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【1分で読了!即興小説】傷だらけの人間

【お題】


傷だらけの人間


【本文】



ネット配信が普及し、このレンタルDVDショップも大分廃れてきた。

客も少なく、品揃えも怪しくなってきた。

そろそろここも長くはないな。
そう思いながら、私はいつものコーナーへ直行した。

客が少ないお陰で、何の警戒心もなしに、スムーズに侵入できる。エロビデオコーナーに。



私は頭の古い人間だ。
ネット配信など、情緒もなく、何のありがたみもないと思っている。

手軽に見たいものが見れるなど、狩人の血をひく私にとってはありえないこと。

わざわざDVDレンタルショップに足を運び、
苦労して、コーナーに侵入、自分の手で触れて、見て迷って、

そうして選び抜いた逸品を味わう喜び。


レジでは、もしかしたら(社会的、世間的に)命を落とすかもしれない。

死を感じてこそ、生の喜びを知る。
これこそが、まさに生きているという証。



私は今まさに、生を感じながら性の選択をしている。
最も集中しなければならない場面だ。


数分してやっと数作品を選び抜いて、
さあ、いよいよここからが命のやり取りだ。



私はコーナーを出て、いつものルートでレジに近づく、
そして、いつもの店員がレジに立ったその時、

さりげなく店員に作品を渡す。



そこへ店の電話が鳴る。



「お電話です」


その店員が呼ばれて、代わりに来たのは女子大生のバイト。




私は一瞬にして、その危機を察知し、
敗北を認め、身を低くしてその場を去った。




負けた。
死んだ。





負けた私は帰宅し、
ネット配信で、女子大生ものを検索した。



素晴らしい。
ありがとうございます。


今日からわいも、ネット配信生活や!

よろしくやで!

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