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公庫の新創業融資、すぐやるべき人と、後でやるべき人

スタートアップの融資による資金調達を支援するINQの若林( @wakaba_office )です。いつもありがとうございます。

前回のnoteでは「補助金と融資の組み合わせ」について解説しました。
今回のnoteでは「公庫の新創業融資、起業したらすぐやるべき人と、後でやるべき人」というテーマを解説します。起業してすぐに公庫(日本政策金融公庫)の新創業融資を利用すべきか否かを検討する際のポイントをお伝えします。

このnoteは若林によるポッドキャスト「INQ若林のDebt and Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。ポッドキャストでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

公庫の新創業融資をすぐに利用すべき人・後で利用すべき人

起業してすぐに公庫の新創業融資を利用すべき人と、後で利用すべき人の違いはどのような点にあるのでしょうか。

以下の条件に当てはまる場合は、すぐに新創業融資を利用すべきといえます。

✅ 社会人(学生起業ではない)
✅ 30歳以上
✅ これから起業する事業に関連の深い経験が豊富
✅ スモールスタートできるビジネスモデルを想定

一方、以下の条件に当てはまる場合は、起業後すぐに新創業融資を利用すべきとはいえません

✅ 学生起業
✅ 年齢が若い
✅ 経験が短い
✅ スタートアップの成長モデル(確かな市場が未だない)を想定

なぜ、このように分けられるのでしょうか。

答えは、公庫が毎年出している「新規開業実態調査(PDF)」という統計データの中にあります。

出典:「2021年度新規開業実態調査」.日本政策金融公庫(参照 2022-08-23)

新規開業実態調査とは、公庫から融資を受けることができた起業家の統計データです。 

言い換えれば、このデータに含まれていない起業家は、公庫の融資の対象にならなかったともいえます。 
そのため、このデータから「公庫から融資を受けやすい起業家」の傾向を把握できるのです。

以前に「創業融資の3つのポイント」というnoteを公開し、創業融資で重視される以下の3つのポイントについて説明しました。

  • 経験

  • 自己資金

  • 事業計画

この「経験」というポイントが、起業後すぐに創業融資を利用すべきかどうかという観点では重要になりますので、深堀りして解説します。

公庫から融資を受けられた20代の起業家はたったの4.8%

起業後すぐに新創業融資を利用すべきかどうか検討する際のポイントの1つに、経験があります。
 
2021年の新規開業実態調査によると、公庫から融資を受けられた起業家の年代別の割合は以下の通りです。

  • 29歳以下:5.4%

  • 30歳台:31.3%

  • 40歳台:36.9%

  • 50歳台:19.4%

  • 60歳以上:7.0%

融資を受けられた起業家のうち20代の起業家はわずか5.4%しかおらず、ほとんどが30代以上の起業家であることが分かります。
これだけ起業がしやすくなり、20代でも活躍する起業家が続々と現れているにも関わらずです。
 
また「これから起業する事業に関連の深い経験を何年積んできたか(=斯業経験)」という問いには平均15年という統計が出ているため、20代の起業家にとっては非常に不利といえるでしょう。

以上のことから、起業する事業に関連の深い経験を積んできた30代以上の人の方が、公庫から融資を受けやすいのは明らかといえます。

スモールスタートできるビジネスが望ましい

起業後すぐに新創業融資を利用すべきかどうか検討する際のポイントとして「成長モデル」という観点もあります。

公庫から融資を受ける際は、小さく産んで大きく育てるビジネスモデルが好まれる傾向にあります。 
公庫としても、少ないリスクでスモールスタートで比較的早めに売上が立ち始める事業に、最初は小さく貸して、事業の成長に合わせて段階的に融資金額を上げていく「段階与信」を理想としています。

インターネットの発展に伴い、起業初期に必要な設備投資額は大幅に減少してきました。
平均開業費用は以下の通り、年を追うごとに減ってきていることが分かります。

  • 2000年代:1,537万円

  • 2010年代:1,289万円

  • 2020年代:989万円

公庫の担当者と話しているときにも「小さく生んで大きく育てる事業が望ましい」という言葉をよく聞きます。

この言葉の背景には、開業に必要な費用が減少している(=多額の費用をかけずとも開業できる)という面もあるのでしょう。

公庫の新創業融資をすぐに利用すべきかどうか検討する際は小さく産んで大きく育てる=スモールスタートでき、早めに売上が立つビジネスモデルを想定しているかどうかも重要なポイントになります。

まとめ

今回のnoteでは「公庫の新創業融資、すぐやるべき人と後でやるべき人」というテーマをお伝えしました。以下に内容をまとめます。

次の条件に当てはまる人は、起業後すぐに新創業融資を利用すべきです。

  • 社会人(学生起業ではない)

  • 30歳以上

  • これから起業する事業に関連の深い経験が豊富

  • スモールスタートできるビジネスモデルを想定

次の条件に当てはまる場合は、起業後すぐに新創業融資を利用すべきではありません。

  • 学生起業

  • 年齢が若い

  • 経験が短い

  • スタートアップの成長モデル(確かな市場が未だない)を想定

起業後すぐに新創業融資を利用すべきでない人は、公庫が想定している起業家の枠から外れている可能性があります。
この場合は、融資に時間を使うのではなくエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)に全振りするなどした方が得策かもしれません。
 
もちろん、上記は傾向の話であって、一方では学生起業でも融資が実行されている事例はあります。20代の融資事例も多数あります。
融資を諦めたくないという場合には、ぜひ若林のTwitterのDMまで壁打ちのオファーなどをいただければ幸いです。 

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