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【間違いない】The Smiths(ザ・スミス)を知るうえで欠かせない<10曲>はこれ!

モリッシー、2023年11月来日!

モリッシーの2016年10月以来、約7年ぶりとなる来日が発表されております。ザ・スミスのデビュー40周年にあたる本年(2023年)、モリッシー”40 Years of Morrissey”と銘打ったワールド・ツアーをスタート。その一環として、東京での一夜限りの超レアな公演が実現します。

モリッシー来日公演!

そんな絶好の機会にやっぱり聴きたくなる、モリッシージョニー・マーらが在籍した、80年台のUKシーンを代表する奇跡のバンド、ザ・スミス
他の凡庸なバンドが到達しえなかった、美しいポップ・フォーマット ―—マーによる普遍的かつ繊細なポップネスとギター・サウンド、モリッシーの書く文学的な歌詞 ―—に、当時のUK労働階級若者たちが虜になっていった訳です。
というわけで、ザ・スミスのハードコア・リスナーの皆様はもちろんのこと、ザ・スミスを初めて聴くという皆様にも、ここから聴けばなんとかなる?!楽曲を、音楽ライター新谷洋子さんに<10曲>セレクトしていただきました。10位から1位まで、楽曲のエピソードなどもぜひチェックしてみてくださいね。

では張り切ってまいりましょう!


10位「Heaven Knows I’m Miserable Now」/『Hatful Of Hollow / ハットフル・オブ・ホロウ』(84年)より

初めて訪れたニューヨークで、当時 The Smiths を契約しようとしていたサイアー・レコードの創業者シーモア・スタイン(今年4月に死去)に、あのアイコニックなチェリー・レッドのギブソン<1959ES-355>を買ってもらったJohnny Marr(ジョニー・マー)が、ホテルに戻ってすぐにギターを取り出して心が導くままに弾き始めたのが、この「Heaven Knows I’m Miserable Now」のリフだったという。それが84年1月のこと。

次いで Johnny から曲を受け取った Morrissey(モリッシー)は、満たされない日常に抱く憂鬱感と厭世感をエレガントなメロディに溶かし込み、しばしば“ミゼラブリスト”などと評された自身のキャラを凝縮したタイトルを与え、Johnny がギターを入手してから4カ月後にシングルとして発売。

The Smiths にとってキャリア初の全英トップ10ヒットとなる(最高10位)。


9位「Please Please Please Let Me Get What I Want」/『Hatful Of Hollow / ハットフル・オブ・ホロウ』(84年)より

84年のシングル「William, It Was Really Nothing」にカップリングされていたワルツ仕立てのこの優美な曲も、「How Soon is Now?」と同様、The Smiths のB面曲の圧倒的クオリティを示している。
彼が狂おしく求めているのは恋焦がれる人なのか、それとも幸福そのものなのか、人生で一度でいいから望みを叶えて欲しいと懇願する Morrissey の想いの強さを3度繰り返される“Please”が物語り、僅か110秒のバンド史上最短の曲だからこそ、そんな彼を慰めるように Johnny が奏でるアウトロのマンドリン・ソロに至るまで、一音一音が雄弁だ。

のちにこの曲を「Enemy」(12年)でサンプリングした The Weekend (ザ・ウィークエンド) は、アルバム『Beauty Behind the Madness』(15年)でも The Smiths をインスピレーション源に挙げており、ファンだと見てよいのだろう。


8位「Panic」(86年)

インスピレーション源は T. Rex (T・レックス)「Metal Guru」、この The Smiths 流のグラムロック・チューンは『The Queen Is Dead』『Strangeways, ~』の間隙を縫ってリリースした、スタジオ・アルバムに収録されていないシングル(全英チャート最高11位)。
セカンド・ギタリストの Craig Gannon (クレイグ・ギャノン) の参加を得てレコーディングした、最初の曲でもある。

