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【詩】アリと砂

アリの触角は 砂をゆらす 
一滴のじかんが背中をながれて
笑ったような酸っぱさを
音に変えるほどのあかるい白
人が急ぐ直角の道から
切り取られたスナップショットが積み重なって一枚の空になる頃

らくがきの仕方教えますという
空から舞い上がるスカートのビラは透明で
どこにも落ちずに 戦わずに
見えない両腕を伸ばして両足を組んでシナを作り
写真写りの良い角度を探す

やはりアリは見ていた
信じていたのだ
硬質な都会の表情のどこかに等身大の間が流れているから
そこがステージになると

応答しないコンクリートを登ってゆく
自身に自信が磁針となって
等速落下するその壁は砂の女のように
自由に 滑らかに 一足ごとに一音ずつ散って
頂上が深海の空の色に
 
アリはその色に触れた
色は揺れた
アリの触角は頭を上げた
浮かんでいるのは砂の光 スカートのビラと一緒に
アリは舞った

宇宙はそれでできていた

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