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ノーコード・ローコードツールは開発者のキャリアにどのような影響を与えるのか?

LCAP活用のために議論すべき「5つ」の通説


ローコード・アプリケーション・プラットフォーム(LCAP)に関する5つの通説について、ガートナーのダニー・ブライアン氏とポール・ヴィンセント氏が対談を行った。

その5つの通説とは次の通りだ。

LCAPにおける5つの通説とは (出典:Gartner(2023年6月))

実際に自治体や企業に対してノーコード・ローコードツールの導入を進めている立場として、1つずつ意見を述べていこうと思う。

通説その① ローコードはプロコードよりも生産性が高い

間違いなく、プロトタイピングという観点ではローコード・ノーコードツールの方が圧倒的に開発スピードが早い。プロトタイピングというのは、"あくまで作り込みは不要"という前提だ。

ローコート・ノーコードツールの多くは制約事項があり、その仕様に合わせて運用やUIに"妥協"しなければならない場面がある。つまり、ツールの選択によっては実現できない機能・仕組みが出てくるのだ。しかし、要望を全て叶えられるという点においては、プロコードが有利だ。

故に、開発スピードという観点ではノーコード・ローコードが優れており、実現性という観点ではプロコードの方が優れていると言える。

通説その② LCAPの中には、ベンダーロックインを軽減するものもある

これはノーコード・ローコードツールを導入する立場として、いつも悩む部分である。実際、LCAPであっても、作り込めば作り込むほど、この"ベンダーロックイン状態"に近づくことは間違いない。

非エンジニアでも利用できるツールとはいえ、一定の学習コストは発生するし、"ローコード"ということは一部開発が発生していることもあるため、利用者の技術スキルによってはベンダーに依存せざるを得ない。

ベンダーロックインを避けるためには、自社でLCAPを活用し開発する前提で、アドバイザー的な伴走支援に入ってもらうのが良いと考える。

通説その③ LCAP導入の最大のリスクは、市民開発、拡張性、セキュリティ、ベンダー・ロックインのいずれかである

記事では触れられてなかった『拡張性』について考えてみる。

LCAPの多くは、先で述べた通り制約事項があり向き不向きがあるため、それを補えるようにAPIが提供されている。故に、複数のツールを連携することで大概のシステムを開発できるようになっている。

また、サービス連携のツールも、Asteria Warp, Mulesoft, Power Automate, Zapierなど、多く提供されている。そういう意味では、拡張性は無限大だとも言える。

一方で、LCAPのツール自体の機能アップデートは、ツールを提供している開発会社の開発力に起因する。Microsoftが提供するPower系のサービスは相互の互換性が高く今後もAI等の新しいサービスのリリースが期待できるが、国内の企業が提供するLCAPについては、今後どこまで機能拡張されるかは判断が難しいところだ。

通説その④ 適切なLCAPを選定すれば、1つで事足りる

正直これは、大抵は1つで事足りる気もするが、別に1つに絞る必要もないと感じる。先に述べたように、サービス間連携も比較的容易に実現できるようになってきている。

特に国内の企業においては縦割りの組織文化がいまだに色濃く残っている。横串で1つのツールを導入し全社的な方針を定めたとしても、各部署毎の最適化を図るためには、連携を前提とした別のツールの導入もやむを得ないだろう。

通説その⑤ LCAPの導入が原因で、プロ開発者が失職の危機にさらされている

これは近年に限らずだが、ITという業界においては常に最新の技術を学ばない限りは生き残れない。『プロ』であればそれをわかっているはずだ。

ただ、今まで開発と言えば"プログラミング"のような"How"ばかりに気を取られていたが、これがLCAPやAIに置き換えられていく以上、今後開発者に求められることは"Why(なぜシステムが必要なのか)"や"What(何のシステム、機能が必要なのか)"の部分だと思う。顧客の言われた通りのシステムを作ればいい、そんな考え方は淘汰されていくだろう。


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Jumpei Yamamoto
1987年生まれ。慶應義塾大学大学院を修了後、キャリアコンサルティング・IoTコンサルティング・新規事業立ち上げなど幅広い業務に携わる。2019年にワークログ株式会社創業。現神奈川県庁DX推進アドバイザー。 https://www.worklog-inc.com/