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間取りの誘惑に負けて『変な家2』

『変な家』だの『変な絵』だの、何やら奇妙なタイトルの本が最近よく新刊の棚に並んでいるなあと何となく認知はしていました。同じ方が書いていらっしゃるとは全然存じ上げず。それでも、どこの大手の本屋さんでもあんまり長らく面陳列されているので、ついにどれどれどんなものかと手に取ってみたら…。

間取りミステリー。

とな。…なんと。間取りが鍵になるミステリー!?ちょっ、面白そうじゃないの。
いやいや、待て待て。装丁を見なさい。どう見てもヤバそうな人(仮面?)の写真もあるし、明らかにガシガシ殺人事件が起きるタイプのほうのミステリーじゃないか。そっち系のミステリーも、ホラーも、あんなに苦手って普段から豪語しておきながら、なぜこんな本(失礼)に興味をひかれている!?

それはね、もうかれこれ15年以上前に読んだ純粋な間取りの本が、当時の私にはなぜかすごくツボって面白かった記憶があるからなのです。微かな記憶を頼りにAmazonで検索してみたら…ああ、あったあった…!!これこれ。

『間取りの手帖』- 著者:佐藤和歌子さん

もう中古でしか取り扱いが無いのかな。私が持っていたのは、もうちょっと縦長で薄緑色の装丁だった記憶があるので、これは新装版なのかも。いやあ懐かしいなあ。これ、何が面白いって、「いや、嘘でしょ!?」「なんじゃこりゃ!?」ってなるとんでもない間取りばかり紹介されていて、しかもどれも実在するものだそうなので。

確か、著者の佐藤さんが間取りマニア的な方だったはず。プロフィールを見てみると…「間取り収集家、マッド・マドリスト」ですって。Mad Madorist!?ああもうすごいハイセンス。続編もあればぜひ読みたいなあ。最高にシュールで面白かった。

私自身といえば、何らかの間取りやら設計図やらを作る機会がある度に、異常に幅のある廊下、無茶苦茶な動線、不便なトイレ、半端な形の部屋などを生み出す天賦の才があったようです。図面におけるセンスのかけらも無いので、建築家だのマドリスト(?)だの、私に皆無の能力をお持ちの方々は素直に尊敬してしまいます。

そんな玄人による鋭いツッコミや、真面目なのかふざけてるのか分からない解説と共に間取りを眺めると、こんなに間取りオンチな私でもついクスッと笑っちゃう本でした。

さてさて、閑話休題。
そんなわけで、絶対怖いし後味も良くないだろうと分かっていたのに今回つい出来心で手を出してしまったのが、こちら。

『変な家 2』- 著者:雨穴さん

はい、予想通り。おどろおどろしい話、血生臭い話、救いのない話、のオンパレードでした。うう。だからやめとけって言ったのによぉ、過去の自分よ。

でもね、白状します、創作とはいえひとつひとつの間取りを見て、どこが変か考えたり、トリックを推理したり、どの話と何が繋がるのかを考えたりすること自体は、うん、面白かった。

昔読んだあの『間取りの手帖』の、次はどんなぶっ飛んだ間取りが出てくるんだろうという期待感が頭の中で常にリンクし後押ししてくれていたおかげで、凄惨なお話でも何とか次に進むことができました。ありがとう過去の記憶。

間取りにまつわるミステリーに興味がある人にはオススメかな。でもやっぱり私は、謎解きは好きだけど、物々しくないやつがいいな、といういつもの感想に結局落ち着きました。

あの平和でマニアックな『間取りの手帖』の続編が出ることを、これからも密かに期待しています。


微力ながら、できることを。リンク貼ります。

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