見出し画像

藤圭子 - 圭子の夢は夜ひらく - 1970

今となっては、娘さんの方が有名ですが、どちらかってーと娘さんよりお母さん世代だったり。

演歌は決して好きでは無かったけれど、親が好きだったので、家では聞く機会が多かったです。その中でもダントツの歌唱力でしたよね。

そして、他の演歌歌手の人とは全然違ってた。アメリカのゴスペルやR&Bに通じる、骨身を削って血を流して歌うような…腹の底から込みあがる魂の叫び… Theニッポンと言った、ソウルを歌い上げることの出来る人でした。

小手先のテクニックとか、そんなんじゃないの。身体の芯から絞り出されるような、冷たい情念。それは流れている島国DNA…ゴゼの血のなせるわざなのかな…

浪曲師だった両親とそのまた祖父母のルーツから刻まれ、代々受け継がれてきたもの。それが娘さんである、ヒカルさんにも受け継がれたんかな。

「新宿の女」1969

こちらがデビュー曲。当時18歳だけど大人びていました。

北海道出身で両親とドサ周りをしていましたが、15歳の時に岩見沢で行われた歌謡大会で作曲家・八洲秀章氏に見いだされ、レッスンを受けながらオーディションを受けまくったそうです。なかなか受からずにいる中、作詞家・石坂まさを氏に出会い、この歌でデビューすることになりました。

最初の夫であった、前川清さんが追悼で歌われていたんですね。

お嬢もカバーしていました。

「女のブルース」1970

彼女の歌は演歌ではなく「怨歌」と呼ばれました。うん、情念が絞り出てくる歌だもん。まさに言いえて妙。

「命預けます」1970

「さいはての女」1971

「京都から博多まで」1972

「さすらい」1975

んでもって、「さすらい」と来たので…

「さすらいの太陽」1971

虫プロ制作のこちらのアニメ作品(漫画が原作)ですが、藤圭子さんがモデルだったりします。と言っても、モチーフというか~ 歌手を目指す薄幸の主人公・・・ってなイメージモデルに使われただけで、自伝的な作品ではないです、はい。

昭和も昭和、バリバリ昔の少女漫画っす

昭和なアニメでド根性芸能モノ?に大映作品のテイストが入った感じでしょうかねー いやさリアルタイムで見てたし、レコードも買っちゃってもってたけどっっ汗


さてさて…

「圭子の夢は夜ひらく」1970

やっぱコレですよね~ 当時19歳でこれ、この迫力。ドスが利いているというか何と言うか、独特の凍り付いたような無表情さ、そして圧倒的な目ヂカラ。

顔も態度も凍てついているのに、心と瞳は炎のように燃えている。言葉として出てくる歌の歌詞は、歌として命を吹き込まれて、声として唇から飛び出す度に、すさまじい重量を伴って、押し寄せてくる北の海の、圧の強い波のよう。

子供ながらに染みるなあ…て歌。人生の絶望を歌い上げる見事さ。私が演歌が嫌いなのは不幸をナルシズムに美化しているからだったりするんだけど…

藤圭子さんのはそんな自己憐憫や美化とかではなくて、人の世の事実で魂の嘆きそのものなんだよね。なので、他の演歌とは区別されるべきものだって思ったりする。

でもって…この曲は藤さんがヒットさせる前、1966年に園まりさんが歌われてまして。

「夢は夜ひらく」1966

なのでまあ、同じ曲でタイトルではありますが歌詞が異なることもあって藤さんのは「圭子の」というのが入ることで、二つの歌は区別されていたりします。

上記の記事にもこの歌の事は書いてあるので、重複してしまうのですが。

もともとは東京少年鑑別所(練馬少年鑑別所、通称ネリカン)で歌われていた俗曲を、作曲家の曽根幸明さんが採譜・補作し「ひとりぽっちの唄」と言うタイトルで自ら歌っていたのですが、その後で歌詞とタイトルを変え、園さんが歌ったのが「夢は夜ひらく」。で、またまた歌詞を変えて歌われたのが藤さんの「圭子の夢は夜ひらく」になります。

