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天使のみなさま、祝福はリモートにて願います (11)守護天使
(11)守護天使
3時を過ぎた。ボクはタエコに目配せをして言う。
「本当にいろいろとお世話になりました。それに、たくさんご馳走になりました。ありがとうございます」
「そろそろ帰るわ。明日もあるし」
「そうか。じゃあ、恵一。よろしくな」とお父さま。
恵一お兄さまは駐車場へ向かう。
「また、いつでも遊びに来てくださいね」とお母さま。
「東京出張のときは連絡するので、今度はツバサ君も一緒に食事をしよう」と恵務お兄さま。
「はい。楽しみにしてます」
荷物を持って、タエコとボクは玄関に立つ。駅まで送ってくれるヨッシーさんは、先にバンへ向かう。
「ありがとうございました。末永く、お願いします」
そう言うと、並んだ4人にタエコとボクは一礼する。
「気をつけて」とお父さま。
「あまり無理しないでね」とお母さま。
玄関前に横付けされたバンに乗り込むと、車内から軽く礼をしながら、手を振る。
玄関前の4人が手を振って見送る。
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新天歌駅を新幹線が出るのは4時過ぎ。待っている間、お兄さまとヨッシーさん、タエコが懐かしい話をしている。いろいろなエピソードについて、タエコがボクに解説してくれる。
列車が到着する。タエコとボクはデッキに乗り込む。
「じゃあ。また」とお兄さま。
「二人とも元気でね」とヨッシーさん。
「ありがとう。二人も元気で」とタエコ。
「ありがとうございました」とボク。
扉がゆっくりと閉まる。
ホーム上の二人の姿が加速しながら後ろに流れていき、やがて見えなくなる。
二人掛けの席に、往路と同じくタエコが窓側、ボクが通路側で腰かける。
「ふうう」とタエコが溜息。
「疲れた?」とボク。
「うん。それなりに緊張してたから。ツバサは?」
「そうだねえ。肩の荷が下りて、楽になったような気がする」
遠くを見るようにしてタエコが言う。
「大学に入学するときに、同じようにアニキに見送られて新幹線に乗った。あのときは隣にマイがいてくれたおかげで、東京での一人暮らしに心細くなる気持ちが和らいだ」
「6年前になるのかな」
ボクのほうを向いてタエコ。
「いまはツバサが隣にいてくれるから、全然心細くないよ」
川を渡って、次の停車駅、十海(とおみ)駅が近づく。タエコが再び話し始める。
「たしかノエルくんは、ミカのことを『ダチ』と呼んでいた。タイシくんとミカは『同志』と名乗っていた。わたしたちの関係は、どう言い表したらいいのかな?」
「入籍したら『夫婦』だよね」
「法律の上の話じゃなくて」
「...ゲーム専門学校の『同期』。AGLの『同僚』。それに...ボクたちは、同じタイミングで『オトナ』になった」
「なにそれ? やだ...」
タエコはそう言いながら、満更でもなさそうに、ボクのほうに寄りかかってきた。
列車は十海駅を発車した。
「安心したら、眠くなってきた」
「ボクも」
「二人とも眠り込んだらヤバくね?」
「大丈夫。この列車は東京行きだから。もしもボクたちが眠っていたら、守護天使様がお出ましになって祝福してくれるのさ」
「守護天使様?」
「そう。JRの制服着て、『お客様、終点です』って言ってね」
タエコは、ボクの二の腕に頭をつけると、すぐに眠りに落ちた。
彼女の、そのかわいい寝顔を確認すると、ボクも目を閉じる...
<7作目 完>
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