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小1の息子が学校へ行きたくない、と言い、発達支援施設に相談に行くまで備忘録②【宿題困難】

前編はこちら。やる気満々優等生タイプの息子が学校へ行きたくないと言った。

担任の先生との面談

小1の息子が不登校気味になってから1か月程度。
本格的に学校を嫌がり始めてからすぐに、先生との面談も予約をして時間を作っていただいた。

放課後の面談には担任の先生と教頭先生がいらして、本当は旦那さんも一緒に行きたかったけれど圧をかけるみたいになるのも嫌だなと思ってわたし一人で伺った。

このnoteではアフリカ一人旅、登山用具店勤務などを経て、現在はECサイト経営をしつつ恵那市笠置町にUターンし里山暮らしをしているわたし(佐藤あやみ)が、子育てのことや自然のこと、学んだこと、経験したことをアウトプットしています。テーマは「ともに生きる」。どうやったらともに生きるコミュニティを形成できるのか?ということを考えながら活動しています。

まず息子が学校へ行きたくないと言っているということ、宿題に困難を抱えているということ、反復や書き取りの授業が嫌だということ、ルールが厳しいのでしんどいということ…などをお話した。
特に伝えたかったのは、反復の嫌がり方。わたしも理解不能なほどに嫌がっているということ。反復練習は好きな子のほうが少ない。でも、息子の嫌がり方はちょっと異常だ。これをどう伝えたらわかってもらえるのかわからなかったが、とにかく熱心にこの点を伝えた。

担任の先生は「ちーくんは毎日すっごく元気に通ってくるし、授業にも意欲的で手を挙げるしみんなとも仲良しなので…正直家でそんなに困難があるというふうには全く見えなくて、びっくりです。」とおっしゃった。

息子は完璧主義なため、きちんと手を挙げる・ルールをしっかり守る・宿題を提出するなどについては、そつなくこなしたがる。
かなり学校ではピンと張りつめているのだ。ルールをしっかり守るのに、本当はルールが厳しすぎる!と思っているわけだから、その分家で糸が切れる。
(わたしがいいかげんなため提出物などの忘れ物をすると、息子はかなり落ち込む。息子よ、ごめん)

ここでは詳しくは省くけれど、息子は赤ちゃんの頃からかなり過敏なところがあり、そしてこだわりが強くず~っと泣いている子で母としては少々育てにくかった。機嫌のよいときがほとんど無いのだった。(いま当時を振り返ると、よくぞ乗り越えたなと思う。本当にみなさんのおかげです…!)しかし、保育園のときは、園にいる間は「ルールを守る良い子」と見られていた。ルールを守り、かつ空気を読むので担任の先生に頼られたりすることも多かった。
家でそのぶんのストレスを、わたしに甘えることによって発散していたのだろうとおもう。

さて、学校生活について担任の先生はこのように語られた。

「3月になると、もうだいたいカリキュラムは終わるので、振り返りをするんですね。1年の総ざらいと言いますか。だから3月はずっと反復をしています。もしかしたら、それがちーくんの負担になっていたのかもしれませんね。

提出物に関しては、まあまだ1年生ですから、そんなに厳しくは言っていないですしね。宿題も、学校でやってもいいよ~とは言ってありますよ。いまはいろんな用事がある子が多いですから。
実際ちーくんも、授業中にプリントをやるときはみんなと同じ速度でできます。
どうでしょう、ちーくんも朝登校後にみんなと宿題をやるというふうに切り替えてみたら?」

なるほど、その手があったのか。
息子は宿題は家でやるもの、と思っているため、もしかしたら嫌がる可能性もあるけど、1時間半を泣きながら不毛に潰すよりはみんなと一緒に朝10分で宿題を終わらせた方が精神衛生上良い。

そして忘れ物に関しては息子の責任感が強すぎるために先生との行き違いが起こっていたことがわかった。

また教頭先生は、いつもみんなに声掛けをしてくださっているそうで、息子も慕っている。

教頭先生はこのように語られた。
「今日ちーくんに、プリントやるとどんな気持ちになるの?と聞いたんです。そしたら『なんかモヤモヤする』というので詳しく聞いてみたら、『例えば1+1=2だけど、もっと違う見方があるんじゃないかとか、もっと違った簡単な解き方があるんじゃないかとか、気になるの。それでいらいらもする』と言ってましたよ。でも視点をいろいろもっているってことですから、とても大事なことですよね。」

