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障害はどこにある?

あまり積極的な広報活動をしていないんですが、オンラインコミュニティを昨年の8月から運営しています。


地域の福祉を少し前に進めたくて、ちょうどコロナ禍だった事もあり「オンライン」といううちの地域ではまだまだ上手く活用されていない手段がもっと普及されたらいいな、という思いも込めて始めたんです。


移動が制限され、コミュニケーションの機会が減り、自分から情報を取りに行ったりアンテナを立てていなければ、時代とか社会の変化に下手をしたら気づく事もなく置いていかれる、なんてことが容易に起こりうる時代になったなぁ、という感覚があります。


そんな時代の中ではやっぱりインターネットの存在は大きくて、情報を発信するにも受信するにもきちんとこの場に自分の存在を置かないとさすがにマズイな、と。


あとはこんな時代だからこそ「コミュニティ」という繋がり方は特に僕が住んでいるような地方では、福祉を前に進めるのに重要な要素だと思い、後先考えず始めた感じです。


福祉の経営やマネタイズ、新しい活動の企画、情報の共有や時には僕の悩みなのか頭の整理のプロセスもここに吐露させてもらっています。



とはいえクローズなコミュニティなので実際に何をやっているかが見えにくいのが難点。


なので時々宣伝も兼ねて過去に投稿している記事をこうして表に共有させてもらっています。
大体がえらく長文なのでいつもメンバーの方には「長えよ!」と言われるんですが苦笑、もし読んでみて興味が湧けば是非覗いてみてください。


ということでどうぞ。
(※ほぼ1年前の記事なので多少文章を修正しています。)




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先日とあるオンラインイベントに参加して死ぬほど刺激を受けたんですが、もともと障がい者就労や雇用についてのシンポジウムだったんですね。
そこで今の全国区の福祉や雇用の考え方を目の当たりにしてきたんですが、正直僕が暮らしてる地域との時代の格差があまりにヤバかったので、正直危機感を感じました。先端を走っているところは、マジで抜けているなぁ、と思いました。




僕だけのものにしてもしょうがないし、ただの情報で終わってもいけないと思うので、上手にまとめられるか分かりませんが、整理してまとめていきたいと思います。もしよければ読んでやって下さい。
※またいつものようにクソ長いので、単元ごとに時間がある時に読むくらいで。ご興味があれば。








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「障がい」の捉え方がもう変わっている
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シンポジウムは2パートで構成されていて、冒頭は「障がい者就労の現状と未来について」的なセクションだったんですが、まず議論の前提になる共通認識に驚きました。
僕らはよく「障害は社会の側にある」的なことを議論します。そして僕もつい先日の投稿で、「障害は実は福祉の側にある」んじゃないか、みたいな記事を投稿しました。




しかし、就労継続支援B型を主に営まれている代表の方がまず言われていたのは、「もう飛び越えちゃっていいんじゃないですか?」です。
そもそも健常者と障がい者の違いをわざわざ僕ら福祉業がもう気にしなくていいんじゃないか、という話です。



これだけだとちょっとした精神論の話かもしれないんですが、登壇されてた経営者の方が言われていたことがとても理論的な話でした。

「障害は”関係性”の中にあるんじゃないですかね」という言葉です。



実例を出すと、例えば就労継続支援B型で居酒屋をやっています。お客さんは「美味しいビールが飲みたい」と思って来られます。そこに「美味しいビールがくる」、たまたまそのビールを入れて持ってきてくれる人が何かしらの障害の診断名を受けている人であったとして、そこに何か問題があるでしょうか?


期待をしているものが期待を下回る事なく得られるこの工程の中には、持って来る人に障がいがあっても全く関係性に問題がありません。


Webプログラムを作る人に障がいがあっても、そのプロダクトがオーダー通りであれば、プログラムした人が誰であってもその関係性の中で障がいの有無なんて問題になりません。


つまり「機能」を満たしているのであれば、そこの関係性においては障害なんて存在していない、という理屈です。
誰も困っていないんだから、それはもはや障害じゃないじゃないか、ってことですね。



逆説的に言うと、もしかしたら福祉の側が変に構えて、福祉事業所感を打ち消そうとしてみたり、障がいがあるから、もしくは期待を下回るかもしれないから、仕事の単価を無意味に下げたりしてしまうことで、もしかしたら福祉が利用者の可能性を潰してしまってないか?
→これを福祉業のど真ん中の方が言うんですよ。





