問題なくリモートで働けている従業員もいますが、これは向き不向きがあるぞ、と徐々に思い始めるようになりました。

こうした従業員のメンタルの変化にいち早く気づくことができたのも、フルリモートでありながら密なコミュニケーションを意識していたからこそといえるでしょう。

また、「家では十分な作業スペースを確保できない」「小さな子どもがいて、集中できない」など、人によって自宅に働く環境を整える難しさも浮き彫りになってきたそうです。

9月からオフィス出社も可能にして、全社でアンケートをとってみたところ、「オフィスと在宅とを選択できるのがいい」という回答がなんと100%に。一方、それぞれの頻度については、人によってばらつきがあることがわかりました。

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(ベイジ社での従業員アンケート結果より)

フルリモートからオフィス・リモートの混在型に切り替えたことで、枌谷さんは改めて、オフィスの価値を再認識したといいます。

これからは、一人ひとりが自分の意思でワークプレイスを選ぶ時代になるでしょう。その選択肢のひとつとなるオフィスは、会社側が責任をもって提供したい。

オフィスは従業員にとっての貴重な選択肢であり、また、人と人が直で繋がれる場所であり、さらには会社のシンボルでもありますから。

たとえメンバー同士が十分に信頼関係を築けていたとしても、一生会わなくていいわけではありません。会社や仕事に対しての愛情や興味があれば、リアルな空間で体験したい欲求がおのずと生まれるものです。

仕事が好きなメンバーが集まり、いい人間関係ができている組織であればなおさら、オフィスというリアルな場が求められるのかもしれません。

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ベイジ社では、コロナの流行が収束した後もオフィスワークとリモートワークを自由に選べるようにし、その上で最適なオフィスのあり方を模索していくとのこと。

周囲を気にせずオンライン会議ができる電話ボックスのようなスペースを用意したり、オフィスに来る価値を高めるためにバーカウンターを設置してお酒を飲めるようにするなど、色々とアイデアを練っています。

緊急事態宣言が出された頃は、オフィス不要論をよく耳にしましたよね。当時は私もそれに近い考え方で、オフィスを持たないほうが生産的かつ合理的、そして最先端だと思っていました。

でも今は、合理性だけでは測れないものがあること、弊害があることもよくわかったので、オフィスが不要とは思っていません。むしろ、リモートワークが一般的になればなるほど、オフィスの価値は高まっていると感じています。

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週5オフィスから週5リモートへ切り替えたからこそ、双方のメリット・デメリットを実感したベイジ社。オフィスワークとリモートワークの混在型を選択した背景には、メンバーの声に寄り添って柔軟に働き方を変えていくという意思が強く感じられました。

これからのワークプレイス戦略を考える上で大切なのは、時流をとらえながらも、固定観念にはとらわれず、自社にあった働き方を模索し続ける姿勢なのかもしれません。

(執筆:中島 香菜/編集:澤木 香織/写真:森田 剛史)

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枌谷 力(そぎたに つとむ)
株式会社ベイジ 代表。
新卒でNTTデータに入社し、企画営業を経験した後、Webデザイナーに転身。制作会社2社を経て、2007年にフリーランスとして独立。2010年に株式会社ベイジを設立。
経営全般のみならず、企業のBtoBマーケティングやUX/UIデザイン、コンテンツ企画、ライティング、SNS運用、アクセス解析など、さまざまな業務を担う。