【花✕文学】お花見気分のプレイスリスト
【あの日に花を咲かせましょう】
外は雨。客のいない真夜中のバー。
女性が来店した。ずぶ濡れで目は赤く、訳ありの様子だ。
「まかせる」
「灰ボールはいかがでしょう。忘れていた思い出に花を咲かせる不思議なお酒です」
「今日は忘れていたことだけを話したい」
女性は笑い、俺は乾杯に付き合うことになった。
灰色で濁った見た目だが味は悪くない。
会話は弾み、上京の話、学生時代の恋話、幼い頃の夢物語……二人の歳月を逆行した。
酔いもまわり、話は前世の記憶にまで遡る。
そして、思い出した。ずっと遠い昔に俺たちは恋人同士だったことを。桜木の下で思いを告げ、戦火に引き裂かれ、互いに命を絶った。
彼女の目は真っ赤だ。
「あっ」
グラスの灰ボールを見ると、色鮮やかなピンクだ。薄暗い店内で夜桜のように浮かび上がっている。本当に思い出に花が咲いたときにだけ起きる美しい変化だ。
「きれい……」
あの日と同じ言葉。風に舞う無数の花びらが見えた気がした。
【wwwww】
『アイツ、マジ気持ち悪いwwwww』
偶然、ネットでクラスの掲示板を発見した。
どうやら、僕には草が生えているらしい。
この機会に草を刈ることにした。
まずはお菓子をやめて、運動を始めることにしよう。
『あれ? アイツ、痩せてね.....』
草を刈った僕は、種を蒔くことにした。
今は髪型と服を研究中だ。
あと、眼鏡からコンタクトにしよう。
『なんかアイツ、明るくなったなYYYYY』
蒔いた種から芽がでたみたいだ。
友人もできて、週末には買い物にでかけたり、バンドしたり。
今は学校にくるのが楽しい。
『最近、アイツ、やたらモテてるよな♀♀♀♀♀』
ついに蕾をつけた。
僕はクラスの人気者になり、廊下を歩けば女子たちが追いかけてくるくらいだ。
初めて彼女もできた。
ここまできたら、大輪の花を咲かせるぞ。
『アイツ、マジ卍卍卍卍卍』
よくわからないが、すごい花を咲かせたみたいだ。
【ようこそ、花の湯へ】
温浴施設『花の湯』へようこそ。
地中から根で汲み上げた養分たっぷりの温泉をぜひご堪能あれ。
いくつかご紹介を。
四季折々の美しい花を下から鑑賞できる生け花湯は、心も体も休まります。
花たちが奏でる生花演奏で賑やかな花唄湯は、のぼせ過ぎにはご注意を。
お一人様でしたら、湯船に浸かると天然の蜜が溢れるつぼみ湯で贅沢な一時を。
道管エレベーターで上へ参りますと、人気の葉脈スライダーが。コースが複雑でルートが不規則なため何度も楽しめます。
お疲れの方には、お好きな花と一緒に体全体を刺激する押し花マッサージもございます。
他にもたくさんのお風呂がございますが、蔓で塞がれている場所にだけは立ち入らないようお願いします。
では、ごゆっくりどうぞ。
またですか……まったく困ったものだ。
ほら、あそこの白い固まりのことですよ。
注意してもたまにいらっしゃるんです。
湯畑に入って、湯の花になってしまう方が。
【ニューライフセーバー】
満開の桜。
俺と後輩は、大勢の花見客で賑わう会場の監視中。
「先輩!救助者を発見です」
双眼鏡を覗く後輩の声。直ちにゴムボートで急行。
酒に溺れた新入社員だ。
酒と不満を吐かせ、水を飲ませる。
「先輩!向こうで、うぬぼれた新入社員がぷかぷか浮いています」
『軌道確保し、マウストゥーアリガトウゴザイマウスだ!』
俺はその新入社員に感謝をチュウ入。
彼の良さを残しつつ、地に足もつくはずだ。
『瀬崎、今日は上がっていいぞ』
「でも」
『客も減ってきたからな。ゆっくり休め』
「はい!」
瀬崎は、この春に配属された期待の新人。まだ経験は浅いが、大事に育てたい。
ん?あれは瀬崎。
『おい!今日は上がれって……』
そこまで口にして、俺は隠れた。
『仕事とプライベートは違うが、やればできるじゃねぇか』
桜の木の下には、瀬崎と彼女。
『溺れるんじゃねぇぞ』
桜舞う春の空を泳いで、俺は救助へと戻っていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
拙作の中から花をモチーフとした物語(曲)を集め、プレイリストを作成してみました。
そるとばたあ@ことばの遊び人は、このような400字のショートショートの中に様々な遊びを混ぜ込んだ物語を書いております。
少しでも楽しんでいただけた方は、是非またふらっと遊びに来て下さい!
僕なりのエンターテイメントで楽しい気持ちにさせます。
noteももっと勉強して、もっと自由に楽しませられるようになりたいです。
そるとばたあ@ことばの遊び人 presents
no上LIVE vol.8
セットリスト
1.あの日に花を咲かせましょう
2.wwwww
3.ようこそ、花の湯へ
4.ニューライフセーバー
文章や物語ならではの、エンターテインメントに挑戦しています! 読んだ方をとにかくワクワクさせる言葉や、表現を探しています!