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【HANOWA(ハノワ)の新井さんと対談#01】歯科衛生士がスポットで働けるサービスを立ち上げた理由

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

私のPodcastに株式会社HANOWA(ハノワ)代表取締役の新井翔平(あらい・しょうへい)さんをゲストに迎え、デットファイナンス調達のコツやスタートアップ調達を経験して感じることなどについて、全3回にわたって話をうかがいました。

それぞれのテーマは次の通りです。

  1. HANOWAについて

  2. 赤字でも1億円の融資を確保するためにやったこと

  3. 2019年から2023年のスタートアップ調達環境を経験して

今回のnoteでは、第1回目の「HANOWAについて」話した内容をまとめています。

新井 翔平さんプロフィール

1987年、大阪生まれ。関西大学卒業後、新卒でカナダに放浪の旅に出る。帰国後、求人系の株式会社インテリジェンス(現・パーソルホールディングス株式会社)や、医療系のweb制作会社を経験し、27歳で独立起業。そこで歯科医院のwebマーケティング支援や採用支援に携わるなか、歯科業界の人材・労働問題に直面することとなる。「世の母親たちが、イキイキと自分の人生を生きられるような社会」を創りたいという思いで、2019年1月に株式会社HANOWAを創業。歯科医療人材のシェアリングサービスを通じて、歯科業界のDXを目指す。

このnoteは若林によるPodcast「INQ若林のDebt&Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。Podcastでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

個人事業主時代に歯科衛生士の人材不足を痛感

若林:まずは『HANOWA』がどんなサービスなのか、ローンチに至るまでの背景をお聞かせください。

新井さん:『HANOWA』は医療人材のギグワーク(*1)プラットフォームです。2020年1月にローンチして以来、3年半ほど運営を続けています。

私の個人的なバックグラウンドとして、2016年ごろから歯医者さんの求人票の作成代行を個人事業主として請け負っていました。案件を請けていると、どの歯科医院でも歯科衛生士が不足しているという状況が見えてきました。

2017年ごろはFAXで新規の求人票作成代行案件を募集したら、月10件ぐらいオファーが獲得できるくらい(歯科衛生士の不足が)深刻な状況だったんです。そのため歯科医院の求人票作成代行をすることで、PMF(*2)の状態になりました。

*1)雇用関係を結ばない単発・短時間の働き方
*2)顧客の課題が解決し満足できる製品やサービスを、適切な市場で提供できている状態

若林:個人事業主時代から、歯科医院に関する仕事をされていたのですね。

歯科衛生士がスポットで働けるサービスを立ち上げることを決意

新井さん:なぜ歯科衛生士の数が足りていないのかは明確で、よくあるのが、歯科衛生士の方が出産されるタイミングで産休に入ったり退職してしまうケースです。

「歯医者さん」と聞いて多くの方がイメージするのが、診察台が3〜5台、7〜9人ぐらいのスタッフで運営している小さな歯科医院だと思います。実際に日本の歯科医院のほとんどがこのような運営体制のため、1人が出産を期に戦線離脱してしまうと、例えば9人のクリニックなら戦力は約10%ダウン。それでも売上を維持し続けないといけないため、歯科医院としてはスタッフの産休明けを待つといった選択肢を取ることができず、別の歯科衛生士を補充するしかないんですよね。

このような状況を知り、「フレキシブルにスポットで働けるような人材プールを持つサービスがあったらニーズは非常に高いだろう」と、個人事業主をやっていた頃から考えていました。仕事の関係で年間数百人の歯科衛生士や歯科助手と面談する中で、「スポットで働けるサービスがあったら良いよね」という話も聞いてきました。そこで満を持して
2019年に株式会社HANOWAを設立して、2020年に『HANOWA』のサービスをローンチし、現在に至ります。

若林:個人事業主のときに歯科医院の求人広告の支援をしていて、そこで歯科衛生士の人材不足という強烈なペインを感じて、「サービスにするしかない」ということで歯科衛生士や歯科助手、歯科技師と歯科医院をマッチングするプラットフォーム『HANOWA』を作ったということですね。

歯科医院の採用や経営をコンサルしている中でペインに気づけるというのは、スタートアップとしてはとても美しいストーリーだと思います。

小口でも借り入れをしたことが実績になる

新井さん:個人事業主時代に資金調達をしようと起業に関する書籍を読んでいて、まだ世の中にないサービスを作るときにエクイティファイナンスなどさまざまな資金調達の方法があることを知りました。その際に「もしエクイティファイナンスをやるのであれば株式会社があった方がいいんだな」と思い、2019年1月に法人成りしました。その後、初回のエクイティファイナンスを同年11月に実行するという流れでサービスローンチに向けた資金調達も実施した流れです。

若林:個人事業の頃にも資金調達をしたのですね。当時、借り入れはしたのでしょうか?

新井さん:はい。日本政策金融公庫から300万円ほど借り入れました。当時はよく分かっていなかったのですが、過去の取引実績や信用などは法人成りした後も審査基準になることが後々分かりました。その後ジワジワとデットファイナンスを調達していくようになるのですが、小口でもまずは借り入れすることが効果的だったので、当時の判断は良かったと今になって思います。

若林:そうですよね。小口でもいいので借り入れをしたことが実績になり、おっしゃるとおり法人成りした後の信用にもつながります。何より新井さんご自身が融資取引について初めてではないという状態になるメリットは大きいですね。

デットファイナンスで約1億円調達 全体の累計調達金額は3億円強

若林:これまで総額いくら調達したのでしょうか?

新井さん:2019年11月に初回のエクイティファイナンスを実施し、およそ1年半後の2021年4月に2回目、さらに1年後の2023年5月に3回目のエクイティファイナンスを発表し、エクイティだけの累計でおよそ2億円強を調達しています。

他に、個人事業主時代に借り入れた300万円から少しずつ取引規模を拡大して公庫からトータルで3,000万円ほど集めつつ、デットファイナンスでは1億円ほど調達しています。全体の累計調達金額は3億円強ですね。

若林さん:素晴らしいですね。トータルの調達金額である3億円のうち、1億円がデットファイナンスというのは割合としては大きく、かなり力を入れて調達しないと達成が難しい数字かと思います。ということは、事業も順調に黒字化できているのでしょうか。

新井さん:おかげさまで、トップラインは2021年に4倍、2022年に5倍近くまで上昇させることができています。しかし設立から4期経ちましたが、一度として黒字になったことはない状態が続いています。

若林:にも関わらず、1億円をデットファイナンスで調達できているんですよね。これは個人事業主時代に融資の実績を作っただけでは達成できない数字だと思います。

まとめ

株式会社HANOWAの新井さんをゲストに迎え、サービスローンチに至るまでの背景について話を聞きました。

個人事業主時代に歯科衛生士の求人票作成の案件をこなす中で人材不足を実感。歯科衛生士がスポットで働けるサービスがあればニーズが高いと予測し、新井さんはギグワークプラットフォーム『HANOWA』をローンチしました。会社設立にあたってエクイティファイナンスで2億円強を調達後、さらに事業は黒字化していない中、デットファイナンスで1億円の資金調達にも成功しています。

赤字のスタートアップでも1億円の融資調達がなぜできたのか?
次回の記事でそのポイントをお届けします。 

『HANOWA』のサービスページ

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