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数理:不可逆な意思決定のペイ条件

この記事が提供するもの

"不可逆な意思決定"がペイする条件への数理的な分析です。

不可逆な意思決定のペイ条件

今、不可逆な意思決定について回避するケースと実施するケースでの期待値計算のために記号を下表のように定義するとします。

$$
\begin{array}{l:c:c}
項目 & 回避するケース & 実施するケース \\ \hline
アクション可能回数 & n & n \cdot q \\
アクション成功確率 & p & p \cdot r \\
成功時の平均リターン & v & v \cdot s
\end {array}
$$

すると、不可逆な意思決定の実施がペイする条件は、

$$
n \cdot q  \cdot p \cdot r\cdot v \cdot s - n \cdot p \cdot v > 0 \\
\Leftrightarrow s > \frac{1}{q \cdot r} \\
$$

…と表現できます。つまり、

…が、不可逆な意思決定のペイ条件です。

$${0.1 \leq q \cdot r \leq 3.0}$$の範囲で$${q \cdot r}$$を0.1ずつ動かした時の$${s}$$の下限は次のグラフのようになります。

不可逆な意思決定を行なう際は、成功確率やアクション可能回数がどう変化するかをつぶさに調査・検討・検証し、特に成功確率とアクション可能回数それぞれの変化倍率同士の掛け算の結果が1.0を下回るような場合は、それに見合ったリターン倍率の変化が得られそうかを慎重に考えるべきです。

特に留意すべき点

$${s}$$は不可逆な意思決定を行う前後での「恒常的な」平均リターンの大きさを比較した値であることに留意してください。

瞬間風速的なリターン増加のためにリスクを伴う不可逆的意思決定を行なうのは、平均の考え方に由来してペイしにくい傾向にあります。

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