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小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(23)君を見つけて
Chapter23
目の前に突如現れたレナに、驚きを隠せなかったトムは言葉に詰まった。同時に、自身の体格や服装が元の状態に戻ったことに気づき、思わず両手を前に出してグーパーし始めた。
「ぷっ、何してんの? やっぱり、はぐらかされちゃったか」
レナは立ち上がり、くすりと笑いながら後ろを振り返ってブランコに向かって歩き出した。
「レナ! この間はごめん! 君に会ったら、まず最初に謝りたかったんだ!」
勢いよく立ち上がったトムは、レナの背中に靡く綺麗な髪に見とれながらも、自分の足元の異変に気づいて声を上げた。
「あっ、裸足だ!! 僕の靴がないぞ!?」
レナは立ち止まり、再びトムの方を振り向いた。
「お砂場遊びの時は、いつも裸足じゃない? クックが汚れちゃうからね?」
「いや、今はもうそんな⋯⋯子供じゃないんだから」
「靴が履きたい?」
「そりゃそうだよ。どこへ行っちゃったんだろう?」
砂だらけの足裏を見ながらトムは答えた。
「トム、今のあなたはとても混乱していて⋯⋯逆に感情を抑え込みすぎていると思うけど、落ち着いて聞いてね」
「⋯⋯何の話?」
「ひとつ⋯⋯たったひとつのルールさえ守れればいいの。あなたの性格はよく知ってるから、なるべくパニックにならないように教えてあげる」
いつになく真剣な面持ちで語りかけるレナに、トムは少し身構えた。
「な、なんだろう? 悪い話かな?」
「これからあなたが目にするもの全てに対して、『疑わずに信じる』こと。少しでも疑念を持ったらダメ。ここはそういう世界なの」
あっけに取られたトムは、彼女が静かに目を閉じ、再び目を開くまでの一連の動作を見つめ続けた。その後、レナは唐突に彼の足元を指さして言った。
「靴はそれでいい? ごめんね、いつもの運動靴じゃなくて」
「あっ!! これは⋯⋯サンダル!?」
一瞬、足の指にむず痒さを感じたトムは驚いた様子で言った。彼の素足にはいつの間にか緑色のサンダルが履かれており、それを見たレナは笑いを堪え切れず、両手で口元を抑えた。
「ごめん⋯⋯いつものトムのユニークな発想が浮かんじゃって⋯⋯ぷっ、トムだったらきっと、そんなこと考えるんじゃないかって⋯⋯あはは!」
「これ⋯⋯健康サンダルだよ? イボイボが付いてるやつじゃないか。いや⋯⋯それより、これは一体なんなんだ──」
「ダメ! 全部受け入れて! そういうものなんだって、疑っちゃダメなの!」
自宅の脱衣所に置いてある足ツボマットをこよなく愛するトムは、そのサンダルの心地よさにすっかり魅了され、久しぶりに緊張が解けてリラックスした気分を味わった。
「とりあえず、ブランコに乗らない? トムがいつも言ってる『優先順位』を決めて、色々と話しておかないといけないから」
今のテンションならば頭を整理し、落ち着いて話を聞けそうだと感じた彼は、言われるままにレナの後をついて行った。
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