担任の先生も教頭先生も、息子に寄り添って考えてくださっているということで、とても安心した。

先生と面談する前は、こんなことを言ったら、公教育へ文句を言っているようでモンスターペアレントと思われるんじゃないかとか、先生が嫌な思いをしないだろうか、などと心配をしていた。
しかし面談が終わってみると、先生たちはとても協力的で、従姉妹のAが言った通り、連携して息子のサポートをしてくださるとのことで、希望が見えた。

こんなことなら、早く相談に来ればよかったなあと少し後悔。

市の発達支援相談室へ行く

先生との面談の次の週、市の発達支援相談室を予約して行くことになった。

K先生という60代くらいの方は迎えてくださった。

発達についての研究は日進月歩なので、正直60代の男性に迎えられ「このひとに最新の発達研究がわかるんかい?」と少々不信感を持ってしまった。
市の教育機関は場合によっては天下りに使われることもしばしばだからだ。

しかし、そんな失礼な見積もりは誤りだった。

K先生はかなり発達や支援について勉強しておられ、「僕もASD傾向があって、そんでADHDよりでもあるもんですから。子供たちの気もちは少しはわかるつもりでおります」と控えめに言われるので、すっかりわたしは安心した。

やはり相手が自己開示をしてくれると自分も心が開いていく感じがする。

わたしは発達の話をするのに役立つだろうと思い、以前息子の成長についてまとめたメモを印刷していった。
一人目の子なので、誰かと比べるということもなく、なんだか自分と違うな~大変だな~と思っていたのだけれど、最近になって友人の子の話を聞くと息子のこだわりがかなり強いこと、過敏で繊細であることなど、息子の特異な部分が見えてきた。主観ではあるけれども、どのような印象を私が受けたかであるとか、こんな出来事があった、などを書いた。

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突然数千字あまりある大量のメモをばさっと出したのにK先生は迷惑がらずに「うわあ、これはありがたいですね。こういうのは大事ですよ。」と丁寧に読んでくださった。

もし発達相談に行ってみたいという方がこのnoteを読んでくださっているのならば、簡単でもいいから子育ての振り返りをメモして持っていくのをおすすめする。

メモは息子の発達や成長の凸凹について、不安なところ、大変だった点、あるいは秀でている部分、感心する部分などを母目線で書いている。

いままで育てにくいところがあったり大変なことがあったりしたものの、小学校では友達とトラブルになったりしているわけではないし、授業も落ち着いて受けていることから、「まあ、パッとみたかんじ『発達障害』という感じではないでしょう。もちろん医師ではないから判断できないけど」とのこと。

「ただ、好奇心や言語能力、論理だてる能力が突出しているので、パワー底上げタイプ」

従姉妹が言っていたように、認知能力が高いために低学年のうちはしんどいかもしれない、ということだ。

それと書き取りが嫌い、というのは発達の凸凹がある子によくある特徴で、書き取りが嫌いというよりかは、うまく紙をとらえられないから書きにくく、結果タブレット端末のほうがラクという結論になるらしい。

「これを使うと楽になりますよ」と、K先生は1枚の下敷きを見せてくれた。

魔法の下敷き

やすりのようにザラザラした下敷きだから、鉛筆の芯が紙に付着しやすく、不器用な子でもうまく書けるようになり書き取りしやすくなるそう。

後日さっそく試したところ、息子は「これなら書きやすい!」と喜んでいた。えーこんなに簡単なことだったの!?と驚いた。

前世はフランス人だった?の謎が解けた

息子は味覚もかなり敏感で、生まれながらの超グルメ。

塩麴をほんの少し入れたパスタを食べさせたら「米の味がする」と言ったり、ワインを少し入れたトマト煮込みは「葡萄の味がする」。
チーズを焼いて洗ったあと、焼き鳥を同じフライパンで焼いたら「ん~これチーズの味…」(ちゃんと洗ったんだけどな?そして父ちゃん母ちゃんは気づかなかったけどな?)

