【男鹿の魅力を語り尽くす】①実は風光明媚ないいところ
数日間よい天気が続いたので、男鹿半島まで出かけることにしました。男鹿と言えばナマハゲ、ナマハゲと言えば男鹿ですが、もちろん男鹿には人間も住んでいます。国内唯一のナマハゲ生息地であることは確かですが、男鹿は決してナマハゲに占領されているわけではありません。
ここの住む人間たちは、毎年冬に年端もいかぬ幼児をナマハゲに差し出すことで、その見返りとして一年の安住を許されます。差し出された幼児も決してナマハゲに殺されるようなことはなく、ひとしきり説教されたあとは人里に戻されることがほとんどです。ですが悲しいことに、幼児たちのおよそ百人にひとりがナマハゲの血を受け継ぐ宿命を負わされます。それはもう遺伝子レベルの話なので、個人がその宿命に抗おうにも、その方法はありません。
彼らが二十歳を迎えたとき、周りの人々はようやくその事実に気付くこととなります。急に顔が鬼のように変化したかと思えば、なにやら台所に行って包丁を物色し始め、それまで着ていた胸に「OGA」と書かれたTシャツを「こんなのダサい」と脱ぎ捨て、簔藁(みのわら)を纏うのです。
当然、周囲の人たちは驚きます。しかしよく思い返してみると、彼には確かに幼いころからその兆しがあったことに気付くのです。
——そういえばこいつ、小さいときからの口癖が「泣く子いねぇが」だったっけ。
——いきなり雄叫びを上げることもあったっけな。
しかし今さらそのことに気付いたところで、どうしようもないのです。なんと言っても、遺伝子レベルですから。人々はナマハゲとしてその後の人生を送ると決めた彼を遠くから見守ることしかできません。以後は観光のために男鹿名物としてその一生を全うすることを願うばかりでした。
怖いですね。
というわけで、男鹿に住む人の百人ひとりはナマハゲです。普段は気付かれないように人の姿をしていますので騙されないように注意しましょう。
ナマハゲについては、しばらく忘れましょう。
もともとナマハゲは冬の行事ですので、有名だとは言ってもそれほど人を集めることは難しいのではないか、と思います。むしろ男鹿の魅力は、夏にあると言いたいです。
大きく入り組んだ地形、リアス式とも言えそうな断崖の海岸、そして山からはすべてが見渡せる……海の景観が素晴らしいところなのです。ナマハゲがすべてというわけではありません。私としては、むしろこちらの方をお勧めしたいです。
というわけで「市街地」から「南磯地区」、「西海岸」、「入道崎」…と回るコースを順番にご紹介していきたいと思います。
なお、こちらはあくまでブログ記事なので、スタンダードな観光案内が見たい方はそれなりのサイトをご訪問いただく方がよいかと思います。以降の内容には私個人の男鹿に対する思い、ときには偏見が込められていますのでご注意願います。食い物についても、私はラーメンなどは幸楽苑で満足してしまう性格なので、あまり言及してはおりません。パンフレットに類するものではない、とあらかじめ申しておきます。
それでは参りましょう。
【市街地から鵜ノ崎海岸へ】
秋田市から男鹿市へ向かうためには国道101号線を使います。上の画像はその道沿いにある「なまはげ立像」です。ナマハゲはいったん忘れましょうとご案内したばかりですが、これを目印に男鹿市に入ったと考えてくださればいいかと思います。本当に市境にあります。
なお男鹿市への移動手段としてはJR男鹿線という鉄道もありますが、途中林の中を行くばかりで、日本海沿岸を走る醍醐味はさほど感じられません。鉄道が好きで、それに乗ることを主目的とされている方は別ですが、それ以外の方は秋田駅からレンタカーを借りて移動することをお勧めします。そうでないと、上の画像のようなものを目にすることができません。
秋田は北国なので、皆さん冷涼なイメージを持っていることと思います。でもフェーン現象などの影響で意外に夏は暑いのです。秋田市なども例外ではありませんが、内陸の横手市などは特に暑くなります。35℃を超える日もままあります。
でも半島として突き出た位置にある男鹿市は例外です。夏も30℃を越す日はそうそうありません(皆無とは言えませんが)ので、比較的快適な旅ができるのです。
進行方向左手が海岸線です。市街地については田舎町なので特に何も言うことはないのですが、最近「無印良品」が地方進出に力を入れていて、ここにかなりの大型店舗が出現しました。それくらいです。この辺は「船越」地区と呼ばれます。ちなみに秋田市からここに至るまでの道にひとつの市を挟むのですが、暗くて退屈な道のりです。男鹿市に入ると、やや安心します。
道をそのまま行くと「脇本」地区へと入ります。まだ市街地と呼べる地区ですが、このあたりからトンネルをくぐったり、道路脇の建物が少なくなって視界が開けますので、海沿いの街に来たことを実感できることでしょう。ここには「脇本城跡」もありますが、どちらかというと城跡そのものより、付近にあるアジサイ畑が見どころです。
ここは車を走らせていると突然現れるので注意が必要です。アジサイの手前は駐車場になっていますので、行き過ぎてしまった場合は路駐などせず、落ち着いて車を回しましょう。
