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【1分で読了。即興小説】塾講師

【お題】


塾講師


【本文】



「ついにこの日がやってきました!」

「私達は今日のために頑張ってきました」

「必ず夢は叶います!」
「私達は必ず勝ちます!」

「辛いときも苦しいときも耐えてきました」

「全力で戦い抜きましょう!」
「そして、勝利を掴みましょう!」



激励。
塾の講師たちは私達に最後のエールを送った。
生徒たちの中には涙する者もいた。

誰もがこの激励に勇気をもらい、闘志を奮い立たせていただろう。

ただ一人、私を除いては。



私はこのエールの中、一人耳を塞ぎたい気持ちでいっぱいだった。
私はこれまで、全然勉強を頑張ってこなかった。全力で努力してこなかった。勉強をしてるふりをして、頑張る友達を横目にただ遊んでいた。
痛い目を見るのは私だ。責任は私が負う。
不合格になっても構わない。
でも、講師陣のエールを受けて、私はなぜが胸が苦しくなった。なぜだか、自分自身が恥ずかしくなって逃げ出したくなった。

頑張らなかった自分に、頑張ったねと労う講師たち。必ず合格できると最後まで全力で応援してくれている。
私はこの人たちを裏切ってきたのか。この人たちに対して自分自身を今も偽っているのか。


不合格になって、後悔するのは自分自身。
だけど、なぜだかわからないがそれだけではない気がする。

他人を裏切ってしまったこと。
私はいま心が痛い。

結果を出せばいいのだけど、今更どうにもできない。

こんな気持ちになるのなら、
頑張っておけばよかったのかな。


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