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ポケットにいっぱいの


どこから吹いているのかもわからない風が首筋を撫でる。定間隔に置かれた椅子とライトは、いつも変わらずにと手入れをされている。

「わたしはこうなの。最も適した形状をしているはずよ」

背もたれを調整できない席がかたる。あえて不満を漏らす輩もいないが、素晴らしいと讃える人もいない。

「でも、ぼくはわりと好きだなあ」
「ね、意外とわたしも好きかもしれない。まあ、家にはいらないけどね」

わずかに灯りが暗くなる。息をひそめ、これからはじまるものがたりに彼らは胸を躍らせた。


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