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元銀行員キャピタリストに聞く#2 スタートアップ起業家向け銀行のお作法【支店編】

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

私のPodcastGazelle Capital(ガゼルキャピタル)株式会社の初見 洋介(はつみ・ようすけ)さんをゲストに迎え「起業家が銀行に融資を申し込む際のコミュニケーションのコツ」を、全4回にわたってお届けしています。

それぞれのテーマは次の通り。

  1. 起業家が銀行員をファンにするメリット

  2. スタートアップ起業家向け銀行のお作法【支店編】

  3. スタートアップ起業家向け銀行のお作法【本部編】

  4. スタートアップが融資で気をつけるべきポイント

今回の記事では、第2回目の「スタートアップ起業家向け銀行のお作法【支店編】」について話した内容をまとめています。

このnoteは若林によるPodcast「INQ若林のDebt&Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。Podcastでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

銀行とは長期的に付き合う前提でコミュニケーションを取ろう

若林:ここからは、銀行員をファンにするためのコミュニケーションのコツを聞いていきたいと思います。

初見さん:具体的なコツを紹介する前に、前提として理解しておいてほしいのが、銀行がスタートアップに融資を実行して収益を上げるのは難しい、という点です。

若林:(市況的に低金利であることに加えて)基本的にスタートアップは常にデット(借入による資金調達)に適した状態にあるわけではないですからね。将来的に融資以外の取引をすることも見据え、長期的にコミュニケーションを取るのが大前提、ということでしょうか。

初見さん:そうですね。例えばMグループであれば、エクイティ(株式発行による信金調達)を行いたい場合にはCVC、証券代行(株式関連事務のサポート業務)を利用したい場合には信託銀行を紹介できます。

若林:スタートアップも将来的には、そのようなサービスを利用する可能性がありますからね。銀行側は先を見据えてスタートアップと取引している面もあるので「1回融資を利用したら終わり」ではなく、長く付き合う前提でコミュニケーションを取る必要があるということですね。

決算書は毎年提出しよう

若林:創業間もないスタートアップが融資を利用するのは難しいとはいえ、銀行と長く付き合うことを考えると、早めに口座を作っておいた方がいいのでしょうか。

初見さん:将来的に融資を利用したり、銀行の販売網を活用したりといったことを検討しているなら、早めにアプローチした方がいいでしょうね。

若林:融資も出資も活用している、あるスタートアップのCFOは銀行の担当者と四半期ごとにコミュニケーションを取っているらしいのです。定期的に連絡があるのは嬉しいものなのでしょうか。

初見さん:嬉しいですよ。決算書を毎年送ってもらうのはマストとして、プラスアルファで資金繰り表や試算表などを毎月、または2カ月に1回送ってもらえると好印象だと思います。

若林:試算表などの書類を送るときは、メールで大丈夫ですか。

初見さん:M銀行の場合はセキュリティの関係上SNSを使えないので、メールで送付してもらっていました。他の銀行もメールが一般的なのではないでしょうか。

若林:ベンチャーキャピタル(以下、VC)とはSlackやFacebookメッセンジャーを利用してやり取りすることが浸透しているので、起業家はその点を覚えておいた方がいいですね。

面談時の服装「スーツを着て行ってマイナスになることはない」

若林:次に、面談に行くときの服装について教えてください。やっぱりスーツがいいのでしょうか。

初見さん:服装には正解が無いので難しいところですが「スーツを着て行ってマイナスになることはない」というのが、私の考えです。

若林:スーツが無難ということですね。ネクタイも締めた方がいいですか。

初見さん:ネクタイまでは必要ないと思います。M銀行もノーネクタイですし。経営者の中にはサンダルで来る方もいましたが、私は特に何も思いませんでした。

ただ銀行員の中には、カジュアル過ぎる服装にいい印象を持たない人もいるとは思います。事業が上手くいっているのに、服装でマイナスイメージを持たれるのはもったいないので、関係性が出来上がる前は無難な格好を選ぶのがいいかもしれません。

若林:面談の中で気をつけることはありますか。

初見さん:基本的なことですが、こちらの質問に対して分かりやすい言葉で回答すること、ですかね。

若林:スタートアップ界隈では通じるけど他の業界ではあまり使わない専門用語などは、極力控えた方が良さそうですね。

初見さん:銀行員の中にはテック系の用語に疎い人もいますので、相手の理解度を確認しながら、伝わる言葉で説明するのが大事だと思います。

M銀行で働いていたとき、こちらが事前に送った質問に対する回答をパワーポイントのプレゼンテーションを準備して、丁寧に説明してくれた人がいました。外資系証券会社出身のいわゆるエリートだったので、会う前はちょっと身構えていたのですが、相手に合わせる姿勢に心を打たれて、すっかりファンになりましたよ。

若林:人と人がやり取りしていることを常に意識したいですね。そういえば以前「融資面談を変な空気にしないスタートアップ用語の変換まとめ」というnoteを書いたところ好評でした。当たり前ですが、相手に通じる言葉で説明するというのは大切ですね。

初見さん:そうですね。面談の担当者が同世代だったとしても、一回り上の世代の課長や部長が決裁権限を持っているのが一般的なので、資料で使う言葉にも気をつけるといいと思います。

契約違反によりスタートアップ全体のイメージダウンにつながることも

若林:面談が終わり、融資審査に通ったとします。その後で気をつけるべきポイントはありますか。

初見さん:これも当たり前のことではありますが、コベナンツを守ることです。コベナンツというのは、融資契約の際に結ぶ特約条項のことで、抵触すれば契約解除に至るケースもあります。

若林:実際にスタートアップがコベナンツに抵触して問題になったことがあるのでしょうか。

初見さん:私が直接関わった案件ではないのですが、スタートアップへの融資プロジェクトの第1号案件として融資が決まった企業がコベナンツに抵触したことがあり、契約継続が難しくなったそうです。

それだけでなくその影響で、予定していた第2号、第3号案件のスタートアップに対してもお金を出しづらくなってしまったと聞いています。

若林:1社が契約を守らなかったことで、スタートアップに対する印象が悪くなってしまうのは非常に残念です。契約したからには、コベナンツも守らないといけませんね。

まとめ

Gazelle Capital株式会社の初見さんをゲストに迎え、起業家が支店の銀行員とコミュニケーションを取る上で気をつけるべきポイントを聞きました。内容をまとめます。

✅決算書は毎年提出する
資金繰り表や試算表は毎月または2カ月に1回提出する
書類のやり取りはメールが基本
面談に行く際の服装は自由だがスーツが無難
面談や資料では誰にでも分かる言葉を使用する
融資契約のコベナンツを守る

次回は、起業家が本部の銀行員とコミュニケーションを取る際に気をつけるべきポイントについて聞いた内容をお届けします。

初見さんに出資の相談をしたい方は、下記SNSのDMから問い合わせください。

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