清水コウイチ

生活の中で抱える悲しみ、苦しみといった感情を文字という形式によって昇華出来たらと考えて…

清水コウイチ

生活の中で抱える悲しみ、苦しみといった感情を文字という形式によって昇華出来たらと考えています。 小説やエッセイを不定期で更新してます。

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十字架

幼い頃から人の頼みや誘いを断れない性格だった。自分のことで頭がいっぱいになり余裕が全くない時であっても断らなかった。というよりそんな状態になっても断れなかった。自分の心に逆らってこんなことを続けてきた理由はただ相手に嫌われたくないから。嫌われるのが怖くて怖くてたまらないから。私が快く誘いに乗ったと上手く装うことが出来れば、相手に対して失礼な態度をとったことにはならないはずだ。そして相手の瞳に映る私は自分の誘いに乗ってくれたと、決して悪い気持ちはしないだろう。ただこれは私が脳内

    • 「学校と妹」の続きはもう少々お待ちください。

      • 「ブラックチョコレート」 上

        今年もこの季節がやってきてしまった。そう、バレンタインの季節が。決して私はバレンタインというイベント自体にケチをつけたい訳ではない。普段気持ちを伝えることが苦手な人でも、比較的気持ちが伝えやすいように、イベント自体が事前にお膳立てしてくれているように感じる。この構造はとても素敵な物ではないかと私自身、強く思う。しかし今述べたのは、あくまで想いを伝えるためにチョコレートを渡す人々の思想であることを忘れてはならない。私が問題視しているのは、常にバレンタインというイベントにおいて、

        • 「学校と妹」 4

          夏の暑さは全然消えていかないというのに、夏休みの宿題として課された "一行日記" の用紙の空白だけが少しずつ消えていく。その用紙には「塾に行って勉強した。」という文言しか書かれていなかった。これではまるで夏休み最終日に慌てて終わらせたように見えるではないか、ふとそんな感情が込み上げた。しかしそこに記された文言は紛れもない事実であった。よく飽きもせず同じ文言を書き続けたものだと、もはや感心している自分がいた。ただ"一行日記"のために時間を割くことができない程にまで僕は疲れ切って

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          私の学び

          先生は言った。「勉強とは受動的な行為であるのに対して、学びは能動的な行為である。」 突如として言い放たれた先生の言葉でただでさえ静まり返っていた教室から、ありとあらゆる音が消えてなくなったような気がした。それほどまでに先生の言葉は私の心の奥にある何かを突き動かすだけの力があった。私の脳内の辞書には「勉強」、「学び」共に記されていたが、「学び」の方は意味の部分がはっきりと記されていなかった。当時、中学に上がりたてであった私にとっては似通った意味を持った二つの単語に過ぎなかった。

          「学校と妹」 3

          なかなか国語の点数が合格ラインに到達しないことに焦った母は、僕を個別指導の塾に入塾させた。僕の受験科目は国語と算数の二科目だったため、どちらも塾で面倒を見てもらうことにした。しかし、週一で行う90分授業で二科目の受験対策をやってもらうということは単純計算で一科目に45分しか使えないということになる。つまり塾に入ったは良いが結局は一週間のうちの多くの時間を自学自習で対策していかなければならないという点においてはこれまでと全く変わってなかったのだ。僕としては居場所のない家にいるよ

          「学校と妹」 3

          薬とクスリ

          今日は通院日だったため、いつもように家を出る支度をした。月に1回の通院日。30日間の様々な感情の集合体が僕の心にベッタリとこびり付く。 僕の重たい感情とは裏腹に電車は当たり前に予定時刻で到着する。足が重い、とりあえず病院まで向かう。すぐに診察室へ呼ばれ医師からの診断を受ける。 「気分はどう?出した薬でしっかりと眠れてる?」いつものように医師は同じ言葉で僕に問いかける。しかし僕は数ヶ月前から医師を信用することをやめている。なぜなら診察をすぐに終わらせようとして、効いてる気のしな

          「学校と妹」 2

          自分の心を押し殺して、目の前の志望校の過去問に取り掛かる。これほどまでにやる気の出ない勉強はない。「勉強するやる気が出ない」なんて言葉をよく耳にするがあれはただの言い訳に過ぎないのではないかと思う。なぜならこうして今僕は身をもって本当にやる気の出ない瞬間を体験してしまっているからである。やる気とは自分の心というタンクから注がれるガソリンのような物なのではないか、そんなしょうもないことを考えながらもう一度目の前の問題に取り掛かろうと努力してみる。この時僕の頭の中は新たな考えで張

          「学校と妹」 2

          「学校と妹」 1

          絶望はある日突然訪れた。「突然」という言葉を使いながらもどこかで勘づいていたような自分がいたような気がして腹立たしい。絶望なんて大層な言葉を使ってしまったから驚かせてしまったかもしれないが、起きた出来事だけで考えたら別にたいした事ではない。僕の妹が不登校になったのだ。つまりそれは妹のもとに中学一年の三学期がやってこないことを同時に意味していた。 僕と妹は、同じ私立の中高一貫校に進学した。妹は僕がいるからという理由で同じ学校に進学した。地元の中学ではなく私立の中高一貫校に進学

          「学校と妹」 1