見出し画像

さいたまヨーロッパ野菜研究会③1年目の想定外

中小企業診断士のフクダです。
前回は、さいたまヨーロッパ野菜研究会を結成し、生産者が初の収穫に向けて動き出したお話でした。

待望の初出荷、しかし…


2013年夏から、10名ほどの生産者がヨーロッパ野菜の栽培を始めました。
最初は分からないことだらけです。トキタ種苗のFさんや、品種改良を手掛けるブリーダーの方々が毎週のように畑に来て指導してくれました。
収穫が近づくと、新妻シェフが畑に来て、レストランで使いやすい収穫サイズなどを教えてくれました。

そして10月、待望の初収穫です。
十数名の生産者メンバーのうち、1年目に出荷できたのは4人。
量は少ないですが、10種類以上のヨーロッパ野菜を初出荷という話題性から、NHKのニュース生中継を始め、多くのメディアに取り上げられました。

1年目ですから満足な質とは言えませんでしたが、これでヨーロッパ野菜をレストランに届けられる。とワクワクしていました。
ところが、収穫時期を迎えているのに、売り先である卸のバイヤーさんから、野菜の注文がほとんどきません。
何度も卸のバイヤーさんに確認しましたが、毎週来る注文はわずか。収穫期を過ぎた野菜はどんどんダメになっていきます。

ここで私は、3つの大きな失敗に気が付きました。

野菜だけでは配達コストが合わない

1つ目は、提携する卸売会社の業態を間違えていたこと。
1年目、メインで流通をお願いしたのは、業務用の青果卸さんでした。
彼らが運ぶのは、当然ながら野菜だけです。ヨーロッパ野菜を買いたい、と問い合わせてきたレストランがいても、一ヶ月にかなりの額の野菜を買ってもらえないと、配達のコストが合わないのです。結果として欲しいレストランに野菜を届けられませんでした。

ニーズとウォンツは違う

2つ目は、ニーズとウォンツを混同していたこと。私は、ニーズのある野菜を作れば売れる、と勘違いしていました。しかし、ニーズはウォンツにならないと売れません。
レストランの「本格的なイタリア料理が作りたい、イタリア野菜が欲しい」というニーズを、「直径5㎝(規格)の渦巻きビーツ(品目)を、20個(購入単位)月曜と水曜(配達日)に届けて欲しい」というウォンツに変えるには、レストランから「どんなものを、どんな形でどうやって届けてほしいのか」を細かく聞き出して形にする必要があったのです。

中小企業診断士はマーケティングのプロでもあるのに、現場では全く使いこなせていなかったと反省しました。

役割分担が曖昧だった

3つ目は、メンバーの役割分担が曖昧だったこと
最初はそれぞれ、こう思っていました

思ってたんと違う

ヨーロッパ野菜は決して、流通ルートと注文書を作れば勝手にじゃんじゃんレストランから注文が来るような商品ではありません。
誰が「◯◯の出荷が始まりました。こういう調理法がおすすめです。こんな規格でいくらです。◯月中旬まで出荷できます。◯日前にFAXで注文してください」といったご案内をするのかが決まっていなかったのです。
これは、それぞれの役割をもっと細かく詰めきれなかった私の責任でした。

メンバー企業が買い支える

せっかく出来上がった野菜を少しでも売ろうと、ファーマーズマーケットに出店しました。生産者も一緒に販売してくれて、初めて直接お客さんに接した生産者も多く刺激になったようです。
また、会長の北さんはシェフ達に「ヨロ研生産者の野菜はできる限り買い取れ」と指示を出して買い支えてくれました。トキタ種苗も展示会やイベント用に野菜を買ってくれました。

1年目は売上も低く苦難の連続でしたが、生産者が思いのほかヨーロッパ野菜の栽培を楽しんで協力してくれたこと、シェフたちが新鮮なヨーロッパ野菜を喜んで使ってくれたことが、失敗続きで内心凹みまくっていた私にとって、大きな心の支えになっていました。

レストランを巡る2つのトラック

栽培2年目、野菜の流通に大きな転機が訪れます。
1年目に流通をお願いしていた青果卸が脱退してしまい、また1から流通の協力メンバーを探すことになりました。
会長の北さんは、「埼玉のレストランに毎日配達しているトラックはどこだろう?」と考えました。
1つ目は、酒屋さんのトラック
2つ目は、業務用食材卸の県内最大手である関東食糧のトラック

酒屋さんのトラックは幌がけなので野菜の保冷ができませんが、関東食糧のトラックはアルミバンなので保冷ができるはず。

早速、北さんが関東食糧の臼田社長にコンタクトを取ったところ、その場で快諾してくださり、ヨロ研の新たな流通メンバーとして加わってくれることになりました。

関東食糧は飲食店向けに冷凍食品や調味料、乾物などを販売する企業で、県内に9000軒以上の取引先を持ち、毎日県内全域に配送トラックを走らせていました。当時、野菜の取り扱いはほとんどありませんでしたが、他の食材と混載でヨーロッパ野菜を届けることができれば、配送のハードルもぐんと下がります。

関東食糧も、レストランにとって魅力的な提案ができる商品を探していたところだったので、WIN-WINの関係になれると期待しました。
ところが、こちらもそう簡単には進まなかったのでした。


私の開業の経緯はこちら

マイナビ農業で、私の開業についてご紹介いただきました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?