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白菜漬けを鍋にする

いつぞやに自家製白菜のいただきものがあった時、ひとり者にはかなり立派なサイズだったので、一部を塩漬けにしておいた。

父や弟(同市住みで餃子が作れる方)と一緒に暮らしていた頃は、白菜のシーズンが来るたびにしょっちゅう作っていた白菜漬け。縦に四ツ割にした白菜に塩をまぶして、鷹の爪と一緒に漬物樽にぎゅうぎゅう押し込んでおくだけで、半月後には実にいい塩梅の漬物が爆誕してくれる。塩加減はいつも適当だったけれど、旬の白菜を使うとそれなりにおいしくできあがるのが、大ざっぱな私には大変ありがたかった。父は市販の漬物はあまり食べなかったのに、どういうわけか、私が漬ける大ざっぱ漬けはもりもり食べてくれたので、晩秋から春にかけては隔週で漬け込んだものだ。味の素とかつおぶしをちょっと振るのがお気に入りだった。私も大好き。

ひとり住まいになってからは、巨体白菜を購入することもなくなり、白菜漬けからもしばらく遠ざかっていた。そこへ、先日のいただきものである。大層立派なやつがやってきてくだすったので、久しぶりに漬け込んでみたのだけれど、そろそろいい塩梅だろう。

この白菜漬けを使って、ぜひとも試してみたい料理があった。



「発酵鍋」とも呼ばれる、白菜漬けの鍋仕立て。初見時はちょっとびっくりしたけれど、よく考えてみたら私はしょっちゅうキムチ鍋を食べている。キムチ鍋の何がいいって、あの辛さはもちろんだけれど、辛い中にキュっと効いてるあの酸味がいいんだよな。鶏がらスープの塩気にも合うし、辛いのしょっぱいのすっぱいのって、いくら食べても飽きない。あのキムチ鍋から、辛みを抜いた味……これはぜひとも食べてみなくては!

とまあ、そんな欲望もあたためながら作った白菜漬け。半月を経ていい具合に黄色っぽくなり、あの得も言われぬ匂いを放っている。ちょいと味見してみると……うん、しょっぱすっぱくていい感じである。そして今夜の冷え込み。鍋日和である。ネットで見つけたレシピを参考に、冷蔵庫のありものでさっそく仕込んでみることにした。


ということで今夜の晩ごはん、白菜漬け鍋。白菜漬けは水洗いしたのち、塩気が気になるようであれば水に浸けてしばらく塩抜きする。これをざく切りにして土鍋に敷き詰め、おろしにんにく少量を投入。ついでに、冷凍保存してすっかり忘れていたしめじも、凍ったまま鍋に入れる。野菜チームの上に、自家製塩豚(これもしばらく塩抜きしました)を薄くスライスしたものを並べたら、ひたひたくらいの水と料理酒を入れて火にかける。鍋の中が沸騰してきたら味を見て、創味シャンタンと砂糖ほんの少しずつ!で、ごく薄めに味つけする。あとは塩豚に火が通り、しめじがくったりするまで弱火で煮込むだけ。仕上げにごま油をくるっとひと回し振りかけてできあがり。


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ふむ……見た目はごくごくいつも通りだな。


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湯気が写らないのもいつも通りw

ついいつもの癖で、最初の水をひたひた程度にしか入れなかったのだけれど、よく考えたら今日の白菜はすでに脱水済なんだから、もうちょい汁気多めにすればよかったかな。鍋底はジルに浸かっているものの、上から見たら蒸し煮にしか見えない……ま、よいよい。食べれば味は一緒だ。


さて気になるお味の方はというと、ごく薄味に仕立てた中華出汁に、白菜漬けの酸味がむちゃくちゃ合う……すごくおいしい!正直、予想の斜め上をいくおいしさ!塩抜きから火を通してもなおしっかり残る酸味はとてもさわやかで、けれど生のものとは段違いのコクと旨みが効いている。なんじゃこりゃあ~!どちゃくそめちゃんこおいしいですぞ~!なんだろ、濃厚な酸辣湯みたいな味と言えばいいのだろうか。すっぱしょっぱくてさわやか系なのだけれど、ガツンとパンチが効いていて、おいしさの奥行きがすごい。酸味にごま油の甘みと香ばしさがものすごく合うし、白菜漬けと塩豚、ふたつの保存食から滲み出たジルがまた最高においしい。ちょっとだけ砂糖入れたのも正解だったなー、保存食部隊の塩っけをほどよくやわらげてくれている。白菜漬けで塩豚をくるっと巻いて頬張ると、豚肉の濃厚な旨みと一緒に、白菜漬けのちょっとクセのある酸味が口の中いっぱいに広がって……こ、これはたまらん。たまらんな!もしかしたら味薄すぎるかな?と思って一応ベルの成吉思汗たれも用意しておいたのだけれど、全然出番が見えない。鍋の中で味が完成している!にんにくもいい仕事ぶりだ。芳醇な旨みをたっぷり吸い込んだ、とろとろのしめじもまたおいしくて、あっという間に全部食べ尽くしてしまった。いやーおいしかったな。ごちそうさまでした。


とにかくすごくいい出汁が出るので、もやしや豆腐、春雨なんか入れても最高においしくなりそう。ニラやクレソンなんかの、クセのある野菜も合いそうだ。豆乳入れてさらにまろやかにしてみるのもおいしそうだし……あっ、納豆もきっと合うな!絶対また作ろう。また白菜漬け仕込まなくちゃだな(イソイソ

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