“ディスコを燃やしてDJを吊るせ”とアジるくだりが物議を醸したものだが、その背景には、BBCラジオのDJがチェルノブイリ原発での深刻な事故のニュースを伝えた直後に Wham! (ワム!)「I’m Your Man」をかけたことに憤慨したというエピソードがあり、ひいては、当時の薄っぺらいポップ・ミュージックへの批判も込められているという。
Johnny がライヴで度々披露しているソロ・ヴァージョンも秀逸。


7位「Hand in Glove」/『The Smiths』(84年)より

Johnny が吹くハーモニカで幕を開ける、84年4月発表の記念すべきデビュー・シングル(全英チャート最高27位)。
その内容は第一声に相応しく、ずばり、バンドのマニフェストと呼んで過言ではない。
というのも、“hand in glove”とはそもそも親密な間柄、或いは、結託して良からなくことを行なう様を表すイディオムであり、

“着ているものはボロボロかもしれないけど、彼らには絶対手に入れられないものを僕らは持っている”

と Morrissey は綴って、自分たちは特別な存在なのだというプライドと自信と団結を高らかに歌い上げたのだから。
そして同じ主張をふてぶてしいサウンドにも投影し、ポストパンクの百花繚乱がひと段落して停滞していた当時のシーンに、まさにその圧倒的な異質さを印象付けた。
それでいて悲劇的な展開を予感しているところがまた、どこまでも The Smiths らしい。


6位「Last Night I Dreamed Somebody Loved Me」/『Strangeways, Here We Come / ストレンジウェイズ、ヒア・ウィ・カム』(87年)

孤独による絶望を、こんなにも壮大でアップリフティングなアンセムに仕上げられるのは The Smiths だけ。

「Last Night I Dreamed Somebody Loved Me」は、従来のギター主導のスタイルとは一線を画して積極的にサウンド表現を広げた、ラスト・アルバム『Strangeways, ~』を象徴するサード・シングルだ(全英チャート最高30位)。
Johnny と Morrissey が The Smiths の最高傑作と位置付ける同作では、過去の作品でエンジニアを務めたスティーヴン・ストリートを共同プロデューサーに起用。Johnny も音作りに深く関わったが、殊にこの曲では、2分に及ぶイントロで胸騒ぎを徐々にかきたてて、鍵盤やストリングスを盛ったシネマティックなサウンドスケープを披露。

Morrissey のシンプルな歌詞から最大限のドラマを引き出す、彼のアレンジャーとしての才覚を余すことなく伝えている。


5位「Reel Around the Fountain」/『The Smiths / ザ・スミス』(84年)より

『The Smiths』の冒頭を飾る「Reel Around the Fountain」はリリース当時、こともあろうか、タブロイド紙に児童虐待をネタにしているとの批判を浴び、騒動を引き起こしたものだ。

しかし、Morrissey がこよなく愛する作家シェラ・ディレーニー作の戯曲『密の味』からの引用を織り交ぜて描こうとしたのは“イノセンスの喪失”であり、主人公は子ども時代に別れを告げて、人を愛することの喜びと悲しみを知っていく。

その過程をバンドは、抑揚をおさえた微妙なテクスチュアの移ろいとデリケートなヴォーカルで、ニュアンス豊かに描き出すのだ。
アルバム・リリースの1年近く前にやはりジョン・ピール・セッションで公開された、ピアノをカットし音色をより鮮明にしたヴァージョン(『Hatful Of Hollow 』収録)こそが決定版だという声も。


4位「This Charming Man」(83年)

当時絶大な影響力を持っていたBBCラジオの名物DJジョン・ピールに気に入られ、彼の番組のセッションで演奏するために用意。その後正式にレコーディングしたヴァージョンが、セカンド・シングルとなった。

全英チャートでは初のトップ30入りを果たしたものの(最高25位/92年に再リリースされた際には最高8位に)、ファースト・アルバム『The Smiths / ザ・スミス』には収録されず、ジョン・ピール・セッションの音源が『Hatful~』に収められている。