「機能」という言葉に呼応して、じゃあ「機能」を満たせない方はどうするのか、という議論も同時進行していました。


「機能」だけではない価値もあって、それがその人そのものなのか、「ストーリー」なのか。
ともかく「機能」だけではない価値をどうやって賃金、というか経済合理性と紐つけていくのか、を福祉業は考えていかないといけないですよね、という話。


印象的だったのは、これも就労継続支援B型を運営されている方がおっしゃっていたんですが、「障がいを持っていても「自分はこういう生き方をしたい」と【覚悟】を決めているのなら、何度でも反復しながら身につければいい、生きていけるだけのものにすればいい。」という思いでした。



そんなこんなで、経済合理性にいかに紐つけていくか、ということが就労支援の課題だよね、という共通認識に結論したみたいです。




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経済的合理性をキーにして社会と繋がる
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就労支援や障がい者雇用に対しての考え方のひとつの軸として「経済合理性」がどうやらキーワードになっています。
理由は、「社会」という場所はつまり「経済が回っていくことで生活や仕事を担保することが出来る場所」と定義づけている感じでした。


ちょっとドライに聞こえるかもしれませんね。
でも、これはある意味ではやっぱり現実で、良し悪しは置いておいても経済合理性は切り離せない社会で生きるための重要な要素です。



平等と公平の違い、みたいなものかも知れませんが、経済合理性というものを厳格なものさしにしておくことは大事じゃないか?って言うんですね。
もし、「障がい者だから」って、経済合理性を求めずに一般の被雇用者と差がない賃金を支払っていたら、そこには関係性の障害が生じる、というわけです。


要は、「なんであの人はあれだけの仕事しかできていないのにこんな賃金をもらえるのか」という気持ちを沸かせるから、職場内で差別的な感情が芽生えてしまう。
「障がい」を「障害」にしてしまうんですよね。
それだったら、2万円の仕事しかできていなければ2万円しか渡さないほうがそれは当事者の「伸びしろ」を残すことにつながり、「頑張ろう」の素になるでしょう、
という理屈です。



そう考えを進めていくと、「だったら就労支援者がやるべきことは、どうやって経済合理性のある対価を生み出せるかを考えないといけないだろう」になるわけです。経済合理性を獲得することで彼らは社会の中で存在する価値も獲得するから、という解釈をしました。



ここからもう少し議論が掘り下げられて、つまりはもはや「障がいの有無」が問題なのではなくて、持っている「価値」と求められる「価値」のマッチングが問題なのであって、それだったら一般の社会人だって全く同じ問題と向き合わなければならないから、同じ土俵じゃん!という話になるわけです。


だから「機能」を高めてその価値をマッチングしたほうがいいのか、持っている「価値」が求められるように経済合理性にどうやって絡めるかを生み出す方へベクトルを向けるのか、が実は就労支援者の「やるべきこと」になるんじゃないか?っていうことをこれから考えていかないといけない。



かたや障がい者雇用というところについては、今は企業の方が「就労施設がどんな役割、仕事ができるんだろうか」を考えないといけない時代だろ、という向きが強いらしいです。
#訳わからなくなってあきらめないで
#ちょっとむずかしい話になってるけど



福祉側からしたら、「高齢化、少子化、人口減少を目の前にして、人手不足が常態化しているんだから、お母さん世代の超短時間雇用や、障害者雇用を考えずにどうやって事業をこの先回していくんですか?」くらい企業のスタンスに課題提起を投げかけるんですって。


その傍らで、事業所内でしっかりと「試し打ち」、つまりトライ&エラーをさせてあげて自分の適性を見つけてもらうこと、それと「教育」のあり方にアプローチが必要だと考えています。主に支援学校から上がってきた方の支援を行う上で必要なエッセンスとして述べられていました。








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コミュニケーションがもっと必要 
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障がい者雇用に真剣に向き合われている特例子会社の人事の方に言わせると、企業としては当事者を「どうやって戦力化できるか」というところを考えていて、そのための仕組みや能力開発を行わなければいけない、ということを課題ととらえながら、就労系事業所だけでなく、一般大学の新卒採用(グレーゾーンの方かな?)を視野に入れたりして、積極的に障がい者雇用を行って経済合理性を成立させていこうと苦慮されている、と言われていました。



だから福祉業の方がどのような支援をしているのか、企業に何を求めているのかなどを知りたい、と。
企業は企業でやっぱり受け入れ方に悩んでいて、仕事自体は経験を積むことで覚えてはいけるだろうけど、「戦力化」していくためにはもっと福祉の側の声をもっと拾いたい、とのことでした。


