トラウマとは何か? 愛とトラウマの関係

トラウマとは…

  • 大きな衝撃を体験した時、その恐ろしい体験に対処しようとして、心と身体が総動員で反応が起こる、その反応のこと。

  • 異常な出来事に対する、心身の正常な反応(心身を守るために、5つのトラウマ反応が起こる。後述)

  • トラウマが去った後でも、何度も視覚的なイメージが再生され、今まさに起きていると知覚される。生き延びたという安らぎの体感が持てない。

  • トラウマは、時間が解決しない。たとえ、うまく生き延びたとしても、そのストレスに対する身体症状が解消されずに心身にとどまっている限り、その人を苦しめる。

  • トラウマの痕跡は、過去に起こった悪い出来事について、言葉で記憶されるより、身体感覚として記憶される。神経科学の研究により、言語記憶領域がシャットダウンすることが分かっている。

  • 通常の記憶とトラウマの記憶は大きく異なる。通常の記憶は、時間とともに変化し消えていくが、トラウマの記憶は、恐れや恥、激怒、崩れ落ちる感覚といった強烈な否定的感情を伴い、繰り返し起きてくる感覚や動きである。

  • トラウマを負った人の多くは、過剰に警戒しており、人生がもたらす普通の喜びを楽しめない。逆に、あまりに感覚が麻痺していて、新しい経験を吸収できない人や、本物の危険の兆候を警戒できない人もいる。

  • 同じ出来事を経験しても、トラウマになる人と、ならない人がいる。トラウマになるかどうかは、年齢(子供や老人はトラウマを受けやすい)、出来事の過酷さ、身体的な被害の程度、逃げることができるかどうか、どの程度困難に対応することに慣れているか、過去のトラウマの影響などの条件による。

  • トラウマになる可能性は、本能的なものであり、意識的なコントロールができるわけではない。トラウマになるかどうかは、私たちが意識的に決めるわけではなく、自動的な反応である。(トラウマを感じたとしても、それを自分の欠点だと判断しない)

  • トラウマ症状は、未解決で未放出の凍りついた残余エネルギーから生じる。この残余エネルギーは、神経系統の中に閉じ込められており、私たちの心身を破壊することがある。この残余エネルギーは、ただ消えていくものではなく、身体に残り、しばしば不安、うつ、心身症、問題行動など広範囲にわたる症状を作り出す。これらの諸症状は、行き場のない未放出のエネルギーを何とか閉じ込めるための有機体の対処法である。PTSDの症状は、この「硬直」「凍りつき」状態に入り、それをくぐり抜けて出ていくというプロセスを完了できないときに発現する。

  • 多くの慢性的な疼痛や病的症状は、未解決のトラウマ体験に関連がある。

  • 腹側迷走神経複合体のシステムがうまく機能しないと、トラウマが起こり得る。動きの自由を奪われることが、ほとんどのトラウマの根底にある。それが起こると、背側迷走神経複合体が主導権を奪う場合が多い。鼓動が遅くなり、呼吸が浅くなり、自分自身や環境との接触が途絶える。解離し、気が遠くなり、虚脱状態に陥る。

  • トラウマとは、他人の欲望を強要された経験

  • トラウマ症状を作り出したその巨大なエネルギーは、適切に扱われ、硬直を解かれたときには、トラウマを変容させ、私たちを新たな癒しと勝利、さらには叡智の高みへと押し上げることができる。解放されたトラウマは素晴らしい贈り物であり、私たちを満ち干き、調和、愛、思いやりのある自然界へと連れ戻してくれます。

  • トラウマは、ネガティブな結果しかもたらさないわけではなく、「外傷後成長」といわれる、トラウマを受けた後にみられるポジティブな結果を報告した多くの論文がある。

  • トラウマの語源は、「傷」を意味するギリシア語

①単純性トラウマ/単回性トラウマ・ショックトラウマ

災害や事故・事件など、生死に関わりかねない出来事を体験したり、目撃したり、大切な人が経験したと知った後に生じた反応。

②複雑性トラウマ(complex PTSD)・発達トラウマ

家庭内暴力や虐待など、逃れることが困難な状況のなかで、日常的に繰り返されてきた出来事によって生じたトラウマ(より複雑な症状を示すことが多い)