自転車のタイヤをパンクさせた若者と、そこに車で通りかかった “ひとりのチャーミングな男”のストーリーを示唆的に描くこの曲、Johnny が構築したギターのオーケストラのインパクトもさることながら、Andy Rourke (アンディ・ルーク) の死去を受けて多数のメディアが、彼が弾いた“最強のベースライン”のひとつに選んでいたのが記憶に新しい。


3位「The Queen is Dead」/『The Queen Is Dead  / ザ・クイーン・イズ・デッド』(86年)より

昨年9月のエリザベス女王の死去を受けて、あの Sex Pistols (セックス・ピストルズ) 『God Save the Queen』を超える勢いでストリーミング数が急増したという、サード・アルバムのタイトルトラック。

もちろん女王賛歌などではなく、ハードコアな王室廃止論者である Morrissey が、毒とユーモアとファンタジーを満々と込めて現・国王を含む王族を嘲笑し、英国社会のあり様を憂う、痛快かつ不敬極まりない一曲だ。

また、この『The Queen is Dead』は、The Stooges (ストゥージズ) や MC5 といったガレージロック・バンドにインスピレーションを求めた Johnny のギターワークが炸裂する、バンド史上最もアグレッシヴな曲でもあり、映画監督の故デレク・ジャーマンが手掛けた傑作ミュージック・ビデオはそのスピード感とカオスを見事に映像化している。


2位「There Is a Light That Never Goes Out」/『The Queen Is Dead / ザ・クイーン・イズ・デッド』(86年)より

そもそもシングルですらなく、92年にベスト盤『…Best II / ベスト Vol.2』の発売を機にようやくカットされた際にも、全英チャートでの記録は最高25位に留まった。
それでいてファンに最も愛されている曲と言えばやはり、孤独と闘いながら自分の居場所を探し、人のぬくもりを求めている、この究極のインディー・アンセム
それは恐らく――10トン・トラックに轢かれても、2階建てバスに突っ込まれても構わないというくだりは大仰な Morrissey 節の典型だが―― The Smiths のキャリアにおいて最も普遍的な曲であり、ストレートなラヴソングに最も近いからなのだろう。

バンドが解散してからも Morrissey と Johnny 双方がソロでプレイし続けており、誕生から40年近くが経った今もファンと共に歌い継がれ、希望の光は消えずに残っている。


1位「How Soon Is Now?」/『Hatful Of Hollow / ハットフル・オブ・ホロウ』(84年)より

トレモロ・エフェクトを駆使し、音色の異なるギター・サウンドを幾重にも重ねた Johnny のクラフトマンシップと、極端なシャイネスをプロテスト・ソングの一種に転化した Morrissey の詩人のハートが出会う、最上級のシナジー。
ジャングリーなギターポップ・バンドとして第一印象を刻んだ The Smiths は、デビューの翌年に早くもこのようなエクスペリメンタルな境地に到達し、当初「William, It Was Really Nothing」の12インチ・シングルのカップリングという地味な形で世に出た「How Soon Is Now?」は、反響の大きさに応えて85年にシングル化されるに至った。

死にたいほどの孤独感を歌いながらも、バンドの強固なアンサンブルを鎧のように身に付けて断固愛を要求する Morrissey は、無敵のパワーを手にしている。

楽曲セレクト&コメント: 新谷洋子さん


いかがでしたでしょうか?

たった5年の活動期間。瞬く間に伝説となり、そして分裂していったザ・スミス
いつの時代でも—―、それは解散から30年余りが経過した今でも、彼らの楽曲は未だ存在感を以て心に響きます。ぜひこの機会に聴きなおしてみてくださいね!

以下のプレイリストもチェックしてみてください!


◆The Smiths プレイリスト


◆Morrissey プレイリスト


◆Morrissey 来日公演 『40 Years of Morrissey』


◆The Smiths - Warner Music Japan アーティストページ

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