恐縮ですが、育児中。 《3》 週末
その昔『日曜日が待ち遠しい』なんてフランス映画がありましたが、とんでもない。育児者にとっての週末は、待ち遠しいどころか憂鬱の極致です。
なぜなら、平日は保育園に預けている子どもと朝から晩までガチでつきあわなければならない2日間、それが週末。
毎週末ごとに「今日はどこ行くの?」「何して遊ぶの?」とワクワクテカテカした子どもの目。少なくとも我が家の場合「どこにも出かけず、家でまったり」なんて選択肢は存在しません。
家に閉じこもっていたら、絶叫しながら跳ね回り、父親のボディに執拗なまでのパンチやローキック攻撃を続け、所有する全てのオモチャを部屋中にばらまき、家中が混沌という名の戦場と化すに決まっています。
この活火山のようなエネルギー、発電か何かに有効利用できないものかと真剣に考えざるをえません。
まして、これが祭日を月曜に振り替えた3連休ともなると、息子の相手をしつつも「何かの罰ゲームか、これは?」と思ってしまうシシュフォスの重労働。
政府に、本気で少子化対策に取り組む気があるならば、連休など即刻廃止していただきたい。いや、なんなら土日の休日も廃止して週7日労働にせよ! 庶民の休みなど盆正月のみで良し!
……いかんいかん、つい興奮して全体主義国家への内なる偏向を暴露してしまいました。江戸時代の丁稚奉公か。
えー、とにかく、そういうわけで、土日はたいがい何かしらの「イベント」を企画せざるをえない状態。
経験者からは「子どもは水につけると弱る」なんてアドバイスもいただきました。確かに、海水浴やプール遊びした夜は、疲れて寝つきが良くなる気はします。
が、実は父親である自分自身が、水泳もアウトドア・スポーツも苦手なタチ。水着の女性を眺めながらお酒を呑むのは大好きなんですけどね。
なので、イベントと言っても「文化系」に偏りがち。今日は博物館、明日は美術館、来週は動物園で、その次は水族館。
まあ博物館で恐竜の骨なんか見せても、小1時間で飽きちゃうだろうから、その後はオモチャ屋をひやかして、フードコートでクレープでも食べて。遊覧船に乗せて、夕方になったら電車で帰るか。
……などと、息子が寝ついた金曜の深夜、ネットで検索しながら明日のコースをネチネチ考え続けるわけです。
ん? この感じ、過去に経験あるなあ? と思ったら
何のことはない、デート前夜に、ああでもないこうでもないとデートコースを思案していた、青臭い学生時代の自分です。
「明日はまず、このカフェでお茶して、ここで食事して、ディスコで盛り上がると。帰りは、駅までの道がちょっと暗がりになっているから、そこでキスできる。うん、これでよし」と絵図を書いてニヤニヤしている若者。何が「これでよし」だ。
実際に遊ぶこと以上に、事前のプランニングに熱中してしまう本末転倒な体質、どうやら今も変わっていないようです。
そして動物園を訪れれば、久々に眺める動物の生態も新鮮で「象の目ってかわいいよね!」などと柵にしがみつき、「早く次に行こうよ」と催促されてしまう。
水族館では「白身に赤身、光り物、うわぁ大きいエビ! こいつを姿造りにして冷酒の一杯も……」とやけにネットリした視線で妄想を巡らせては、「もう帰ろうよ」と子供にせかされてしまう。
週末の企画、なんだかんだ言いながら、一番楽しみにしているのは自分だったりして。
憂鬱だ面倒だなどと不平をこぼしてしまい、
まったくもって恐縮です!
明和電機ジャーナル 第17期 第3号 (2010年9月15日発行) 所収, に加筆訂正
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