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物語も味わう。サラダにアボカドを入れない理由

さえぎるものは何もない。広がる空と農場。朝から収穫作業に精を出し、夕食には、採れたての野菜をふんだんに使った料理を囲んで、大勢で一緒にいただく。

おいしい!!!

この生活はシンプルだけど、すべてがある。満たされているーー。

サラダで創業すると決めてすぐ、農家の方々を訪れて農業体験をさせてもらいました。そのときの「満ち足りた感覚」を、私は忘れることができません。

日の出とともに農作業をして、自分たちの手で育て収穫した作物を食べて、寝る。次の日もまた、太陽と土と一緒に活動する。利便性や娯楽性は低いはずなのに、ここに足りないものは何一つない。
 
いまも、契約農家さんの畑へお手伝いに行くたび、この心とからだが満腹になる感覚を味わいます。

「食の安心」とは、毎日きちんと食事ができること


日本は、生産者と消費者のつながりが、わかりづらい。生産者と消費者は、食において表裏一体です。なのに、1つの結びつきになっていない。世界旅行中に海外の食と比較したことで、強く感じました。背景には、流通の仕組みによる影響があります。

日本では、狭い国土や天災に対応していくために、生産と流通の効率化を大切にしてきました。農作物の規格は、統一されています。これにより、生産者は、栽培技術や生産効率を高めることに専念できます。生産者同士の助け合いもできます。

一方で、生産者の顔やそれぞれの農作物の個性は、規格に統一され、埋もれてしまいます。当然、消費者にとって、生産者は見えにくくなります。いま「食の安全・安心」とは、農薬や添加物が含まれない食品を求めることと語られがちです。もちろん、それも考えないといけないことです。

でも、食の安心の根本とは、毎日きちんと食事ができること。だからこそ、自分の食べているものはどのような人が、どうやって作ってくれていて、私たちの食卓に届くのか。食のうしろにいる人や背景を知る。

つくっている人の顔が見え、つながりを感じられることほど安心なことはないですからね。生産者と消費者がもっと結びつくことにこそ、豊かさがあると考えています。

つくる人を感じて増える「おいしさ」

私は、メーカーの研究職として働く会社員の家庭で育ちました。両親は家庭菜園程度のことはしていましたが、私は生産現場で農業に触れていたわけではありません。

ただ、私の育った岡山県倉敷市の家は、裏がだだっ広い田んぼでした。ご近所さんが来て野菜や果物をあいさつがわりに置いていったり、うちの庭で育った野菜をおすそわけしたりしていました。
 
毎年決まった季節になると、ブドウや桃を積んだトラックがきていました。家の窓からトラックが見えると「来たぞ!」とワクワクして、弟と買いに飛び出していたことを憶えています。

いまでも実家に帰ると、母親は「ご近所さんが、今朝採れたお野菜を玄関にかけてくれてたのよ。今日は、これで料理したからね」などと話してくれます。
 
つくり手の存在に実感があるとき、おいしさは、増えませんか?

農家の人たちと会話しながら買ったトマトって、おいしいですよね。スーパーなら1つ40円で買うじゃがいもも、生産者を前に話を聞くと100円出しても買いたくなったりする。

私も、契約農家さんから送られてくる野菜は特別な楽しみがあるし、大切に使おうと思います。それはきっと、手元に届いて口にし、自分のからだの一部になるまでの物語が、見えるから。ストーリーも一緒に味わうから。

食卓に並ぶ料理にしても、生産者、作物、つくる人、味つけ、器……それぞれ食べ物にまつわる物語があります。その土地で、その素材と味がどうして生まれたのか? どんな人たちの想いがあるのか?

私たちの「おいしい」を決めているのは、単に「味がいい」だけではないんです。物理的に生産者とつながることは、実際のところ都会生活では難しいでしょう。でも、核家族でも1人で食事をしていても、「つながれている感覚」さえあれば、人は支えてもらえる。

そこから、一食一食を大切にするとか、一つひとつのことに感謝できるようになる。食を超えたところでも、自分にも周囲に対しても、自然と慈しみが生まれてきます。

WithGreenの農業体験:収穫した野菜で手作りランチ!

アボカドは日本の気候では生産に向かない

契約農家さんとお客さんは、1つのコミュニティー。日本の生産者を大事にしたい。両者をつなぎ、食べることで心とからだを健康にする。その喜びに貢献するのが、WithGreenのサラダボウルです。

だから、私たちWithGreenのメニューに、アボカドはありません。

アボカドはメキシコの生産量がもっとも多く、ドミニカ、ペルーと熱帯地域でそのほとんどが作られています。日本の気候では、生産することが難しいのです。代わりにさつまいもやトマトなど、国産の栄養価の高い野菜を四季折々で使っています。

少しキズがある、曲がっているといった理由で流通の規格から外れてしまう野菜も、なるべく使うようにしています。

素材感やうま味を、余すところなく味わってほしい。だから、残った野菜の一部もスープにしたりして、日替わりで用意しています。まずは、食べておいしいサラダボウルを追求する。

お客さんの笑顔を追求したら、結果的に、野菜の命をつなげ、食品ロスを減らし、課題解決になっている。一杯のサラダが、生産者さんとお客さんを結ぶ。私たちを、ゆるやかにつなげる。「仕組みもおいしい」を、ワクワクしながら実現しているところです。

▶︎第3話はこちら
▶︎第1話はこちら

WithGreenのサラダボウルで、日本のおいしさを

WithGreenで一緒に挑戦する仲間を、募集します!

編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)


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