慢性的に人間関係のトラウマにさらされると、特にそれが発達初期である場合、PTSD診断法に記述されているよりも深く広範囲の衝撃を受けることが多い。存在全体、すなわち心・体・魂に影響をこうむる。

発達トラウマとは、「子どもの頃に、とてもひどいことがあって、その時に誰も助けてくれる人がいなかった」

言葉や感情的な虐待だけで、複雑性PTSDが引き起こされる可能性がある。ほとんどの複雑性PTSDの核心は、深く感情的に見捨てられた体験である。

複雑性PTSD(C-PTSD)、境界性パーソナリティ障害(BPD)、解離性同一性障害(DID)、特定不能の解離性障害(DDNOS)などは、すべて、断片化することで生き延びたトラウマサバイバーによくつけられる診断名である。

複雑性PTSDには、軽度の神経症~精神病まで、高機能~機能不全まで、程度がある。重症度は、フラッシュバックの無い期間が長いものから、フラッシュバックの恐怖をもつ期間が長いものまで。生き生きとした経験が増えている状態から、障害をかろうじて乗り越えている状態まで様々ある。

トラウマを経験した時に起こる、5つの反応

  1. 戦う、闘争:fight

  2. 逃げる、逃走:flight

  3. 固まる、凍りつき:freeze

  4. 降参する、服従・死んだふり:submit (or feigned death)

  5. 助けを求めて泣く:cry for help

  • 脅威に対する反応には、まず闘争または逃走のための初動がある。それが不可能な場合は、凍りついたり、怯えて固まったり、無力に崩れ落ちたりすることが定型になる。これら全てが生来の身体反応であり、異常事態に適応するために、強力なエネルギーが付与されている。

  • これらのトラウマ反応は、感情ではなく、感情を守るための反応である。(感情ではない、という認識が大切)

  • トラウマ反応とは、身体的に非常に圧倒されるもの

  • 「無反応」は、すべての感情をブロックする。

  • 身体症状は、トラウマの出来事の内容(何を経験したか)ではなく、「どのようにトラウマから生き残ったか」を示している。

トラウマによる症状

トラウマを経験した人は、記憶ではなく、症状をもっている。
以下の症状(画面)は、トラウマ的な出来事により起きた可能性がある。
トラウマを負った人々は、これらの症状をもつことによって生き延びてきた。

https://www.youtube.com/watch?v=9onuQSvkrhk&t=169s

Depression / うつ病
Irritability / かんしゃく、イライラする
Decreased interest / 意欲の低下
Numbing / 無感覚
Decreased concentration / 集中力の低下
Insomnia / 不眠
Nervous system dysregulation / 神経系の調節不全
Foreshortened future, Hopelessness / 未来に希望がない、絶望
Shame, Self-loathing / 恥、自己嫌悪
Nightmares, Flashbacks / 悪夢、フラッシュバック
Hypervigilence, Mistrust / 過覚醒・興奮状態、不信感
Social anxiety, Panic attacks / 社会不安、パニック発作
Chronic pain / 慢性の痛み
Addictions, Eating disorders / 依存、摂食障害
Suicidality and self-harm / 自殺傾向および自傷行為
Borderline Personality Disorder / 境界線パーソナリティ障害

愛とトラウマの関係

Dr. Janina Fisher とDr. Frank Andersonの対談動画より

"Trauma blocks love":トラウマが愛をブロックする
"Love is what heals trauma":トラウマを癒すのは愛である

https://www.youtube.com/watch?v=tCRJ24V2LC8

「トラウマは、愛、つながり、創造性をブロックします。そして愛は、トラウマを超越し、私たちを癒し、私たちのセルフ、魂、私たちの源、そしてお互いに再びつながるためのパワーを持っているのです」(フランク・G・アンダーソン『トラウマを超越する/Transcending Trauma』)

参考文献・動画