おうちジンギスカン
(前回までのおはなし)うっかり切らせた塩を買いに行った大帝国ロピアで、値引きシール付のラム肉と出会ったワカナ。初めて味わうおうちジンギスカンのその甘美な味わい、馥郁たる獣の香りは、『100g100円以下の肉しか食わない』そんな戒律の元で暮らす女の肉体と理性を狂わせるには充分すぎた。すっかり肉欲に支配されたワカナは、火照る身体を引きずるようにして再び大帝国へと向かう。高鳴る胸の鼓動と、『今日こそ塩を買うのを忘れない(あと中華麺も)』そんな誓いを抱いて……
先日ものすごく久しぶりにジンギスカン食べたのだけれど、これが本当においしかった。どのくらいおいしかったかと言うと、初めてのおうちジンギスカンについて書こうと思ったのに脳内からは「圧倒的美味っ……!」の一言しか出てこなくて記事化を断念したくらい。そのくらいおいしかった。
あれは先月のこと、例によってnoteの凄腕料理人さん界隈に、かぐわしい獣臭が一陣の風となって吹き抜けていたっけ。あれ以来、おうちジンギスカンにはずっと羨望のまなざしを向けていた。
全ての民がソウルフードに魂を捧げし地・北海道ご出身のぽなちゃんによります、偉大なる聖典。読んだ後すぐに大帝国へと早馬を走らせたものの、骨付きスペアリブしか売ってなくて購入を断念したっけ。これ以降ロピア行くとラム肉コーナーを猛禽類の目つきで見つめる習慣が身に付いた。でも鶏や豚に比べるとお高くていらっしゃるので、なかなか購入に踏み切れないまま7月の日々を過ごす。
そうこうしているうちに聖典第二弾が発表され
(にしてもあのすらりとした美ボディの何処にこの量入れてるのか謎。やはり1日30キロくらい走ってるガチアスリートなのか、はたまた体内に小宇宙(コスモ)を形成していらっしゃる勢……?)
聖典を胸に抱き、神々しく光り輝く階段をのぼってゆく方や、
猛暑による副反応から、ジンギスカンカレー錬成の偉業を成し遂げる方も現れた。カツカレーの次はジンギスカンの同時多発テロかよ、くそっ……!
そういうわけで先日は念願かなって、初・おうちジンギスカンに至ったわけである。そして一夜明け、二夜明け、いくつかの眠れぬ夜が明け……禁断症状で手の震えが止まらなくなった私は、再び大帝国へと早馬を走らせた、ってわけだ。前置きが長すぎる。
というわけで今夜の晩ごはん、おうちジンギスカン再び!
今回はラム肉切り落としにお目にかかれなかったので(スペアリブはいつも居る)、ラムステーキ用とか書いてあるお肉(100g198円)を連れ帰ってきた。これをラップに包んで拡張工事を施し(麺棒でバチクソにブン殴る)、さらに適当な大きさにカットしておく。お供の野菜は、ジンギスカンには絶対欠かせないらしいもやしと、義妹ちゃんからおすそわけしてもらったピーマン。本当は玉ねぎとかなすも食べたかったけれど、それ食べちゃうと〆までたどり着けないので……涙を飲んでがまん、がまん。
今回は、ソロキャンプ用に買ったものの一度も使っていなかったスキレットで焼いた。熱したスキレットにオリーブ油を敷き、ラム肉を載せ、さらに上からもやしをドサッと載せる。偉大なる聖典によれば、ジンギスカンをもやしで蒸し焼きにするのが玄人の食べ方とのこと。
スキレットはお肉ともやしで満員になってしまったので、ピーマンは別のフライパンで素焼きにした。お肉に火が通ったらできあがり。うっかり取っ手を素手で持ち上げないように細心の注意を払い、食卓へと運ぶ。
焼き上がってからもやしをすみっこに寄せた。ジンギスカンの引き締まった肉体をまず視界から味わいたいという助平心のあらわれである。
数ヶ月の放置プレイに耐え、ようやく初陣を迎えたスキレットも誇らしげだ。
タレはもちろん、偉大なる聖典に従ってベルの成吉思汗たれで!(読めない!)
こうして写真を撮っている間にも、部屋中に満ち満ちた芳しいケモノの匂いが容赦なく誘ってくる。ケモノ臭に壁ドンされてるような気分だ。壁ドンてどんな感じなのか知りませんけども。ああン、もう……っ、そんなに焦らないで。今すぐ行くわ。いただきます!
先日の切り落とし肉も十二分すぎるほどおいしかったけれど、今夜のステーキ肉の甘美な味わいたるや……もう情緒を根底から容赦なく揺さぶってきやがりますね。甘美な味わいの副反応として堰を切ったようにほとばしり出た涙が高速落下し足元の大地を揺るがし大穴を穿つ勢いでどちゃくそめちゃんこおーいしーい!!!!!!やわらかな歯ごたえ、ほどよい厚みのあるお肉から溢れ出るジューシーな肉汁。ちょっとクセのあるラム肉独特の匂いは、人によって好みが分かれるところだろう。(でも思ったほど匂い強くなかった。マトンだとまた違う模様)個人的には全然アリ、むしろこの香りこそ至高!
そしてこの香りに、読めない文字が施されているベルのたれが、ものすごく合う!醤油ベースの味なのだけれど、焼肉のタレみたいな甘ったるさはなくて(あれはあれで好きですが)、ほどよい甘み、すきっとしたいい切れ感。あまり重くなくてさらっとしているせいか、肉の脂と合わさった時のエモみがヤバいです(語彙……)。お肉はもちろん、肉汁を吸い込んだもやしやシンプルに焼いたピーマンが、いくらでも食べられそうだ。
……って前回調子こいて野菜のおかわりしたら、〆までたどり着けなかったんである。今回はちゃんと〆までいただきました。
『ジンギスカンの〆は中華麺一択』
偉大なる聖典にDF極太ゴシック体で書かれていた教え。おうち焼肉で〆の麺類って初めてだ。大帝国ブランドの中華麺(4玉168円)をほどよく茹でて湯切りして、
茹でたての熱々をすぐさまスキレットにぶちこむ。こうすることでお肉から出た脂も、それをたっぷりと含んだタレも、余すことなく麺に絡めていただけるってわけ。決して洗い物を減らしたいというめんどく星人スピリッツではない。
っていうかタレと脂が絡みついた中華麺の、この色艶ったらどうですか……全方位どこからどー見てもおいしい以外の何者でもない。つやっつやのてりてり!そして、その蠱惑的なルックスを裏切ることなくバチクソにおいしい!ほんのり甘みのある醤油味に、お肉の脂のコク、香ばしさ。冷めないうちに食べないと麺がくっついちゃうかな、なんて心配は全くの杞憂であった。箸が止まらない!あっという間に一玉完食。この麺こそおうちジンギスカンの醍醐味……いや、〆にこの麺を食べることで、初めておうちジンギスカンは完全体へと至るのではないだろうか。いやーおいしかった。ごちそうさまでした。ぽなちゃん、すべては偉大なる聖典のおかげです。本当にありがとうございます(拝み)。
羊の持つ独特の芳香、どうやら自分には合うってことが分かった。いずれはぜひロール肉タイプのマトンを焼いて、本格派の香りと味を楽しんでみたい。お取り寄せだな!あと読めない文字が施されたタレは、他のお肉に使っても絶対おいしいな?と思った。色々試してみようと思います。
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