MRR別融資のポイント #4 MRR1,000万円以上のケース
スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。
全4回にわたって「MRR(*1)別融資のポイント」というテーマで、スタートアップが融資を利用する際のポイントを解説しています。以下は各記事へのリンクです。
MRR1,000万円以上(本記事)
1) Monthly Recurring Revenueの略。日本語では「月次経常収益」と訳され毎月決まって発生する売上を意味する
第4回目となるこのnoteでは、MRRが1,000万円以上のスタートアップが融資を利用する際のポイントをお伝えします。
MRRが1,000万円を超えたフェーズでは、希薄化(*2)を防ぐことが重要になってきます。
そのためには(エクイティファイナンスの厳しい市況も勘案すると)可能な限りデット・ファイナンス(融資による資金調達)の割合を増やしてエクイティ・ファイナンス(株式発行による資金調達)を減らす必要がありますので、本記事を参考にデットの実施を検討してみてください。
*2) 株式の発行などにより1株あたりの価値が低下すること
MRRが1,000万円以上のスタートアップが融資で気をつけるポイント
前回までと同様、MRRを「売上が安定している状況での直近3カ月の平均月商」と捉えることを前提に解説します。
MRRが1,000万円以上のスタートアップが融資を申し込む際に気をつけるポイントは以下の3点です。
次の章から、それぞれ詳しく解説します。
商工中金や資本性ローンの利用も視野に入れよう
MRRが1,000万円以上のスタートアップが利用すべき融資制度や金融機関は次の通りです。
商工中金
中小企業事業(日本政策金融公庫)
プロパー融資
ベンチャーデット
前回のnoteでお伝えした商工中金からの融資に加え、日本政策金融公庫の中小企業事業セクションや民間金融機関からのプロパー融資、ベンチャーデットも検討し始めましょう。
中小企業事業では、スタートアップ向けに「新株予約権付融資」という融資制度を用意しています。
これは企業が発行する新株予約権(*3)を公庫が取得し、資金を無担保で融資する仕組みになっています。
*3) 発行時に定められた価額で、所定の株数の株式を所定の期間内に取得することができる権利
スタートアップ側には、新株予約権を渡す代わりに金利を安くしてもらえるメリットがあります。新株予約権付融資は公庫だけでなく静岡銀行など、スタートアップ支援に積極的な金融機関でも取り扱っています。
また、プロパー融資(*4)にもチャレンジしてみましょう。ただし、初めて取引する金融機関から融資を受けるのは難しいため、保証協会付融資の8,000万円の無担保無保証枠があるうちに、複数の銀行と取引をして、信用を積み上げておくことをおすすめします。
*4) 保証協会を利用しない金融機関からの直接融資
さらに、ベンチャーデットの利用も検討してみてください。ベンチャーデットとは、スタートアップ向けに設計された融資のことです。詳しくはこちらのnoteで解説しています。
借りられる金額の目安は1行あたり3,000万〜5,000万円
MRR1,000万円以上のスタートアップが融資で借りられる金額の目安は、1行あたり
3,000万〜5,000万円。MRRの2〜3倍が目安になります。
ただし、これまでの取引や返済の実績、事業のモメンタム(勢い)やファイナンスの状況によっては、1億円以上の融資を受けているスタートアップも少なくありません。
(より)大型の資金調達が可能なフェーズであることも認識しておきましょう。
日本政策金融公庫の中小企業事業を利用する場合、MRRが1,000万円のフェーズでは少し早いかもしれませんが、MRRが3,000万円を超えてくると取引している事例もありますので参考にしてください。
「複数行との取引」と「定期的なコミュニケーション」が融資審査を有利に
MRRが1,000万円以上のスタートアップが融資を受ける際には、前回お伝えした「黒字化の蓋然性」に加え、次の2点も押さえておきましょう。
複数の金融機関との取引
定期的なコミュニケーション
まずは1つ目の「複数の金融機関との取引」について。
金融機関と融資の取引をする際には交渉の上、以下のような融資条件が設定されます。
金利
返済期間
代表者の連帯保証の有無
このとき、複数の金融機関と並行して交渉することで、金融機関同士で融資条件を競ってもらうのです。すると、スタートアップにとって有利な条件で融資を受けられる可能性が高くなります。
ただし前述したように、新規取引でプロパー融資を受けるのは難しいため、保証協会の枠があるうちに複数の銀行と取引をして、返済実績を作っておく必要があります。
2つ目の「定期的なコミュニケーション」について。
毎月、四半期に1回、少なくとも半期に1回は、金融機関の担当者に試算表や決算書、事業計画書などを事業の現状報告として送付しましょう。
エクイティ・ファイナンスを実施しているスタートアップならば、株主定例会などで事業の状況を報告していると思います。
これと同じように銀行の担当者に対しても、定期的に予実状況や事業進捗、財務状況を説明することで、バックオフィスを含めた経営体制の盤石さをアピールすることができます。
融資審査を有利に進めるためにも、金融機関との定期的なコミュニケーションを意識してみてください。
まとめ
MRRが1,000万円以上のスタートアップが融資を利用する際のポイントを解説しました。以下に内容をまとめます。
利用すべき融資制度や金融機関は商工中金・中小企業事業(日本政策金融公庫)・プロパー融資・ベンチャーデット
融資金額の目安はMRRの2〜3倍、1行あたり3,000万〜5,000万円
「黒字化の蓋然性」の他、「複数行と取引をしておくこと」や「定期的にコミュニケーションを取ること」が重要
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