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Phase2のオーダー

こんにちは。
明日から Phase 2 のワークショップが始まります。
今回は,新たに追加されたオーダーについてご紹介します!

まずコラボレーターの Radim 作のタイプフェイスがめちゃ可愛いです。
洒落ててどこか奇妙さのあるデザイン。

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昨年発行されたアイディア392号「タイプデザイン・ナウ 独立系タイプファウンドリーの実践」の特集で取り上げられたデザイナーの1人で,ご存知の方も多いのではないでしょうか。
Rasim はチェコ出身のデザイナーで,2010年に自身のタイプファウンドリー,RP Digital Type Foundry をロンドンに設立。以降,アムステルダム市立美術館のビジュアルアイデンティティ用書体の制作など多くの美術館関連のプロジェクトや,Y-3などのアパレルブランド,雑誌のための書体制作など,多くのコンセプチュアルかつ自由なタイプデザインを生み出しています。
展覧会のキュレーションや教育活動においても活躍され,ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(イギリス)とECAL修士コース(スイス)でタイプデザインの指導もしています。

他の作品はこちらからご覧いただけます。
Radim Pesco 公式サイト:https://radimpesko.com/


オーダー

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Phase 2 のオーダーは全部で14個。
Phase 1 同様,4グループで分割してリサーチや制作を進めます。


【 2 - 01. David Copperfield】

ロンドンの公共交通機関であるTransport for Londonが発行する無料のチューブマップ(地下鉄と地上の地下鉄網)は市内のすべての鉄道駅で配布されています。ここにある駅名を日本語訳するというオーダーです。

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Betsy Bickle は,1983年にアーティスト David Copperfield が自由の女神を消滅させたように,地図上の川が消えることをマジックのように考えて公式リーフレットと同じサイズで川だけが描かれた地図を作成しました。
彼女はニューヨーク出身のグラフィックデザイナー。1970年代に活動を開始し,2012年以降はアメリカのテレビドラマ『ザ・ワイヤー』の登場人物トミー・カルケティの架空の大統領選挙運動を支援しているらしいです。
(ちなみにこの架空の大統領選挙は第1フェーズのオーダーのモチーフにありました。完全に Maki たちが仕組んでいます。笑)


【 2 - 02. New Swiss banknote

これは 前述した Betsy Bickle がデザインした葬儀用の紙幣です。

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この背景には2005年にスイスの紙幣のデザインを変更するコンペがあります。ここではグラフィックデザイナーの Norm が優勝しましたが一般からの反響が大きかったため,第2位のデザインが採用されたのです。
ちなみに Norm は Radim と同じ大学で教えているそうです。


そこで Betsy Bickle は捨てられた1000スイスフランのデザインを利用して,オリジナルのデザインに描かれていた頭蓋骨と金の描写をもとに,死者を弔うためのふさわしいとして葬儀用の紙幣をデザインしました。
今回私たちは彼女をならい,1000スイスフランの紙幣をデザインします。

【 2 - 03. The secret design

CIAやNSA,その他のシークレットサービスのために誰がデザインしているのでしょう。
Simon Denny と David Bennu はそのようなデザイナーをインタビューし,音声の書き起こしと自分で描いたデザイナーの実物大モデルで構成された作品を制作。これを土台に私たちはキャラクタをマンガに書き直し,インタビューの日本語で想像し,展覧会に展示する音楽を作成します。

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Simon Denny はベルリンを拠点とする現代アーティスト。David Bennu については今のところ情報不足です。
まずは彼らや元の作品について調べる必要があります。


【 2 - 04. The grasshopper lies heavy

第二次世界大戦で枢軸国が勝利したという別の歴史を描いた「高い城の男」の作中に登場する架空の小説が、この『The grasshopper lies heavy(イナゴ身重く横たわる)』です。
内容はなんと「もし大戦で連合国が勝利していたら」。架空の物語の中に登場する架空の物語=現実というなんとも不思議な構造です。

架空の歴史を描いた物語の代表作のひとつでもあるこの本が、いったいどのような作品になるのでしょうか。

【 2 - 05. Dune

1974年,アレクサンドロ・ホドロフスキーはフランク・ハーバート著「DUNE」の映画制作に取り掛かかりました。
これは Jean Giraud (漫画家メビウス),Chris Fos(SFイラストレーター),H.R Giger(「エイリアン」のキャラクターデザインで有名),Dan O'Bannon(「エイリアン」「スター・ウォーズ」の脚本家),Salvador Dalí (あのダリ),Magma,Pink Floyd など世界中の才能を集結し2年半かけて進行していたが,映画製作会社の許可を得られず制作中止となった幻の映画です。

彼はメビウスと一緒に,1000ページに渡る絵コンテ全体を収めた本を制作していました。私たちはその日本版を作成します。

(ちなみにドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」でこの映画の具体的な進行や制作陣の情熱をひしと感じることができます。物を作る人にとって刺さるのものがあるのではないでしょうか。)


