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令和4年度 政府の連結財務諸表の発表(3.26)+次回記事の予告(「キシャクラブ」という病理)



1)ひっそりと発表

さる3.26、政府の連結財務諸表が、発表されていたようです。

次は概要。

令和4年度連結BS概要

正式版はこちら。。。

https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2022/national/fy2022renketsu.pdf

「発表されていたようです。」と書いたのは、昨日までうっかりしてて気づかなかったから。。。すいません。

ただ、皆さん。お気づきになられてましたか?

私の認識できている限りにおいて、主要メディアはのきなみスルーしています。

さらに先立つこと1/27。今回とは不自然なほど真逆に、単体の財務諸表、バランシート(以下、「BS」)発表の際には、下記に陳列するように、主要メディアがこぞって「債務超過が702兆円に拡大した~大変だ~。」と異口同音に報道してくれたのに。。。

メディアのいう通り、この1月発表の単体財務諸表では、「債務超過」では702兆円。しかし、今回の連結では581.8兆円に圧縮されてます。120.2兆もの減少。。。え~!なぜそっちは報道してこっちは報道しないのでしょう???「一般企業を見習った」「一般企業と同じように」財務情報を作成・開示したのであれば、どっちか報道するなら連結の方でしょう普通。。。

国の財務諸表と連結財務諸表との比較(財務省資料からの転記

なんで、このようないびつな報道になるのか。。。私は単体発表の際に下記記事において、こういうことをする際の財務官僚と主要メディアの心理とともに予測・予言しておきました。ご興味があれば覗いてみてください。

遺憾ながら、私の残念な予測はほとんど当たってしまった訳です。「やっぱり・・・」という思いです。馬券、株式銘柄予想ならともかく、こんなの的中しても嬉しくも誇らしくもなんともないです。

2)日銀を連結対象に含めた場合の令和4年度BS(統合政府BS)

以前、高橋洋一氏、上念司氏など識者のお考えを土台にして、令和3年3月末日現在で、日銀を連結対象に含めた政府連結BSを作成してみました。数字が出そろったところで、これを最新の令和4年度版へ更新してみましょう。

計算方法や手順は、上記記事から始めて3回シリーズで記しました。
これと全く同じ手順で、令和4年第4四半期の日銀財務諸表(下記)を踏まえ、令和4年版の統合政府BSを更新してみました。今回、相殺処理などの途中の手順は割愛。

https://www.boj.or.jp/about/account/data/zai2305a.pd

それがこれ。

令和4年度末統合政府BS


ちなみに下記は参考としての令和3年度版

【参考・再掲】 令和3年度末 統合政府BS

純資産が昨年比で116.2兆円から94.8兆円へと、21.4兆円目減り。しかし、それでも、政府の財政破綻の危険性という意味では、高橋洋一氏が述べる「向こう5年間で1%にも満たない」。。。という状態は全く揺らがない筈。政府として諸外国と比べても超優良といって差し支えないと思われます。

B.統合政府BSに関する若干の疑問と補足(記事末尾※)

3)次回記事の予告


ところでみなさん、ここまで述べてきた単体・連結財務諸表発表をめぐる報道の顛末を俯瞰して、お感じになることはないでしょうか。。。

・・・

それは、不自然なまでの均一性。

主要メディアが不自然なほどに横並びなのです。タイミングも、内容も。。。

何故、単体財務諸表公表の時には横並びで一斉に報道し、他方で、連結財務諸表公表に時には横並びで一切報道しないのか。。。

さらに、1月の単体発表の際の記事を上記に陳列しておきましたが、ご覧になって読み比べてみてください。てにをはレベルで若干の相違はあるものの、中身はほぼ同じ・・・といっていい代物ではないでしょうか。

そんなのたまたま、、、そう思われるかもしれません。しかしこの傾向は、この件だけではありません。最近の具体例を挙げるとすれば、先日の日銀政策決定会合をめぐる報道。こちらの方がより鮮明かもしれません。

横並びで金融緩和から引き締めへの「正常化」を唄い、あまつさえ決定会合前の段階でガバナンス上きわめて問題があると言わざるを得ない金融引き締めへのリーク記事も、横並びのローテーションで頻出しました。

メモの意味でその中のいくつかを貼っておきます。

・・・きりがないのでこのあたりでやめときます(汗・笑)。同じく・・・金太郎飴のように、どこを切っても均一。「日銀内・・・幹部」「(政策決定会合の・・・?)一部出席者」って誰???

