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The Animals - The House Of The Rising Sun / 朝日のあたる家 - 1964


秋から冬にかけて日暮れが早くなっていく寒い時期、とくに雨の日になると、なぜか聴きたくなる曲の一つです。

アニマルズはイギリスのバンドですが、ジャンルとしては、リズム&ブルース・ブルースロックに属していて、ブリティッシュ・インベイジョンの代表格たる、後のロックシーンに多大なる影響を与えたバンドの一つ。
ボーカルのエリック・バードンは、「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー「においては、第57位に位置しています。ロックの殿堂入りをしたのは、1994年のこと。

バンド名の由来は、ワイルドなステージだったことから、観客から「Anima!」と掛け声を掛けられることが多く、それで名乗るようになった…と言われてますが、エリックが後に否定していて、実際のところは謎です。※1966年以降はバンド名をEric Burdon & The Animalsに変更してたり。

ビートルズとも仲が良く、ビートルズ、ストーンズ、キンクスと並んで人気がありました。また、メンバーだったチャス・チャンドラー(ベース)は誰あろうジミー・ヘンドリックスを見出した人物だったりします。

「Boom Boom」1964

John Lee Hooker オリジナル

さてさて、この曲ですが…
日本でも世界でも様々なミュージシャンがカバーしていますが、アニマルズのオリジナル曲というのではなく、もともとはアメリカに伝わる、古いフォークソングだったりします。

とはいうものの、アメリカという決して古くはない国の歴史を考えた時に、独立戦争以降、19世紀あたりに生まれた曲ではないかと…

私の記憶が確かならば、20世紀初頭頃にアメリカの各地で歌い継がれているオールドソングを収集した音楽学者がいて、(レコーディングに協力したのは「おやすみアイリーン」でおなじみ、歌う囚人レッドベリー)

Lead Belly's Last Sessions 1948 

その時にコレクションされたのだと思いましたが。

けど、ウィキ先生で調べてみると、レッドベリー以前に…


アメリカ議会図書館のアーカイブ・オブ・アメリカン・フォーク・ソング(英語版)の研究員アラン・ロマックスは、ジョージア・ターナー (Georgia Turner) という16才の少女が唄った "The Risin' Sun Blues" を1937年9月15日に録音、収集している。


という記述がありました。
レッドベリーの録音は1948年だから、こちらが現存する最古の記録になるのかな。

さて、"朝日の当たる家"とは、売春宿あるいは刑務所のことを指すと言われていて、19世紀に実在した、売春宿の名前とも言われています。その場合、「朝日楼」と訳されることもありますね<日本語カバー

アニマルズバージョンでは、ヴォーカルが男性なので、男性からの立場から謳われていますが、本来は娼婦(囚人)に身を落とした女性が、自分の生涯を振り返って反省する懺悔歌で、キリスト教的な宗教観(マグダラのマリア的な原罪)に満ち溢れた、暗い韻律の情念歌に位置しています。

その家はニューオリンズにあり
朝日の当たる家と呼ばれていた

母はお針子で私の青いジーンズを縫ってくれた
父はギャンブラーだった

って感じで、始まる出だし…

フォークっていうよりは、ゴスペル寄りなブルースかなぁ…

Sarah Brightman「Amazing Grace」

はい。過去の悔恨歌というのは、他に「アメージング・グレース」があげられますよね。同じキリスト教的な懺悔曲と言っても、あちらはイングリッシュトラッド寄りの讃美歌要素の強い曲ですが、こちらは黒人霊歌(ゴスペル)寄りのとっても暗い、哀しく切ないメロディ。

まあ、人種差別をして(奴隷貿易に関わっていた)いたことに対する後悔と反省からの神へと感謝と懺悔の唄と、自らが身を落とし、道に外れた生き方をしたことに対する哀惜を含む悔恨の唄では、違いが出て当たり前かもって思いますが。

