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昭和ライダーエレジー7

ヤマハGT50か?ホンダXE50か?
悩んでる時点で俺には原付バイクで
日本一周を目指すのは無理かも
知れないと思えた日


※このお話は俺が高校生だった頃、1977年
(昭和52年)の物語ですが、フィクションの為
登場する人物、団体等は実在するものと
一切関係ありません。

第七話

ともかく、「あっち向いて以下略」は成功。
第1ラウンドは俺たちの勝利に終わったが、
このままで終わる三木巡査ではないだろうと
思うので、俺たちは次の手を用意していたん
だけど、意外にもカギポン攻撃が二〜三度
通用した為、出番がなかった。
一時は鋭いかも……と思ったけれど、
やっぱりお間抜け巡査だった事が判明した。

「これなら次も行けるやろ?」とヒデミ。
「〈プラグでポン〉てどんなん?」とトモ。
「正式名称は〈プラグDEポン作戦 " 77〉と
言うのだよ、諸君!」俺は答えた。
なんやピンク・レディーのパクリやないの!
「ちょっと集まってくれ。作戦はこうだ!」
俺は皆んなに作戦の中身を話した。

例によって広場でたむろっていた俺たちに
(この頃はコンビニやファミレスなんて
なかったからね)またしても三木巡査が
黒タンを飛ばしてやって来た!
「来た来た!さぁ作戦決行や!
トモ、打ち合わせ通りに!ヒーちゃん、音に
気を付けてな!ほな、行くで!」

「お前ら、またガン首揃えて悪巧みの算段を
しよるんか?今日こそは公務執行妨害で必ず
パクったるさかい覚悟しときや!」
お〜、かなり息巻いてるなァ。
「何やねん、その言い方!ヤーさんかっ!」
「ホンマや、ホンマや!」
「◯◯署の三木巡査はヤーさん巡査やいうて
抗議文を本署に出したるワ!」
打ち合わせ通りにトモが煽る。
「何やとォ〜!」
真っ赤な顔で三木巡査が詰め寄って来た。
(クッ、また引っ掛かりよった!)
俺がサインを出す。
ヒーちゃんはうなずいて、そっとバイクから
プラグキャップを外した。

ヒーちゃんからOKサインが出たので、
皆一斉にバイクに跨り、一目散にダッシュ!
三木巡査は落ち着いていた。
今日はキーを抜いてある余裕からか、唇の
端に笑みを浮かべ、黒タンに跨り、キーを
回してセルボタンを押した。
" キュルキュル、キュルキュル " 
セルモーターが回るばかりで一向にエンジンが掛かる気配がない。
「あれっ?何でや?何でやね〜ん!」
三木巡査の声が悲しいこだまとなっていく。

ところ変わってトモの部屋。
「あかん、またや!腹痛い!」
「俺も腹痛い!クックックッ」
「何でやね〜ん!何でやね〜ん!やて。
町中にこだまする位やから、皆、何事かと
思てんで!ハッハッ思い出したら……」
「遠くで、掛からん!掛からんわ!って
聞こえてたなぁ。あ〜おもろ!」
「なぁスギケン。自分ごっつい事考えつく
けど、あの三木巡査と何かあったんか?」
比較的アニキ肌のトモが聞いてくる。
「あぁ、実はな………」

免許取りたての頃。
一人で走っていた時に、お婆さんが踏切の
中で財布を落としたんだ。
それで、俺が拾い上げようとバイクのまま
中に入ったら警報器が鳴ったんだけど、
たまたま側にいた三木巡査に、警報器が
鳴った後の侵入、というので切符を切られ
そうになった事があったんだ。
お婆さんも財布は拾ってもらってるし、
何より警報の鳴っている踏切から助け出してもらえてるから彼は悪くはない!とかばってくれたんだけど駄目だった。
そこからの恨みやね!
向こうもその件から俺の事を知ったよう。
前にも書いたけど、当時はノーヘルだった
から乗ってるヤツの顔はバレバレやし、
乗ってるバイクで分かってしまうし。
パッソルは杉田や!って。
でも面白い時代だったな。

「ふ〜ん、そんな事があったんや。
知らんかったわ。なんでそん時話してくれ
へんかったん?まぁ色々事情があったんやろ
けど……。そんでもう復讐っていうか気持ちは
晴らせたんか?どうなん?」
俺が今の家に引っ越ししてきてから一番最初に友達になったカズキンの問いかけ。
「まぁ、あんまりやると問題になって、
お前らにも迷惑掛かるし、さすがに可哀想に
なってきた気持ちもあるし……」
「そんなら、もうやめにするんやな?」
マサやんが聞く。
「あとひとつ作戦があんねん!」
「あんのかい!」
5人の美しいハーモニー、久しぶり。

「最後のオペレーションはこうだ!名付けて
〈コッキングオフ作戦THE  FINAL〉!」
「何や、その " FINAL " って?」
おバカ代表の◯◯からの質問。
「まぁ、最後にするっていうのもあるけど、
何かカッコええやろ?」
「何でもええけど。で、中身は?」
「作戦の中身はこうだ!ゴニョゴニョ……」
「そらまたオモロイな!また三木巡査の
こだまが町中に響き渡るかもな!」

それから二日後。
俺とヒデミとカズキンの三人の時に
三木巡査とかち合ってしまった。
「おのれらァ〜、今日こそは覚悟せぇ!」
とか言って三木巡査は息巻いている。
三人だと一人動いても目立つから、
" ちょっとまずいな " と思っていると、
カズキンがわざと音を立てて、
プラグキャップを外した。
「ハッハッハッ!やはりまだ子供やな。
同じ手は喰わんぞ!ほら、ほら、どうした?
逃げないのか?どうなんや、えっ?」

「スギケン、ヒデミ、行くで!」
                 つづく


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