【 2 - 06. Hapworth 16, 1924

これはニューヨーカー誌の1965年6月19日号に掲載され,J.D.Salinger(「ライ麦畑でつかまえて」著者)が発表した最後の作品です。1996年に Orchises Press 社から,この小説の出版について著者に連絡があり何度かの交渉の末,最終的には単行本として出版されるはずだったがオーチーズ社が不幸なミスを犯し,サリンジャーは契約を辞退しました。
2010年,ニコラス・マトランガとジガ・テステンは,サリンジャーがOrchises Press に要求したデザインを踏襲して,この作品を出版。
約100年もの時を超えて,この本を日本語でリメイクします。


【 2 - 07. A History of Nebraska

小説家 Richard Brautigan はネブラスカに行ったことはないが,長い間興味を持っていました。
「子供の頃から,私にとってはネブラスカだった。他の子供たちはラジオを聞いたり,自転車の話をしたりしていました。私は,ネブラスカに関する本を何でも読んだ。何がきっかけだったのかは分からない。しかし,いずれにしても,これはネブラスカについて書かれた最も完全な歴史である」*。
(*The Abortion: The Abortion: 歴史的ロマンス 1966年 リチャード・ブローティガン ポケットブック)
村上春樹に影響を与えた作家だそうで,デビュー作の「風の歌を聴け」の文体や構造などで共通点があるみたいです。

【 2 - 08. The Abortion : 
An Historical Romance1966    】

こちらも前述の Brautigan の小説。カリフォルニアの一風変わった図書館の司書を主人公としたジャンル小説のパロディ小説だそうです。
日本語版を購入するというオーダーですが、存在しないのか今のところヒットしません。


【 2 - 09. 
Walt Disney production

このオーダーの Description は,Xavier Hufkens というヨーロッパでも有数のコンテンポラリーアートギャラリーのリンクのみ。このギャラリーは,様々な世代の一流アーティストやエステートによる個展の開催しています。


オーダーには,絵画,彫刻を制作し,日本の漫画に出てくるような芸術作品を制作するとありますが今のところ情報不足。
ここで個展を開催したアーティストやこれまでのオーダーに登場したアーティスト,ディズニーとの関係性(経済や交流という繋がりの他,誰かの作品にディズニーと共通の特徴があるのかもしれない…?)などリサーチしていくとヒントと出会えるかもしれません。


【 2 - 10. Beatles: White album

このオーダーはシンプルで Beatles の The White Album の日本版リメイクを作成します。まずは一通り聞いてみます。(Yes, we’re going to a party, party〜)

【 2 - 11. Nancy Crater

ナンシー・クレーターは,口頭やテキストによる説明の中でのみ存在する架空の人物です。このオーダーは,展覧会の広報,コミュニケーション,レビューの中にナンシーを登場させることです。
告知に架空の人物がアナウンスしているという設定や仕掛けはこのプロジェクトらしいですよね。

【 2 - 12. Playcards for Mobuto

歴史上から選んだ1人の人物に直接関係するトランプをデザインします。人物の人生,仕事,背景などがビジュアルの造形の要素になってくるでしょう。「 Playcards for Mobuto」 はザイール国の航空会社 Air Zaire を宣伝する目的で作成されました。
1984年の大統領選挙で Mobutu Sese Seko Kuku Ngbendu Wa Za Banga が選出され,製造元であるターンホウトのカルタムンディカード工場が銀行の保証を求めたがザイール国はその保証を得ることができず,このプロジェクトは中止。このような背景があります。
政治と銀行の関係で似たような事例が日本にあるのかもしれません。


【 2 - 13. Appendix (publication)

これまで開催してきたブルノ,ニース,カステルリー,メルボルンの各展覧会では,展覧会,作品,インスタレーションを記録した小さな印刷物の「付録」が作成されていました。その日本版の付録をデザインします。
実はオーダーされる前からクラウドファンディングのご支援者様へのリターン品として面白いもの作りたいねと計画していました。
ご支援金額によって変わりますが今のところ,などがあります。(もしかしたら会期中にも来場者がゲットできる仕組みができるかもしれません。お楽しみに!)

かなり長くなりましたが,以上が Phase 2 のオーダーです!
いかがでしたでしょうか。

書き出してみて,ちょっと調べるか調べないかでそれぞれのオーダーへの印象はかなり異なると思いました。
このプロジェクトでは「分からないことしか分かってない」みたいな状況に遭遇します。(私だけ…?)
ですがこのリサーチのプロセスを通して,少しでも気になった物をぱっと調べる癖がつくように思います。新たな情報と自分の持つ小さな知識が線で繋がり,より親近感をもって取り組めることを何度か体験しました。
Phase 2 においてもインターネットや書籍,自身の体験などいっそうリサーチを重ね,面白いアイディアや急所を突くような核心に迫っていきたいです。


【 クラウドファンディングのご支援のお願い 】

本プロジェクトは,今秋の展覧会開催のためにクラウドファンディングを実施しています。
現在目標金額400万のうち,200万円弱のご支援をいただいております。
ご支援いただいた皆様,本当にありがとうございます。

こちらは7月31日が期日となり,目標達成にはさらなる皆様のご協力が不可欠です。
引き続き,皆様へご支援を呼びかけていきたいと思いますので,少しでも「応援したい」と感じた方は,ぜひご協力よろしくお願いします。
詳しくはこちらのリンクからご覧ください。




また,以下のSNSも随時更新しております!
ワークショップの様子など紹介していますので,こちらもぜひご覧ください。

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https://www.instagram.com/geidai_wmdywtl/

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