「The House Of The Rising Sun / 朝日のあたる家」1964 

そして、このビデオでオルガンとドラム以外のギター&ベースが、ヴォーカルのエリック・バードンにくっついて、金魚の糞のように移動するとこが…なんかシュールっっ汗

何はともあれ、先に紹介した2曲(シンプルな原曲)を、これほどまでに完成度の高い楽曲に作り直した腕はさすがです。

ジョーン・バエズが歌ったバージョンだと、彼女の歌声が歌声だし、伴奏もギター一本なんで、ブルースというよりフォークって感じですけども。

Joan Baez 1960

ジョーンの元彼ボブ・ディランも歌ってますが、彼は色々あって、ライブでこの歌を歌うのを止めてしまいましたね。

Bob Dylan 1962

The Ventures 1965

Marianne Faithful 1965 

峰不二子のモデルだった、マリアンヌも歌ってます。

The Doors 1964

Frijid Pink 1971 

Jimi Hendrix 1969

Santa Esmeralda & Jimmy Goings 1977

Bon Jovi 1996

ちあきなおみさん 1989

ザ・ピーナッツも歌ってます、英語で。

ザ・ピーナッツ 1965

吉井和哉さん 2013

アメリカの伝統曲でグレイステットソング、永遠に歌い継がれる名曲ですね<エバーグリーン

曲調にしても、歌詞も、何パターンかあるみたいですが、「スカボローフェア」「グリーンスリーブス」
「アメージンググレイス」「アニーローリー」とかの他のトラディショナルとはえらい違いがあるけれど…
その手の位置付けになるのかな。

して、「朝日のあたる家」以外の彼らのヒット曲と言えば、
(日本でヒットした有名な曲って意味)

「Don't Let Me Be Misunderstood / 悲しき願い」1965

"Don't Let Me Be Misunderstood"を直訳すると、
「誤解させんといて〜」になりますかねー

悲しき願いってのは、「悲しき」ってのを付けるのが、邦題で流行ってたからかな~

この曲も彼らのオリジナルってわけではなくて、前年ニーナ・シモンが歌った曲のカバーでして、たくさんのバージョンがあります。

Nina Simone オリジナル 1964

70年代後半にサンタエスメラルダがカバーした時も、ヒットしました。

Santa Esmeralda カバー 1977

サンタ・エスメラルダのはラテンというかディスコ調で、それはそれでいいけども、やっぱ私はアニマルズのが好きだなあ…

日本では尾藤イサオさん(あしたのジョーでおなじみ)が、カバーしてやはりヒットしていましたな。

そして、
どーにもこーにもありゃしない〜みんなオイラが悪いのさ♪
このフレーズだけ、色んな人が多用してたなあ。

尾藤イサオさん カバー 1965


さて、もちろんヒット曲は他にもありまして…

「We Gotta Get Out Of This Place / 朝日のない街」1965

こちらも様々なミュージシャンがカバーしています。

Bruce Springsteen 1976

Bon Jovi 1992

「Inside Looking Out / 孤独の叫び」1966

こちらはグラファンがカバーしています。

GRAND FUNK RAILROAD 1969

「Sky Pilot」1968

この曲は、それまでのブルース思考とは異なって、サイケデリック路線の反戦歌で、ウエストコーストロックへと音楽的傾向が変わった後の曲でした。
ちなみにこの頃、後にポリスのメンバーとなる、アンディ・サマーズがギタリストとして在籍していました。

アニマルズは解散してから、二度ほどオリジナルメンバーで再結成しています。1975年と1983年に。今もエリックは歌ってるみたいですけど。当たり前ですけど、皆さん爺になっちゃいました。

Live, 2011

んでもって、
日本公演(未開催)で彼らは、893なプロモーターに騙されて、大切にしていた機材や楽器を失うという、本当に酷い目にあいました。
だから、日本に対するイメージ悪いんだろうなあ…
以来、日本に来てないんですよっっっ すまんねぇ。

「It's My Life」1965

「Around & Around」1964


F2blogに書いてあるものを、訂正・加筆・リンク修正の上、こちらに再度マガジンとしてまとめてUPしています。

「My Favorites〜音楽のある風景」
 2020/09/21 掲載記事より転載


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