そして食べ方も独特で、教えたことがないのに、フランス人みたいな食べ方をするのだ。

例えば焼きりんごにチーズ+はちみつ+こしょう、とか。
柿に生ハムとこしょう、とか。
ステーキに柚子ジャムベースのソースとか。
パルミジャーノ・レッジャーノにはちみつとアーモンド、とか。

本当に教えたことがないのにこういった食べ方をするものだから、不思議で仕方ない。冗談で「ちーくんは前世フランス人だったんだね」と言っていた。

この謎を、K先生が解いた。

「こういった子は、ワーキングメモリーが多いので、一瞬テレビでみたことや立ち聞きしたこと、ちらっと本で読んだことなどをいつまでも覚えている。それで、味覚も敏感なものだから、そういった材料が目の前にあると、記憶を組み合わせて調味料も組み合わせて、美味しい食べ方を生み出すんでしょう」

なるほど、わたしが教えたつもりやテレビでみた覚えが無くても、息子はちらっとみて覚えている可能性がある。

前世フランス人の謎が、突如解けた。

運動・手先の動きは得意ですか?

K先生が訊ねた。

ちょっと気になっていたこととして、まだ蝶々結びができないということや、クラスのほとんどが乗れるようになっている一輪車にまだ乗れない、ということがあった。

息子の学校は3年生で一輪車の発表がある。2年生には確実に乗れていないとけっこう大変、と担任の先生に言われた。

わたしも一輪車に乗れたのは2年生のときだったので、あまり気にしていなかったのだけれど。
息子は運動が得意かと言われると、ものすごく得意ではなさそうだ。かといって、ものすごく苦手というわけでもない。

それをK先生に話すと、「こういう子は協調運動が苦手なことが多いです。ただ走るとか踊る、はできるけど、縄跳びや一輪車など道具を使って身体に制限がかかると動きにくくなるんです。あとは、箸がうまく持てない子も多いです」

息子のスポーツテストはいつもB。

ものすごく運動神経が良いわけではないけれど、破滅的に悪いわけではない。明らかに体幹がゆるゆるだったり見てすぐに支援が必要とわかる状態の子もいるだろうけれど、こういった点を鑑みても、息子は「支援」に関しては対象外なのかもしれない。スポーツテストBは、まあしょうがないか…と思っていたときK先生がこう言われた。

「お母さん、息子さんが苦手だからといって、好きなことだけさせればいいってわけではありませんよ。例えばADHDの子や多動性のある子は、ピシッと静止する空手をやると、症状が和らぐというケースもあります。ぎゃくにちーくんのようにジーっと観察しているタイプの子は、テニスなど道具を使って体を大きく動かす協調運動を促すと、できることが多くなります。」

息子は感覚過敏で擦り傷などもすごく痛がるし、知的好奇心のほうが高いのでスポーツは二の次になっていたけれど、スポーツも楽しむ程度にやってみてもいいのかなと思った。

そういえば今年は彼はスケートにたくさん行きたいと言って、近くのスケート場へ何回も通い、けっこう上達したのだった。集中して何時間でも滑っていられる子なので、ゆっくりながらも確実に上手に滑れるようになった。息子は息子なりに、協調運動ができるように自分で成長しようとしていたのだ。

書き取りも協調運動だからしんどい

そして宿題のひとつでとても嫌がっていた書き取り。
見本に習ってプリントにひらがななどを書いていくだけのことなのだけれども、実は目を使って、それを記憶して、違う部分に同じものを手と鉛筆を使って書く…という協調運動が苦手な子にとっては難しい作業なのだという。

わたしにとっては「書き写すなんて、超簡単じゃん」という感じなのだが、息子にとっては目・鉛筆を持つ手・プリントを押さえる手、などいろいろな困難な動きを無理に同時にやらねばならなかったのだ。

こういった発達の勉強をするにつれ、息子のことだけならず、自分の得意なこと苦手なことも改めて俯瞰する良い機会になった。

たとえば私はクリエイティブ感のない単調な作業がとんでもなく苦手だ。
書類を出すために何度も同じ住所を書く、とか、ひたすらコピペをする事務作業とか、編み物や裁縫など。単調な作業をしていると全身がむずがゆくなってきて息が荒くなる。逃げ出したくなって悶える。家庭科の編み物の宿題はとうとう仕上げることができなくて途中で提出してしまった。

息子が反復や書き取りが嫌い、というのは同じように全身がむずがゆくなったりしているのかもしれない。

市の発達支援と学校と家庭の連携をつくる

最後に、WISCについて受けられるかどうかK先生に訊ねた。学校へ連携をお願いするときに、やはりWISCなどの判断材料がないと、うまくコミュニケーションが取れないだろうと思ったのだ。

学校へWISCの結果をもっていけば、こういう傾向があるから、こんな指導にしましょう‥このカリキュラムについてはちょっと頑張ってみんなと一緒の指導で行きましょう、などと一緒に息子の未来を考えていくことができる。

