言葉が詰まる。 どうしようもない居心地の悪さ。 この感覚はどこから湧くものだろうか。後ろめたさか、はたまた嫉妬からか。劣等感かもしれないし、全部かもしれない。 ただ気分が悪くて仕方がない。 居心地が悪いのだ。 この場所にはもういられない。落ち着かない。楽しめない。そのような感情だけが心にあった。 くすんでしまったのだろう。 前までいたコミュニティが、何故こうも気色悪いのか。きっとその文化の不可解さが、一度離れたことによって心が冷めたのだ。気付いてしまったのだろう。無理して
どうしようもなく、いとおしく、きらきらしていたの。 楽しかったからいいの。聖人としての気高さも何も貴方にはないけれど、それでも良かったと思えるものがあったから。 美味しいを一緒に考えてくれた貴方。当然を変えた貴方。あたしが世間知らずのちっぽけな少女だと教えてくれた貴方。 …踊りしか知らないあたしが。ヨカナーンにしか狂わないあたしが、料理だなんてして。服まで変えて、貴方に会うのだから…。貴方に変にされてしまったのね、あたし。化け物の皮を剥がされたのに、結局化け物にされず
一目みて気に入ったのさ。 あれはいつだったか。アタイがもっと小さい時だろうな。ニンゲンみたいにマメに生きちゃいないからふわふわした記憶だ。 いつも明るい大きなタワーを中心に栄えた街。タワー周りは何かと強いポケモンとニンゲンが多くてよく遊んでいた。 そんな賑やかさが途切れない街でお前を見つけたんだ。 お前の事だから『なんで俺を選んだんだ』とか考えてるだろ。そんなもの単純だ。気に入った。本当に、それだけなのさ。 これだって立派な好意だろ? ***********
ただそれだけの話。 記憶をたどる。幼さに腹が立つだとか、無知さに嘆こうと仕方がないというもの。経験を積まなければ学べない、なんて。不便な話だがそれもまた仕方がない。怒りも悲しみも湧かないのは、それらが理由なのか、風化したのか、幼い記憶の頃にはなかった感情を今更分かろうとしても遅いからなのか。 家族と離れた場所に住むアパートに、びゅーと風が窓から通ってくる。顔を上げれば馴染み深い風景が目に入り、懐かしい気持ちになってしまう。 あれはいつだっただろうか。六歳か?暑さが滲
「人なんて複雑な作りを真似ようとするからだ」 その言葉を聞いた時、酷く胸に刺さった事を覚えている。 僕は駄目ですか。複雑じゃなければ駄目ですか。人っていうのは、寂しさに溺れては駄目ですか。 ここまでなんとかやって来ました。じきに子供でいられなくなると分かっていました。だから、どうにか立ち方を学ぼうと必死でいます。圧の変わる水流の中で、どう立てば転ばないかずっと怖がりながら慎重に大胆に挑んできました。 沢山沢山、複雑な考えが膨らんで、色々な気持ちが湧いてきても、押しのけて頑張
何かと拾われてばかりいる。 「疲れたなあ」 その言葉はいつも誰かに伝えるものではなく、口からこぼれ落ちたものだった。 こぼれたものに俺は「そうか疲れたか」とそう返すばかりで、支えになる言葉は何一つと渡せやしなかった。想察する技量もなければ、愛おしむ心の渡し方が分からない。踏み込まず、相手が話す日を待つことにしていた。 「……今日パスタにするつもりだけど」 「へえ。いいじゃん。ポケモンにも?」 「マカロニのが食べやすいと思ってそっち買ってきた」 「アタシもそっちがい