私は金融引き締めへの政策転換を一つの方針として打ち出して報道する、それが不適切で、間違っている、と言いたい訳ではありません。確かに私とは異なる意見ですが、それは当然表現の自由の一環として堂々と自由に行われるべきです。

しかし、反対に、現時点での金融緩和継続・延長を主張する考えが、それが学会などでは存在し、その土台となるリフレ経済学説は世界的に見ればむしろ今や主流といって差し支えないにも関わらず、日本国内では主要メディアから一切出てこないし紹介されない。

その結果、主要メディアからの情報に依存せざるを得ない多くの一般国民には、そもそも金融政策について専門家の間でも意見の相違があることすら知らされない。そのうえ、「権威」者としての主要メディアから、「もう決まったこと」と言わんばかりにリーク記事が連発。強烈な同調バイアスとなって、私たちの思考を静かに拘束し始めます。そしてなんとなく、「そういうもんだ・・・」と思いこみ、これに異をとなえることそれ自体よくないこと。。。という「空気」支配の中に沈み込んでいる。気づけば。。。

意見の対立がある問題については、できるだけ多くの意見を多角的に紹介し、広く国民に問題の所在を伝える、という放送法のあるべき報道の姿勢からいかにかけ離れたものか。

なんか・・・皆さんを叱責しているように読めるかもしれません。しかし、私とて少し前まで上記のレベルです。偉そうに人様に説教を垂れる資格など全くありません。その時の私と同じような感覚に気づいた方がいらっしゃれば、この状況について、次回以降に、私と一緒に少し考えてみませんか。

この問題はいろんな切り口で考察可能だと思います。例えば、発信情報の「編集」という視点。

およそ、この世に出回っている加工情報に、作り手の「編集」が乗っていないものはありません。例えば監視カメラのような定点観測映像であっても、カメラをどの場所に設置し、どの方向に向けるか。さらにどの時間帯の映像を撮影して、準備された映像の中からどの部分を使う(=公開する)か、だけでも、撮影者の編集意図、思惑が盛られています。

ですから、当然ながら主要メディアの報道においても、世の中に様々に存在する情報の中から、どの問題を、何時、どのような立場からとらえるか、にも当然編集者の意図が反映されます。まして、今後の国の金融・財政政策を左右する事実に関する報道。本記事で取り上げた財務省の財務諸表の発表においても、単体財務諸表は報道し、連結のそれは報道しない、ことによって、自説に誘導したいという編集者の思惑は乗っている訳です。今書いているこの記事とて同じこと。私の意見に賛同してほしい、仲間になってほしい、という私の思惑が乗っています。(ですから、情報の受け手側の「疑う」という姿勢、とても大事。)

これ自体は、個々のメディアの思惑と思惑の衝突が「論争」につながり、それによって国民の知る権利が充足されるわけですから、何の問題もありません。健全な状態といえるでしょう。・

しかしながら・・・です。

それが主要メディアの横並びになって異論が全く出ず、したがって論争が表れないとすれば・・・。多くの国民はそこに情報源を依存している状況下で、これは都合の悪い情報の流通の遮断です。先の大戦の大本営発表と状況は同じでしょう。この際の「黒幕としての編集者」は戦時中は大本営や内務省、戦後の占領期はGHQでした。今のそれはどこの誰なのでしょう。。。

この謎を解く一つの有力な切り口として、「記者クラブ」の存在があげられると思います。

次回からシリーズ3回で、この問題を取り扱いたいと思います。詳しくは次回以降考察をお伝えしますが、はっきり言って日本の報道環境はこの世界でも悪名高い情報カルテル組織=「キシャクラブ」のお陰で、報道の自由度はアジアの近隣諸国よりも軒並み下、という国際的な評価を受けています。

例えば、ニューヨークタイムズ。2021年に当局の政策変更によって閉鎖した香港支局の代わりの新たなアジアの取材拠点として、「報道の自由度の低さ」を理由に東京ではなく、より報道の自由度が高いお隣の韓国ソウルに移しています。

