本紹介 『くだらないものがわたしたちを救ってくれる』
こんにちは、ぷりごろたです。
はじめての本紹介を書いてみようと思います。
紹介する本はこちら📚
著者:キム・ジュン
タイトル:くだらないものがわたしたちを救ってくれる
出版社:柏書房
あらすじ☟
あてもなく図書館を歩いていると、なんともそそられるタイトルが目に入り、手にとったのがこの本でした。
プロローグを立ち読みし、自分と同じく遺伝を研究している方だと判明。
その場で借りることに。
生命科学の博士研究員として、韓国で線虫を研究されているキムさんが、その楽しさ・苦しさ・実情をエッセイ形式で綴っています。
さて、まずはキムさんの研究対象「C.エレガンス」をご紹介✏
韓国では「かわいいチビッ子線虫」という別名が付いているこの線虫は、海・川・土など地球上のあらゆる環境に適応しています。
大きさは約1mmと小さく、肉眼で見ることは難しいですね。
そんな彼らは、実は僕たち人類の科学を大きく進歩させてくれた立役者なのです。
例えば、アポトーシス (細胞死) と呼ばれる現象の発見があります。
これは生体内の古くなった細胞が自ら死滅することで、免疫や神経系の機能を維持する働きで、人間の生存にも重要な役割を持っています。
C.エレガンス研究者が発見し、後にノーベル賞を受賞しました。
また、ヒトゲノム計画という、ヒトの遺伝情報を全て解析してやろうという壮大なプロジェクトでも、C.エレガンスは大活躍だったようです。
ちなみに、ヒトゲノムを解析した結果、線虫 C.エレガンスの遺伝子の70~80%は、僕たちヒトと非常に似ていることが分かりました。
じゃあなぜ姿形がこんなに違うのでしょうか?
う~ん、面白い!
こんなふうに実はスゴい C.エレガンスですが、知らなければただのウネウネ。キムさんも「そんなもの役に立つの?」と何度も言われてしまいます。
さらに、ほぼ最低賃金・週60~80時間の拘束時間という過酷な環境で、権威ある雑誌に論文が掲載されたとしても、教授職はもちろん、企業の研究者になることも非常に難しいそうです。
他にもまだまだ苦しいお話が書かれていました。
研究者という職業は、やはり相当な変わり者でないと続けられないのでしょうか??
「そんなことはない、いやあるかもしれないけど、でもとっても楽しいよ!」というのが本書のメッセージだと僕は感じました。
苦しい現実に向き合う中で、キムさんが立ち戻るのは、科学は楽しいという原点です。
小さな生き物に宿る大きな世界、そこに眠る謎への好奇心、まだ誰も解いたことない問題への挑戦など、彼の思う科学の面白さが文章に詰め込まれています。
キムさんは、くだらないものが私たちを救ってくれた歴史に敬意を払い、実験や論文に追われる毎日を心底愛しているのです。
暖かくて夢があって、とても良いお話でした。
やはりどんな大人にとっても、現実を見ることと同じくらい、夢を見ることは大切なのだと思います。
「くだらないものがわたしたちを救ってくれる」この言葉は、これから何度も僕を救ってくれそうです。
それでは、また🖐️
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