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天使のみなさま、祝福はリモートにて願います (9)天使たち、祝福する

(9)天使たち、祝福する


 Web会議の画面には、東京と天歌(あまうた)で紹介してもらったタエコの仲間たちが映っている。

 9分割された画面の左上には、ミカさんとタイシさん。話し始めると全画面にズームアップされる。
「タエコと高校のバンドで一緒だった森宮 美香です」
「その連れ合いの中村 大志です」
「タエコとツバサさんは、本当にお似合いな素敵なペアだと思います」とミカさん。
 話し終わると、もとの9分割に戻る。

 その右隣に、コトネさんとカケルくん。こちらも全画面にズームアップ。
「永山 琴音です」
「宮内 翔です」
「ミカさんのご縁で参加させていただきました」
「ひょっとして宮内君?」と恵務お兄さま。
「はい、本部長」とカケルくん。
「不思議なご縁だねえ」
 応接間の話し声は、タエコのPCに接続した会議用マイクが拾ってみんなに届いている。

 さらに隣、右上からマイさんとタイさん。
「ミカと同じくタエコと同じバンドだった坂上 麻衣です」
「そのパートナーの円城寺 太です」
「ドラマーとしてしっかりと努力ができたタエコは、絶対大丈夫です」とマイさん。

 中段の左から、マーちゃんとクーちゃん。
「バンドはちがうけど軽音部でタエコとご一緒させていただいた早川 纏衣です」
「そのパートナーの羽根田 空良です」
「ひょっとして十海(とおみ)市の同性パートナーシップ第1号の?」と真弓美さん。
「そのとおりです」とマーちゃん。
「好き同士が一緒になる形は、いろいろあっていいと思います」とクーちゃん。

 中段の真ん中から、今回リアルでお会いしていないナッチさん。
「タエコ、お久しぶり。こちらは午後9時前。外は雪が降ってま~す」
「マンハッタンに通ってるんだよね。音楽の勉強はどう?」とタエコ。
「毎日とっても楽しい。充実してる」
「よかった、元気そうで」
「それでは、ナッチこと堀家 奈智(ほりいえ なち)が、ニュージャージーからお伝えしました。次の方、どうぞ」

 中段の右側から、リツコさん。
「ルミ女出身で、東京でよくタエコに遊んでもらっている富山 律子です」
「そろそろ海外出張かな?」とタエコ。
「うん。ニューヨーク行ったら、ナッチに会いに行くね! ツバサさん、また東京でタエコと幸せなところを見せてくださいね」

 下段の左側から、ミクさん。
「こんにちは~。初代ベーシストとしてタエコとご一緒した、鷹司 美紅です」
「浅山の若殿とご婚約された鷹司の姫ですか」とおじいさま。
「そのとおりで~す。次にお出ましになるルカ姉が、なんと私の妹になっちゃうんですよ」

 その右隣りから、ルカさん。
「ミクの妹になる浅山 輝佳です」
「浅山の姫...」とおじいさま。
「内田くんとヨッシーのキューピッド役だった私には、ツバサくんとタエコさんは、負けないくらい素敵なカップルだとわかります」

 そして最後。恵一お兄さまとヨッシー。お兄さまの部屋にいる。
「いまさらだけれど、タエコの兄の恵一です」
「そしてタエコとバンド仲間だった吉野 未来です。タエコ、ここまでは大丈夫だったよね」
「うん。ばっちりさ。この後も頼むよ」
「じゃあ、えーと、これをこうやって」とヨッシーさんが言うと、彼女が操作しているボクのPCの、ファイル選択画面が映し出された。そのうちひとつをクリックする。

 ディスプレイは共有画面へと切り替わる。

 パステルピンクのグラデーションが背景のアニメーション映像。背中の肩甲骨のあたりから羽根の生えた天使たちが、次々と舞い降りてくる。3DCGで合成された白い衣装のキャラクター。そのそれぞれの顔は、二人を除いて、Web会議の画面上に映った人たちと、応接間にいる内田家の人たちを元に作られている。

 舞い降りてきた19人の天使が、前後2列に真ん中を開けて並ぶ。前列左側のミカさんとタイシさんの隣に、ここにはいないノエルさんがいる。20人目に舞い降りた中年の女性風の天使は、やはりここにはいないボクの母親。後列の真ん中に納まる。

 21人目と22人目の男女のご老人は、おじいさまとおばあさま。前列の真ん中に並んで納まる。そして最後に、タエコとボク。上端の左右の角から舞い降りて、前列の左右の端に納まる。

 こうして、画面上に24人の天使が勢揃いした。各々の息遣いが伝わるようなアニメーションにしたつもりだったけれど、伝わっただろうか。

「そうか。わしがゲームの絵の中に入ると、このようになるのだな。しわくちゃの爺さんが、ツルツルになっとる。これは愉快、愉快」と楽しそうにおじいさま。
「ツバサ君。君が作ったのか?」
「キャラクターは全部、写真から合成して自分が作りました。あとはアニメーターに動きを指定して、タエコがプログラムを書きました」

 ディスプレイは再びWeb会議の画面に切り替わった。
 恵一お兄さまが音頭を取る。
「せーのー」
 画面の全員が唱和する。

「私たちは、タエコさんとツバサくんを、祝福します!」

「...タエコ。お前は本当に多くのいい仲間に恵まれた。多恵子の名前そのとおりだな」と涙ぐみながらおじいさま。
「学位のことはもう気にせんでいい。応援してくださる皆さんに感謝して、自分の好きな道を進みなさい」
「おじいさま。ありがとうございます」とタエコ。
「まあ、お前のことだから、わしが駄目だと言っても聞かなかっただろうがなあ」
「恐れ入ります」と言ってタエコがニッコリと微笑む。

「それから、恵治。時候がよくなったら、ツバサ君のお母上をこちらにご招待しよう。もちろんツバサ君とタエコも一緒に」
「そうですね。お食事をして、みんなで写真を撮りましょう」とお父さま。
「ツバサ君。戻ったらお母上によろしくお伝え願いたい」
「ありがとうございます」
「そして、この甘やかし放題の孫娘を、どうぞよしなにと」

 おじいさまを先頭に、内田家の方々は応接間から出て行かれた。

<続く>

★リンク先はこちら

作品紹介→https://note.com/wk2013/n/n4a6f336c637d

(8)→https://note.com/wk2013/n/n1164255bd47b

(10)→https://note.com/wk2013/n/n0bf92825d28f

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