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MRR別融資のポイント #03 MRR500万〜1000万円のケース

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

全4回にわたって「MRR(*1)別融資のポイント」というテーマで、スタートアップが融資を利用する際のポイントを解説しています。以下は各記事へのリンクです。

  1. MRR0〜100万円かつ創業1期未満

  2. MRR100万〜500万円かつ創業2期未満

  3. MRR500万〜1,000万円(本記事)

  4. MRR1,000万円以上

*1) Monthly Recurring Revenueの略。日本語では「月次経常収益」と訳され毎月決まって発生する売上を意味する

第3回目となるこの記事では、MRRが500万〜1,000万円のスタートアップが融資を利用する際のポイントをお伝えします。

MRR500万〜1,000万円のスタートアップはビジネスモデルにもよりますが、エクイティ・ファイナンス(株式発行による資金調達)を利用しているかもしれません。
本記事を参考に、エクイティだけでなく、デット・ファイナンス(融資による資金調達)の実施も検討してみてください。

このnoteは若林によるPodcast「INQ若林のDebt&Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。Podcastでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

MRRが500万〜1,000万円のスタートアップが融資で気をつけるポイント

前回と同様、MRRを「売上が安定している状況での直近3カ月の平均月商」と捉えることを前提に解説します。

MRRが500万〜1,000万円のスタートアップが融資を申し込む際に気をつけるポイントは以下の3点です。

✅利用すべき融資制度や金融機関
日本政策金融公庫・保証協会付き融資・商工中金・資本性ローン

金額の目安
1,500万〜3,000万円(資本性ローンの場合は3,000万〜5,000万円)

重要視される点
前期の決算・前回事業計画書との差分・黒字化の蓋然性

次の章から、それぞれ詳しく解説します。

商工中金や資本性ローンの利用も視野に入れよう

MRRが500万〜1,000万円のスタートアップが利用すべき融資制度や金融機関は次の通りです。

  • 日本政策金融公庫(以下、公庫)

  • 保証協会付き融資

  • 資本性ローン

  • 商工中金

前回の記事でも紹介した日本政策金融公庫の融資や保証協会付き融資に加え、資本性ローン商工中金の利用も視野に入ります。

資本性ローンとは、公庫によるスタートアップ向けの融資制度で、出資に近い考え方に基づいています(詳しくはこちら)。

商工中金とは株式会社商工組合中央金庫の略で、政府系の金融機関ではありますが、100%政府の機関である公庫に対して、政府が46%の株式を保有する半官半民の株式会社です(詳しくはこちら)。

借りられる金額の目安は1,500万〜3,000万円

MRR500万〜1,000万のスタートアップが融資で借りられる金額の目安は、1,500万〜3,000万円、資本性ローンを利用する場合は3,000万〜5,000万円です。

借りられる金額の目安は基本的にMRRの2〜3倍といわれていますので、単純計算でMRRが500万円であれば1,500万円、MRRが1,000万円であれば3,000万円が上限の目安になります。

商工中金は公庫の創業融資を取り扱うセクションよりも大きな金額を扱う立ち位置にある金融機関です。そのため、融資金額が2,000万〜3,000万円以上からであれば利用できるケースが多い傾向にあります。

MRRが500万円ですと商工中金を利用するには少し早いかもしれませんが、商工中金は近年スタートアップへの融資にも力を入れていますので、MRRが1,000万円に到達する見込みがあれば、検討してみてもよいでしょう。

資本性ローンを利用する場合に借りられる金額の目安は3,000万〜5,000万円。制度上の上限は7,200万円ですが、MRRが500万〜1,000万円のスタートアップの場合、私が見てきた中では上記の金額で借りているケースが比較的多かったです。

審査では「黒字化の蓋然性」が重要視される

MRR500万〜1,000万円のスタートアップが融資を受ける際に、金融機関から重要視されるのは次の3点です。

  1. 前期の決算

  2. 前回事業計画書との差分

  3. 黒字化の蓋然性

1と2については前回の記事で解説していますので、そちらを参照ください。

MRR500万〜1,000万円のスタートアップでは、上記1と2に加えて黒字化の蓋然性(がいぜんせい)も重要視されるようになります。

プレシリーズA(*2)やシリーズA(*3)でエクイティを実施したスタートアップの場合、調達後にバーンレート(1カ月あたりの消費コスト)が上がり、赤字になる可能性があります。

*2 ) PMF(サービスや商品が市場で受け入れられている状態)を目指しているフェーズ
*3 ) サービス開始しておりPMFが見え始めているフェーズ

このような赤字状況下で融資を利用するには、黒字化の蓋然性が高いことを示す必要があります。

具体的には、以下のような状態です。

  • 売上の伸びが堅調

  • 開発費や広告宣伝費などを調整することで黒字化できる

  • 黒字化により1〜3年で利益剰余金から返済が見込める

特に商工中金の融資や資本性ローンを利用する場合には黒字化の蓋然性がポイントになりますので、利用を検討している経営者は覚えておきましょう。

まとめ

MRRが500万〜1,000万円のスタートアップが融資を利用する際のポイントを解説しました。以下に内容をまとめます。

  • 利用すべき融資制度や金融機関は、公庫、保証協会付き融資、商工中金、資本性ローン

  • 融資金額の目安はMRRの2〜3倍、1,500万〜3,000万円で、資本性ローンの場合は3,000万〜5,000万円

  • 金融機関は前期の決算、前回事業計画書との乖離に加え、黒字化の蓋然性を重視している

次回はMRRが1,000万円以上のスタートアップが融資を利用する際のポイントについて解説します。

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