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ニセモノのホンモノジエイカン

二十代後半から三十二歳まで
とある海自の船で初めて
経理の責任者=経理員長になった。

しかし・・・部下はゼロ名
後輩は船の中にたくさんいるが
海自は「多品種少量生産配置」

同じ職種に下級者がいなければ

「ひとり親方」みたいなモノである。

この時期の小生は
「下士官上級者の経理職種養成コース」
を卒業して
海自でいうところの「パート長」
に初めてついた訳だ。

20歳後半で
「パートの全責任なんて・・・」
負えるはずのない
「ニセモノ・・・🔰」

でも・・・学校をちゃんと出ているので
職種としては

「上級の経理員」


たくさんいる
「ホンモノの先輩方」
と同じ資格を持っている。

ハッキリいって
「一人親方」※がもっとも適切な
配置となるのだろう。

※一人親方はこの時が最後であった。
 後年小官と勤務した後輩の皆様には
 悪夢の始まり・・・

その船は以前にも書いたが

「海自版風来坊の金さん」みたいな船で

一度出港したら・・・
「季節が変わるまで港には入らない」

どこにも寄らず・・・ひたらスラ
大洋をプカプカという

「ひょこりひょうたん島の親戚」

みたいな船・・・

経理員長※の仕事は

「出港するまでが勝負」

※経理・契約・庶務・人事・福利厚生の事務担当者

一度海へ出てしまえば・・・携帯も通じず・・・
家族とも音信不通
当然経理関係の
ホンモノの仕事は
「出港中は発生しない」

「なぜそんな無駄飯喰い」が
船に乗っているのか?
それは

「海自の艦艇はいついかなる時も個艦が
陸自の大隊に相当するコマンドの単位」
だからである。

何かのトラブルで・・・
想定外の地域へ入港する可能性も
「ゼロではない・・・かもしれない・・・・という可能性は排除できない・・・・という想定」

自衛隊が所在する地域の港湾に入港したり仮泊する場合は
「臨時的な契約業務」は発生しない。

ただし
「自衛隊の機関が存在しない港湾の場合」

「タグボート・パイロット・岸壁使用料・真水・食糧搭載」
等の調達業務は発生する可能性が高い。


船には経理員長の上司に
補給長という
「衛生・調理・補給・経理」を
総括する総合的な幹部は存在するが・・・
「あまりにも所掌範囲が広すぎて・・・
器用貧乏の代名詞」のような職務であり、
「契約法規や商慣行・資金決済手順※」
などに精通するスペシャリストが必要になる。

※財務省と会計検査院に雁字搦めに括られた
 細かい法規があり・・・間違うと懲罰を
 いただく。

で・・・・小生は何をやっていたのか?

一応4分隊員(衛生・調理・補給・経理)なので・・・
一日一度くらい「朝食・昼食・夕食」を作ったり・・・
稀に艦橋で任務についたり・・・
共同通信のFAX新聞を少し読みやすく艦内新聞に
編集したり・・・
衛生員長・・・看護師と
救命訓練を・・・
「衛生員長は技量を維持しないと
 職業人として練度が低下する」
から・・・「彼も一人親方」なので・・・
たいへんな配置である。

あとは
「たま~に飛んでくるとある航空機」
の着艦作業員として
宇宙飛行士の親戚みたいな超高温にも耐えるという
ピカピカの防火服を着て
飛行甲板で航空機の着艦作業を見守る・・・

小生は「艦上救難員(ファイヤーメン)」の配置
にありながら・・・
「船の防火防水部署」という火災対処訓練しか経験がない。
船の火災訓練なら何百回も・・・
ホンモノの火災も体験しているし・・・

初任幹部をシゴクための部署「練習隊」で
訓練を付ける配置も経験したが・・・

でも「クラッシュ」という
艦上救難員の教育は一度も受けていない
かっこだけ「ホンモノ」だが
「船の火災知識しかないニセモノ」
として・・・
数十回着艦作業を見ていた。

海自では

「いざという時欠員を随時埋め合せできる」

能力構築を目指した時期があり・・・
「他の職種も一通り体験する」一環として
「航空機の着艦誘導※」
をまねごとだけ体験させてもらった。

※マーシャリングという。
 チェッカフラッグの生地をそのまま
 ベストにした上着を身に着け
 手を大きく振っている「あの人」である。
 航空機へサインを送る誘導員は
 飛行場で見かけた事があるでしょう。

本来は5分隊という
「飛行科」が担当する職分である。
小生が乗っていたその船には大きな飛行甲板や
救難器具・着艦用の装備はあったが
航空機関係職員はいなかった。

そして
普通の艦艇では4分隊員がほぼ従事しない
1分隊という船の接岸離岸などの入港作業や
船に搭載している小舟を上げ下ろしする
部署の仕事も兼務していた。

岸壁にラッタルという階段を付ける時に使用する。
「クレーン操縦手」も資格試験を受けて・・・
従事した。

今から考えれば恐ろしいことだが
数トン搭載可能なクレーンまで操縦して※・・・
まあ乗員の少ない船なので
「ひとり5役くらいは普通に・・・
ほとんどの乗員が従事していた」

※クレーン操作は慣れると非常に面白いが
 危険な仕事である。
 不慣れな頃は「油圧のあたりがくる」
 までの閾値がわからず苦労したが・・・
 どの程度で挙動がとまり・・・
 ここまでなら大丈夫・・・・と・・・
 理解できた頃には転勤してそれっきりである。

自衛隊には・・・一般社会と同様に
様々な資格があり・・・
資格があれば
「ホンモノ」とみなされるが・・・
経験値が少ない
「ニセモノ」も大勢いる。

ニセモノからホンモノへの過程は
「厳しい指導」が当然であった。
「昔は!!!」


しかし既にそんな時代ではない。
OJTを効果的に取り入れ

「促成栽培でもホンモノ味」

がする野菜は

「科学のチカラ」で
可能な時代である。


海自でもAIを有効活用し・・・

促成栽培の自衛官は役立たず
という昔の若者たちが
滔々と述べる
「失敗談の振りをした自慢話」


に一喜一憂せず・・・

「実践でなくても学べる術科訓練」
が確立していくだろう・・・

「いろんな分野のニセモノ」であった
小生は思う次第である。

「真夏の耐火服の暑さを・・・
 無理に経験して
 熱中症になる必要はない」


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