東京少年鑑別所

でも、この二曲とオリジナルだけでなく、歌詞を変えて、他の人もカバーしているんだな、これが。同じ曲で歌詞だけ違うのが何パターンもあるという歌でしてっっ

曽根幸明さん

オリジナルの「ひとりぽっちの唄」の動画・音源は残念ながら見つかりませんでしたっっ

んで、たくさんのパターンの歌詞があるので下記、引用しておきますね。どうぞ比較してみてくださいまし。

「ひとりぼっちの唄」 曽根幸明作詞作曲 1965

お前のかァさん 何処に居る
いいや おいらは ひとりぼっち
冷たい雪の 降る夜に 淋しくしんでった

お前の父さん 何処に居る
いいや おいらは ひとりぼっち
おいらが生まれる その前に ママを捨ててった

オヤジよ どこかで聞いてくれ
ママは死ぬ時 言っていた
パパを怨んじゃいけません 私が悪かった

男だ頑張れ 泣かないで 悪いパパなら 探さずに
せめて笑って 優しいママの顔 夢を見ろ

「夢は夜ひらく」園まり 富田清吾作詞 1966

雨が降るから 逢えないの
来ないあなたは 野暮な人
ぬれてみたいわ 二人なら 夢は夜ひらく

うぶなお前が 可愛いと
云ったあなたは 憎い人
いっそ散りたい 夜の花 夢は夜ひらく

嘘と知りつつ 愛したの
あなたひとりが 命なの
だからひとりに させないで 夢は夜ひらく

嘘と誠の 恋ならば 
誠の恋に 生きるのが
切ない女の こころなの 夢は夜ひらく

酔って酔わせた あの夜の
グラスに落ちた 水色の
忘れられない あの涙 夢は夜ひらく

恋して愛して 泣きました 
そんな昔も ありました
思い出しては また涙 
夢は夜ひらく 夢は夜ひらく

「圭子の夢は夜ひらく」藤圭子 石坂まさを作詞 1970
赤く咲くのは けしの花
白く咲くのは 百合の花
どう咲きゃいいのさ この私 夢は夜ひらく

十五 十六 十七と
私の人生 暗かった
過去はどんなに 暗くとも 夢は夜ひらく

昨日マー坊 今日トミー
明日はジョージか ケン坊か
恋ははかなく 過ぎてゆき 夢は夜ひらく

夜咲くネオンは 嘘の花
夜飛ぶ蝶々も 嘘の花
嘘を肴に 酒をくみゃ 夢は夜ひらく

前を見るよな 柄じゃない
うしろ向くよな 柄じゃない
よそ見してたら 泣きを見た 夢は夜ひらく

一から十まで 馬鹿でした
馬鹿に未練は ないけれど
忘れられない 奴ばかり
夢は夜ひらく 夢は夜ひらく

「夢は夜ひらく」三上寛 三上寛作詞 1971

七に二をたしゃ九になるが
九になりゃまだまだいい方で
四に四をたしても苦になって 夢は夜ひらく

サルトル マルクス並べても
あしたの天気はわからねえ
ヤクザ映画の看板に 夢は夜ひらく

風呂屋に続く暗い道 四十円の栄光は 
明日のジョーにもなれないで 夢は夜ひらく

八百屋の裏で泣いていた 子供背負った泥棒よ
キャベツひとつ盗むのに 涙はいらないぜ

四畳半のアパートで それでも毎日やるものは
ヌード写真に飛び散った カルピスふくことよ

赤ちょうちんに人生論 やけに悲しくつり合うが
コップひとつの幸せを なんで飲み終わる

生まれ故郷の小泊じゃ 今日もシケだといっている
現金書留きたといい 走る妹よ

本当に行くというのなら この包丁で母さんを
刺してから行け 行くのなら そんな日もあった

夢は夜ひらく唄っても ひらく夢などあるじゃなし
まして夜などくるじゃなし 夢は夜ひらく

「わしらの夢は夜ひらく」
三波伸介とてんぷくトリオ 長谷邦夫作詞


十五、十六、二十と わしらの点数 低かった
テストどんなに 悪くとも みんな良く学べ

前を見るなよ カンニング
後見るなよ カンニング
よそ見してたら ベル鳴った みんな良く学べ

昨日マージャン 今日バイト