お母さんがご希望なら一度やってみましょう、とK先生が仰ってくれた。

そしてこれからの方針としては、ひとまず担任の先生や教頭先生と連携を取りながら宿題のやりかたなどを変更することにより息子が安心して学校へ行けるようにするということ。
さらに、市の発達支援機関としてはWISCの実施と学校へのアドバイスや、発達支援クラスのすすめなどができるということだった。

家庭においては、現在もやっていると思うけれど、息子が好奇心を持てることへのサポートやスポーツの促進を引き続き継続。

最後にK先生がとても嬉しいことを言ってくれた。

「しかし、本当にとてもお子さんに向き合われていて、ちーくんがまっすぐに育っているということがお話を聞いていてわかります。
できないことや苦手なことがあったら、『じゃあどうしたらいいか?』というふうにポジティブに考えていらっしゃるので。

発達に凸凹がある子たちのなかでも、こんなふうに接される子は少ないです。やはりお父さんお母さんがた、なんでうちの子はみんなと違うの?と思ってしまいがちですしそれを子供にぶつけてしまうことが多い。
発達に凸凹がある子たちがすべてこのように否定されずにのびのび丁寧に育ててもらっていたら…と思ってしまいました。」

いままで息子の育児に関しては悩みながらやってきたけれど、それでもいかに息子がハッピーに、かつ将来しっかり自立できるように、ということを考えて勉強して実践してきた。

わたしだって声を荒げる日が全くないではないし、息子にイライラが伝わってるなと思う日もある。まあそれでも自己採点70点くらいで、息子に悪い影響が出ないように、それと息子がキラキラと輝く笑顔でいられるように、ということを念頭に頑張ってきた。
しかもこれもわたしだけの功績ではもちろんなく、子育てにフルコミットしてくれる夫や、同居母、現在の家の環境、次男があまり手がかからないことなど、いろいろな状況が重なってできていることである。

まだ7歳の息子だけれども、いまのところの育児はこのように褒めていただいて、安心することができた。

「お母さんが安心するのが一番大事です」とK先生も最後に言われた。

市の施設から帰ってきたら肩の荷がふっと軽くなったのを感じた。やっぱり不安だったんだ、わたし。

蛇足:里山を使ったSTEAM教育ができないか

わたしもこの1年、ちょっと公教育からはみ出し気味になった息子と向かい合うことで、発達や育児に関する勉強をかなり深めた。

我が家では、息子が1歳すぎのときから意識したわけではないけれど、STEAM教育をしてきたと思う。

STEAM教育(スティームきょういく)とは、 Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習する「STEM教育(ステムきょういく)」に、 さらにArts(リベラル・アーツ)を統合する教育手法。

息子がそれらにちょうど興味があったから、ということが大きいのだけれど、週末のたびに一緒になって自然を探索したり図鑑を広げたり、木を伐ったり、文化や歴史を学んだり、川遊びをしたり、数学をやったり絵具で絵を描いたり…という勉強を点で見ず、面でとらえるようになれる訓練のようなことをずっとしてきた。

たぶんこういうことをしたら子どもが喜ぶし楽しそうだな~と思ったことをやってきただけなのだけど、あとから調べたらそれがどうやらSTEAM教育と名が付いていることを知った。

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そして自画自賛だけど、我が家の方針はフィールドワークが根底にあるので、全体の勉強を五感でとらえるということができていると思う。

(最近のSTEAM教育では、名前だけが独り歩きして、肝心の「五感で知る」ということが抜けてしまっているようだ。)

長年フィールドワークを含む多面的な学びを続けてきたおかげでいまは息子は環境問題への関心が高く、ゴミ拾いや生物多様性の研究をしたいと言っている。

川や山、野原などのフィールドをつぶさに観察しているから、外来種の存在にもすぐ気が付くし、プラスチックごみの問題などにも敏感だ。

我が家の暮らしている里山には、山、川、水源、生物、森林、鉱物、畑、食糧、エネルギー、など研究対象になるものがたくさんある。多面的にものを見るようにできる練習の場としてはぴったりなように思う。

この素晴らしい世界を他の子たちにもぜひ見せたいし、息子もフィールドワークの仲間がいたら楽しいだろうな、と思うのだ。

まだ構想段階ではあるけれど、生物の観察やデータ取りのフィールドワークをできる、開かれた場を作れたらいいなと願っている。


追記その後WISCを受けた結果。



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