【読書感想文】 10代に語る平成史
<イントロダクション>
共同通信の記者として政治畑を取材し続け、白鷗大学特任教授を務める後藤 謙次氏の書いた現代史の入門書。事実と、筆者が取材で聴いた政治家の本音を交えながら、平成の歴史を振り返える。本稿では「消費税」と「日中関係」について解説する。
平成政治の主役は消費税
平成生まれの私にとっては、消費税は物心ついた時からあったものなのだが、導入されたのは平成元年(1989年)であり古いものではない。今や地方政治も国政も消費税なしには成り立たないが、導入や税率アップをめぐってはいくつもの内閣が崩れた。これが平成政治の主役は消費税といわれる理由だ。
消費税導入の背景には1973年の第一次オイルショック時の不況を背景とした、1975年の赤字国債発行がある。この時の大蔵省大臣の大平正芳氏は大蔵省の官僚でもあり、強い責任感を感じていた。
1978年に内閣総理大臣に就任した大平氏は一般消費税を提唱。しかし1979年の選挙で大敗。大平氏の病死もあり、消費税の議論は遅れ、竹下登が10年越しに導入した。竹下氏はこんな言葉を漏らしていたという。
結局、竹下氏はリクルート事件の責任、消費税の導入と引き換えに首相を退陣。その後の参院選で自民党は大敗した。
消費税に触れた内閣は支持率を失い、みな避けるようになった。なかでも小泉純一郎内閣は「自分の内閣では消費税は上げない」と明言した。
民主党政権下で元財務官僚の菅直人首相が再び議論を介したが、小沢派閥に強烈な反対を受ける。民主党は次の政権で大敗。消費税の問題は政権の結束を分かち、選挙を敗北に追い込む劇物だ。そう考えると2回上げて退陣した安倍首相ってすごかったな。
参考:消費税「導入」と「増税」の歴史
https://www.nippon.com/ja/features/h00013/
中国の台頭と日中関係
筆者によれば、中国の影響力が明らかになったのは2008年のリーマンショックによる不況。「G8」では対処しきれず、急激に成長した中国を筆頭に韓国、インドの協力が不可欠だった。そこで当時のアメリカが中国を含む「G20」を提唱。いまや世界経済はG20が決めている。特に常任理事国である中国は強大な権限を持つ。
しかし、平成が始まった1989年、中国は混乱のさなかだった。それを象徴したのが「天安門事件」。北京の天安門広場の民主化デモを人民解放軍が制圧し、多くの犠牲者が出た。
戦車の前に立ちはだかる学生の姿が中継され、中国に欧米から批判が殺到した。その直後、筆者が取材した、フランス開催の先進国首脳会議(アルシュ・サミット)では、中国に関する議題でもちきりだったという。日中はそれまで友好ブームと言われていたが、結局は日本はサミットで西側諸国に倣い綻びが生じた。
その後はいくつもの要因で、日中の溝は深まっている。
・日中戦争についての歴史認識の相違(日本は侵略を認め、首相が謝罪を表明したりしたのだが、外交文書では謝罪を明文化していない)
・日本側の日本遺族会からの票田を期待した靖国神社参拝
・尖閣諸島の領土問題
・江沢民政権で開始した中国国内でのガス抜きを背景とした愛国・反日教育
日本国内の中国への反発も強まっていると言えるだろう。
しかし、日本と中国は隣国同士であり、引っ越すわけにはいかない。国を構成する民は我々と変わらない個人であることを忘れずに、よりよい友好関係の形をめざしていきたい、と本書には書かれている。
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