私たち日本人の多くは歴史問題に関する報道で韓国メディアの偏向を批判します。しかし少なくともニューヨークタイムズは、報道の自由については日本より韓国が上、と判断した訳です。

上記記事では、昨今の日本の報道の自由の低下の原因について、記事発表当時の第二次安倍政権の影響を挙げています。確かにそれもあるかもしれません。しかし、それだけではないと思います。問題の根はより深い。安倍政権以前から安倍政権以後、現在に至るまで共通する「キシャクラブ」の宿痾を見逃すことはできないと思います。

ニューヨークタイムズに関するこのあたりの経緯は、井沢元彦氏の「逆説の日本史 26明治激闘編 日露戦争と日比谷焼き討ちの謎」 第三章、ポーツマスの真実 で、日露戦争時のメディアの問題が、実は現在に至るまでまで尾を引いていることの実例として紹介されています。

ニューヨークタイムズに限らず海外から訪れた多くのジャーナリスト、特派員が日本の「キシャクラブ」の閉鎖性に嫌気がさして、失意の中で次々と拠点とともに日本から撤退しているのが現状です。

最後に、先に紹介した日銀決定会合に先立つ金太郎飴のような均一リーク記事のガバナンス違反に対する、「キシャクラブ」の外側から外国人ジャーナリストが放った勇気ある批判コラムをブルームバーグが載せているので紹介しておきましょう。

次の週開け位から、シリーズを開始したいと思います。

本当はメディアについて専門家の指導を仰ぎながら進めたいところですが、身近におらず。。。そのかわり自説を補強する参考引用文献の適切な開示に可能な限り努めつつ、かつみなさんからのご意見があれば謙虚に耳を傾けつつ慎重に進めたいと思います。宜しくお願いいたします。

ちなみに・・・私たちの今回の検討対象は、「日本記者クラブ」を名称とする団体※ではありません。これとは別に、各省庁、日銀はじめ公的団体、市町村に報道各社の記者(=いわゆる「番記者」)が常駐する「記者クラブ」のことです。

下記に、今回取り上げる「キシャクラブ」とは関係がない、日本記者クラブのHPを貼っておきます。

※統合政府BSに関する若干の疑問と補足


あえて、統合政府BSに関する上記の結果について私が現時点で抱えている疑問、問題意識を付け加えるとするならば、、、最近のこの傾向は、日銀の金融緩和政策の結果、日銀が負債として抱える「発行銀行券」「当座預金」が膨らんでいる結果が大きく作用していると考えられます。

直近の日銀政策決定会合で、マイナス金利やオーバーシュート型コミットメントが停止、YCCの範囲が緩和されました。ゼロ金利や国債の市中買い入れなどのマネタリーベースの拡大は引き続きとしているので、2014年、黒田総裁が就任し、一発目の黒田バズーガーとしてゼロ金利とマネタリーベース拡大が提示されたときに戻った形。年内にあと1回か2回の利上げがあるとしても、しばらくは緩和傾向が続くと思います。ただ、将来本格的な引き締めに転じ、日銀がマネタリーベース(=「発行銀行券」+「当座預金」)の縮小に本腰を入れた場合には、統合政府BSの立場で見ても日銀の負債として連結BSから減額できる金額が目減りし、転じて債務超過に陥る可能性があるな、、、と感じています。その場合どのように考えるべきか。。。

また、以前の記事で申し上げた通り、当座預金の中に外貨建て債権の購入金額が積まれているとすれば、その分は負債から単純に除くことができなくなります。こうなれば統合政府BSの考え方を前提にしても、結論が逆になる可能性を内包していると思っています。

この点は、所詮は経済の素人にすぎない私の中で疑問として残っており、機会があれば識者に確認したいと考えているところです。読者の方々でこのあたりに詳しい方は教えていただければ有難いです。

こういった自説に感じる疑問の開示、併記は、発信者として当然の義務だと思います。

どこかの中央銀行の女性OBのように、在京民放のニュース解説動画に出演して、意見の対立がある問題なのに、自分に都合のよい側面のみを我田引水的に話して「間違いない!!」を連発するような稚拙な偏向解説と同じようなことはしたくない。。との思いもあって、蛇足ながら文末に付言しておきます。



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