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まるい世界の歩きかた


まるい世界の歩きかた。題名は内容を語る。
本を手に取り、想像できない内容に心躍らせる。彼女がいるのはまるい世界ではなかった。だからこそ、理解できたらとねがった。

碁盤のように細かく張られた網に吊り下げられた家と街。人は糸を伝って生活し、命が尽きれば網から落ちていく。それが当たり前となっていた。

網の底になにがあるかを人は知らない。戻ってこれた者もない。人々は世界が網で構成され、先にも後にもそれだけと信じている。

「ねえ、世界が丸かったらどうなると思う?」
「きっと誰も死ななくなるさ。だってそうだろ?底がなくなるんだから」

彼女の頭は思い描く。誰も落ちることなく、街や家が足元から遥か頭上を覆っている世界。そこなら空も落ちることはないだろうか。

まるい世界の歩きかた。虜になったことに気付かず、彼女は網の上を歩きはじめた。


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