明日はさぼりか パチンコか
日々ははかなく 過ぎて行く みんな良く学べ

一から百まで バカなのだ
リコウに未練は ないけれど
忘れっポイポイ 奴ばかり みんな良く学べ

なんでこんなに バカなのか
父ちゃん うらむじゃないけれど
いつかみてくれ このバカさ みんな良く学べ

「夢は夜ひらく」藤竜也 小谷夏作詞 1974

何に追われて 生き急ぎ
心安まる暇もなく 
三十三は恥の数 夢は夜ひらく

どこか似ている 人の世は
破れ障子に 飛びすがる
秋の蛍の 生きざまに 夢は夜ひらく

いじめつくして 五年半
涙も涸れて 三年半
片手拝みの 妻の背に 夢は夜ひらく

とどかないから なつかしく
亡び行くから うつくしく
柳行李の 恋文に 夢は夜ひらく

妻と子の待つ 夕暮れが
うなぜにこうまで おそろしく
啼いて血を吐く ほととぎす 夢は夜ひらく

雪か花火か 人生は 
三下り半の 雨だれか
またまた生きのびて 除夜の鐘 夢は夜ひらく

「芽衣子の夢は夜ひらく」梶芽衣子 吉田旺作詞 1974

泣くために生まれて きたような
こんな浮世に 未練など
これっぽちも ないくせに 夢は夜ひらく

長い黒髪 断ち切って
送りつけたい やつがいる
あいつ不幸か しあわせか 夢は夜ひらく

しょせん男は おだて鳥
しょせん女は なみだ貝
抱いて抱かれて つまずいて 夢は夜ひらく

星は流れて どこへ行く
あたし流れて どこへ行く
あてのない身の 鼻うたに 寒い雨の朝

春をさがして 二年半
惚れた男が 二人半
あたしはあたしで 生きたのに つらい後ろ指

泣くために生まれて きたような
こんな浮世に 未練など
これっぽちも ないくせに 夢は夜ひらく

「かおりの夢は夜ひらく」香西かおり 市川睦月作詞 2008

右へ曲がれと いう道を
左へ曲がって なぜ悪い
開きなおって 日が暮れて 夢は夜ひらく

赤いクイーンの 幸せが
何度やっても なぜ出ない
ひとつ覚えの トランプの 一人占いよ

三つちがいの 妹に 
幸せすぎて 怖いのと 
淡いピンクの 便箋で 送る嘘手紙

おまえが最後の 女だと
笑って真っ赤な 嘘をつく
あんた殺した 夢を見た 寒い雨の朝

春をさがして 二年半
惚れた男が 二人半
あたしはあたしで 生きたのに つらい後ろ指

飲んで忘れる ものじゃなし
醒めてもどうなる ものじゃなし
うつらうつらの 人生の
夢は夜ひらく 夢は夜ひらく

動画がありませんのでしたー

して、下記の曲のパクリと言われていましたけども。発売時期が微妙に近いものの、単なる偶然で、どっちがどっちにしても、パクリってのは無い線かなあ…たまたま似ちゃっただけの気がする。

Nancy Sinatra & Lee Hazlewood「Summer Wine / サマーワイン」1967

ちゃんちゃん!


一度、藤圭似子という名前に改名したけど、結局戻されましたね~

「MoonWater」

で、バラエティ番組ではこんな歌も歌っていたりする。どんな歌も歌いこなすことの出来る、実力のある方でした。

ビートルズメドレー

「なごり雪」

もう亡くなられて8年になるんですね、早いなあ。
まだまだ歌えたと思うのに…残念なことでした。

そして命は続いていく…
彼女の魂も、歌も受け継がれていく。次の命に…


F2blogに書いてあるものを、訂正・加筆・リンク修正の上、こちらに再度マガジンとしてまとめてUPしています。

「My Favorites〜音楽のある風景」
 2021/09/28 掲載記事より転載


もし、こちらの記事を読んで頂いて、面白かった、参考になった…とそう思って下さったり、サポート下さいましたならば、心から嬉しく思います💛