能力開発のシートを作ったり、新卒採用のためのアクションを起こしたりと、受け入れ方を具体的に動いていらっしゃるんです。



どうやら僕らはもっともっと「コミュニケーション」が必要で、福祉も企業も話し合って、分かり合って、活かし合うための機会が必要なんだろうな、と思います。
もちろん現場レベルではいろんなコミュニケーションは交わされてるんでしょうけど、なんていうか、学び合いみたいな場所。


お互いがノウハウを出し合ってもらい合って、そのコミュニケーションが企業と障がい者雇用を繋ぐことに繋がっていくんだという事でしょうね。
だって、「雇用して戦力化したい」側と、「社会に背中を押して出したい」側のコミュニケーションがいい着地をしない訳なくて、もっとそこへ集まらないといけないな、と思うわけです。






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感想やらまとめ
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もはや長々と書いているので、読む気力すらも奪っているのかも知れませんが、すみません。



障がい者雇用、という領域では、企業は企業で障がいを持っているいないに関わらず、人材をいかに最大化した雇用をするかに目を向けているところはある。自分達が求める人材像もはっきりしてきたし、どうやってその力を伸ばしていくのかについても取り組んでいる。でも受け入れには悩みも持っていて、もっと知りたいことが山ほどある状態です。


つまりは企業と福祉の接地面をもっと増やしていくことは絶対に必要で、コミュニケーションの量をどんどん増やしていくことでお互いの理解の質がもっと高まっていくんだろうな、と感じました。



障がい者就労の領域では、「障がい」があることはすでに障害ではないこと、「健常者か障がい者か」ではなく、社会活動や価値に対しての関係性から眺めて、そこに生まれたギャップを障害と捉えていることが僕にとっては新しかったですね。久しぶりに刺さりました。


それと、最近ずっとモヤモヤしていた「福祉はもっと一般化していかないといけないんじゃないか」という感覚がすっきり言語化されたような爽快感が得られました。
これは僕の解釈ですが、福祉が一般化する、ということはつまり、「社会活動や価値との関係性において障害がない」状態のことだという紐付けができました。



どちらにしても、確実だと思えることは、「社会」や「世の中」の動きや流れを知らないで障がい者雇用や障がい者就労は伸ばしていけないな、ということです。だって、何が価値になるのか、今の経済合理性はどこにあるのか、言うなれば何が仕事になって何がお金、彼らの収入になり得るのかが社会を知らないと分からないからね。
「機能」と「価値」の要求水準をしっかりと掴んでいく目を持たないといけないよ、ということを突きつけられた気がしました。



そして、「教育」という言葉が出てきたことも僕は嬉しかったです。支援、じゃなくて教育。支えるんじゃなくて育てる視点が必要ですよ、っていう視座に立っている福祉人がいることがとても嬉しくて。


あと、何より驚いたのは、100人の福祉業の方が見ていたオンラインシンポジウムなのに、いわゆる福祉業界用語みたいなものは、殆ど出てこなかったことです。障がい特性、支援、配慮、〇〇障がい、程度のワードもほとんど出ず、まるで普通のビジネス系のシンポジウムに参加しているかのような錯覚さえ起きました。


誰もが障害福祉の業界にいながらも一般社会とちゃんと同じ土俵に乗っているんです。B型もA型も移行も、ちゃんとひとつの産業として当事者の機能や価値を高めることをどうやるか同じ目線で考えていました。



あまりにも都市部と地方の感覚の差や行動の差、文化の差があることに、正直絶望に近いような驚きをずっと感じています。


今回のシンポジウムで話されたことを理解して、さらに具体的に行動に落とし込める福祉業の方が今自分の地域に一体どれくらいいるんだろう?そもそも情報すらキャッチできてないのが実情なのか、と思ってしまいます。
多分、感覚が離れすぎていてピンとこない人も多いのかも知れません。



今回のシンポジウムの内容が都市部の福祉の感覚の総意ではないと思います。
ただ、事例検討でも、工賃向上でも、一般就労率でも、どうやって作業を獲得するかっていう次元ではなく、都市部の障がい福祉は、ちゃんと社会に具体的なリーチをしていることは間違いなくて、一般社会の中できちんと経済合理性の妥当な経済活動を生み出しているのも確かです。
そして、いわゆる診断としての障がいを見るのではなく、「機能」と「価値」の軸でそれを高めることを課題としてとらえていることに凄みを感じました。



全身の毛穴が開きっぱなしです。



上手にまとめられているかどうか分かりませんが、全国の福祉業はずっとずっと先を走っているよ、というお話でした。





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