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元銀行員キャピタリストに聞く#4 スタートアップが融資で気をつけるべきポイント

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

私のPodcastGazelle Capital(ガゼルキャピタル)株式会社の初見 洋介(はつみ・ようすけ)さんをゲストに迎え「起業家が銀行に融資を申し込む際のコミュニケーションのコツ」を、全4回にわたってお届けしています。

それぞれのテーマは次の通り。

  1. 起業家が銀行員をファンにするメリット

  2. スタートアップ起業家向け銀行のお作法【支店編】

  3. スタートアップ起業家向け銀行のお作法【本部編】

  4. スタートアップが融資で気をつけるべきポイント

今回の記事では、第4回目の「スタートアップが融資で気をつけるべきポイント」をまとめています。

このnoteは若林によるPodcast「INQ若林のDebt&Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。Podcastでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

スタートアップが資金調達をするなら、まずは融資を検討しよう

若林:初見さんは銀行の支店や本部、そして現職であるベンチャーキャピタル(以下、VC)でさまざまな融資先や投資先を見てきたと思います。
初見さんが思う「スタートアップが資金調達するときに気をつけるべきこと」があれば教えてください。

初見さん:スタートアップが資金調達したいと思ったときに最初に検討すべきはエクイティ(株式発行による資金調達)ではなく、創業融資や補助金、助成金だということです。

エクイティで調達すると、どうしても株式の希薄化(1株当たりの価値の低下)が起こります。創業して間もない頃はバリュエーション(企業の利益や資産の価値評価)も高くないため、エクイティで1,000万〜2,000万円の資金を調達しようとすると、相当希薄化してしまうでしょう。

しかしこのくらいの金額であれば、創業融資と補助金や助成金を組み合わせれば、何とか調達できるかもしれません。

若林:そうですね。特に創業融資に関しては私も早めの利用を勧めています。通常の銀行融資などはトラックレコード(過去の実績)を元に審査されますが創業融資は唯一、代表者の経験と将来性を元に審査してもらえるわけですから。

これまで経験を積んできた業種で起業したのであれば、起業後の実績が出る前にチャレンジしてほしいです(創業融資で重視される点は「創業融資の3つのポイント」で詳しく解説しています)。

また、補助金の申請においてはビジネスの仮説や、サービスやモノが売れる根拠を文章で伝える力、いわゆる作文力が重視されるので、スタートアップがまず融資や補助金、助成金を検討すべきというのは納得です。

銀行にとっては1,000万円の融資も1億円の融資も業務量は同じ

若林:資金調達手段の順番以外に、気をつけるべきポイントはありますか。

初見さん:しばしば融資先企業から「保証協会付き融資(*)なら、何でもできるでしょ?」と言われることがありましたが、よくある誤解です。

*) 融資先からの返済が滞った際に信用保証協会が立て替え払いしてくれる制度。詳しくは「保証協会付き創業融資とは?利用するメリットと留意点」で解説しています。

若林:私も「保証協会付き融資の場合、銀行はノーリスクだからノールックで融資してくれる」と認識している経営者がいる話は聞いたことがありますが、さすがにそんなことはないですよね。

初見さん:そうですね。保証のカバー率が100%の場合、確かに制度上ノーリスクではあります。しかしそもそも銀行融資は再現性の高い事業に対してお金を貸すものなので、保証があるからといって審査が甘くなるわけではありません。

若林:銀行としては事業計画を元に利益で返済してもらうのが前提、ということですよね。

初見さん:はい。またこれは銀行側の事情ですが、1,000万円の保証協会付き融資と1億円のプロパー融資(金融機関と企業が直接取引する融資)にかかる担当者の業務量は、実はそれほど変わらないんです。

このような事情もあり、金額の低い融資は優先順位を下げられてしまう可能性もありますので、それこそ銀行員から「応援したい」と思ってもらうことが重要になると思います。

若林:銀行側の事情も知っておくと参考になりますね。ちなみに先ほど出た「再現性の高い事業」というのは、具体的にはどのようなものですか。

初見さん:過去のトラクション(事業成長を示す実績)から、事業の成長や維持が見込める状態の事業、と言い換えられます。

若林:スタートアップの開発費や、創業間もない頃のマーケティング費用など、費用対効果の読めない資金に対しては融資しにくいということですね。

初見さん:そうですね。開発してサービスをリリースしてもそれがヒットするとは限りませんし、TVCMを打ったからといって売上がアップするとは限らないですから。融資の対象となる事業やフェーズについては押さえておいてほしいです。

返済後も銀行との付き合いは続く前提でコミュニケーションを取ろう

若林:他にスタートアップが融資を利用する上で気をつけることはありますか。

初見さん:第1回でも話しましたが、もしスタートアップがエクイティや上場することになった場合、銀行は対応するサービスやグループ企業を紹介できますので、長期的な付き合いを前提にコミュニケーションを取ることですね。

若林:VCと密にコミュニケーションを取るスタートアップは多いものの、銀行と積極的にコミュニケーションを取っているスタートアップはまだまだ少ない印象です。

初見さん:銀行との関係は「返済したら終わり」と思われがちですが、スタートアップが銀行をファンにすると、さまざまな場面でメリットがありますので、ぜひ銀行とも良い関係を築いてほしいです。

若林:銀行もVCと同じように、大事なステークホルダーですからね。良い関係性を保つことで、連載1回目で聞いたM銀行とM社のような関係が実現できるかもしれません。

まとめ

Gazelle Capital株式会社の初見さんをゲストに迎え、スタートアップが融資で気をつけるべきポイントを聞きました。以下に内容をまとめます。

スタートアップが資金調達する際、まずは創業融資や補助金、助成金を利用するべき
保証協会付き融資だからといって審査が甘くなるわけではない
銀行にとっては1,000万円の融資と1億円の融資に業務量の差はない

初見さんに出資の相談をしたい方は、下記SNSのDMから問い合わせください。

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