ちなみにアジサイ畑の反対側は以下のような風景となっています。
こんな感じです。ただ、まだまだ市街地ですし、国定公園エリアにはまだ入っていません。アジサイについても後ほどの回で本格的な見どころを紹介するつもりですので、こちらはまだまだ序盤といったところです。
もう少し進むと「船川」と呼ばれる地域に入ります。こちらにはJR男鹿駅があり、市役所などもあります。いわゆる「旧市街」です。
道の駅を過ぎたあたりから、道路沿いからも海岸線がよく見えるようになります。視界を遮る建物は少なくなり、男鹿の素晴らしさがよくわかる……その第一弾が「鵜ノ崎海岸」です。
この鵜ノ崎海岸は「日本の渚100選」に選ばれています。奇岩が広がる海岸なのですが、目に優しい一方で、足を踏み入れると石だらけで痛いので、海水浴には向きません。具体的にはこんな感じです。
海岸一帯は公園として整備されていて、夏には多くの人が集まります。でも上記の通り泳ぐことは難しいので、たいていの人はバーベキューなどをして楽しみます。楽しいでしょうが、僕はやりません。準備と後片付けが面倒なので……。煙いし。15年くらい前にコンロも買ったんですけど、2回くらいしか使っていません。ガンガン売る立場ではあったんですけど……。
この先は公園整備されていないのですが、道沿いにずっとこのような海岸が続いていて、眺めながら運転することができます。正直公園になっている場所より美しいと思われる景色があるのですが、車を停めることができないので写真に収めることができませんでした。実際に訪れようとしている皆さまは、そのときまでのお楽しみとしてください。
【鵜ノ崎海岸から潮瀬崎へ】
このように男鹿半島周辺には奇岩が多い風景がよく見られます。鵜ノ崎海岸は非常にやさしい印象ですが、先に進むと岩はシャープになり、大きさも倍増、数も増えます。道は「おが潮風街道」あるいは「海岸絶景ライン」と銘打たれ、実際その名に恥じません。私も秋田に住むようになるまでは日本海側を馬鹿にしていたところは確かにあったのですが(すみません)、この辺は文句なくよいところです。
ここに至る途中の道沿いに、椿の自生地があったりするのですが、開花時期ではないので今回はスルーです。自生地の北限だそうで、大正11年に国指定天然記念物となりました。
さらに道を行くと、塩瀬崎と呼ばれるところに至ります。こちらは車を停める場所がいくつかありますので、落ち着いて見て回りたいと思います。
道路から階段を降りて海岸へと歩きます。視界には巨大な岩礁が広がります。
すこしここは足場が悪く、クロックス的なサンダルを履いて来てしまった私は後悔しました。
私はどちらかというと海育ちなので、こうした風景には懐かしさを覚えます。でもいい思い出は風景だけであって、実際にはろくな思い出がないんですけどね。
さて、この先に名物が存在します。電柱にはそれを示す看板が貼り付けられていたのですが、結構探すのには苦労しました。以下にそれをご紹介しましょう。
「ゴジラ岩」です。よく観光案内用のパンフレットには、夕暮れどきの写真が載せられています。ちょうど口の中に夕日が収まるとゴジラが火を噴いたような形で映るので、面白い場所として紹介されることが多いようです。
まあでも、それを美しく写す技術はとても自分にはないし、時間も実際の話、合わせられません。でも昼間の写真もよくないですか? 目にするのは夕焼けの写真ばかりでしたので、僕はこのゴジラに目があることを知りませんでした。岩自体は真っ黒に映っているものしか見たことがなかったので。
でもこれ、どちらかというと亀ですね。
以下、この塩瀬崎の岩礁風景をもう少しお届けします。
いかがでしょう。ここにはナマハゲもいないので不意に背後から包丁で襲われることもありません。安心して観光を楽しめます。秋田県は西側一帯が海に面していますが、その中で景勝地と言える場所は、男鹿くらいです。その他は貧弱な工業地帯、大規模とは言えない海水浴場、本荘のあたりはいいですけどね。そんな感じです。
以降5,6回に分けて男鹿の情報をお送りします。情報というより自分が好きなところをご紹介するだけですが、極力独り言にならないよう、読んでくださる皆さまとともに道を歩むような、そんな記事にしたいと思います。
次回以降もお楽しみください。
今回訪れたところの詳細
①タイトル画像:「寒風山山頂」から見える風景
②「八望台」展望所からの風景
③船越地区「男鹿総合観光案内所」
④脇本地区「脇本城跡」
⑤県道59号線「おが潮風街道」
⑥日本の渚100選「鵜ノ崎海岸」
⑦男鹿半島・大潟ジオパーク「塩瀬崎灯台」
⑧塩瀬崎内「ゴジラ岩」
なお、冒頭ナマハゲに関する逸話はデタラメです。わかってくださるかとは思いますが、あくまで読み物としてご理解ください。
紀行もののマガジンをご紹介します。ご興味のあるお方はぜひ訪れてみてください。
では、ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
次回をお楽しみに!
続きはこちらです。
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