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【読書感想文】 コンビニはどうなる

<イントロダクション>

コンビニという小売業が我が国に登場して約40年。今や日常や災害時で私たちの生活になくてならない「インフラ」と捉える向きがある。しかし、本部による「フランチャイズ(FC)加盟店いじめ」も悪名高い。本書は加盟店側代理人として数多くの「コンビニ紛争」を手掛けてきた弁護士の中村 昌典氏がどのような問題があるかを解説する。

コンビニ紛争の根本的問題とは

なぜこうなっているのか。筆者によれば次の2点が主な要因となる。

①加盟店に圧倒的に不利で不公平で不平等な定型契約書が実務上で多用されていること②日本には安心してフランチャイズ加盟し得るための実効的な法規制がないこと

①は例えば商圏への配慮の無さだ。道路1つ隔てて同じコンビニがある光景はよく目にする。これはコンビニ本部が特定の地域を重視する「ドミナント戦略」をよく取ることが理由だ。本部からすれば他のコンビニの出店を抑制し、物流や広告を効率化できるのだが、すでに出店していたコンビニからすれば差別化にも限界があり、売り上げの大幅減少となる。

他にも途中解約を許さない非常に高額な違約金、見切り販売への圧力(捨てさせた方が儲かる会計方式)など、数々の本部に有利な条項が盛り込まれている。筆者は「はじめてコンビニのフランチャイズ契約書を目にした時の衝撃は忘れられない。これほど一方(本部)に有利な契約書があるのかと心底驚いた」と述べている。

しかし、日本はFCを包括的・実効的に規制する法律は無い。そのため、「中小小売商業振興法」をベースに詐欺的行為などを規制している。しかしこの法律は小売業対象で、サービス業は利用できない。このことからもFCに関しては法整備が遅れていることが伺える。

さらに、同法は「情報の事前開示」についての保護が不十分であり、FCの紛争でよくある「実際には達成し得ない損益モデルや過大な売上高の提示」への言及がないため不十分だと、筆者は指摘する。

コンビニは「マシ」?


コンビニFCの仕組みがいかに悪辣か、と指摘した。しかし実は、著者は「FCの中ではコンビニは突出してマシなレベルにある」と話す。問題は山積しているが、ノウハウが確立化されており、ブランド力も商品開発力もあるからだ。

実際はFCという括りではコンビニより劣悪な会社・本部が腐るほどあり、例えば過去に詐欺で敗訴した放置自転車回収のチェーンはのうのうと搾取しながら商売を続けている。

これに関しては米国、韓国、オーストラリアでFCに関しての規制がある。筆者はこれらを参考に日本でもFCの規制が必要だと訴えている。

特に、必要な情報の提示は最重要であり、我が国の法理でも過去の判例から「FC本部が加盟店希望者に対して、契約を締結するか否かの判断に必要な情報を提供すべき義務がある」ことは認められている。このための客観的正確な情報を公開する範囲を明文化し、義務化すべきだと筆者は訴える。

今後のコンビニ問題について

2019年から大阪府東大阪市のセブンイレブンオーナーが契約の解除を不服として訴えた問題から、社会的な認知の広がりを見せたコンビニの加盟店いじめ問題。その後、公正取引委員会による実態調査であったり、経済産業省によるコンビの在り方検討であったり、いくつかの進展を見せた。

しかし、時短営業は全体の数%に限られている。そして世間の注目は長時間労働問題に集約され、抜本的な対策がなされないまま下火になってしまった。正直、本部と加盟店が対等な関係を構築できるかというと難しいと感じる。

将来脱サラしても、コンビニというかFCはやめておこう。せめて、本書を事前に読むべきだと感じた。


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