30周年は真珠。らしいです。
30回目の結婚記念日を迎えた。
「パール婚」らしい。
ささやかながら、夜景の見える席を予約した。
水のグラスで、乾杯。
よく、生き残ったよね。
「ほんとに。」
今、穏やかな気持ちで食事できることが、ありがたい。
8年前。
妻の執刀医から、聞いたことのない病名を言われた。
「治療方法はないけど、転移予防のために抗がん剤投与を始めましょう。」
10万人に1人の希少がん。
5年生存率30%。
泣きながら専門医を探して、経過観察。化学療法しない道を選んだ。
不安に押しつぶされそうな日々。
定期健診。
CT画像に転移の疑い。切除手術の相談。
検査入院。生体検査。
異常なし。
その都度、神仏に祈り、天を仰いだ。
先週の大学病院。
「転移ありません。手術から8年ですね。素晴らしいです。
もう、半年に一度の検査は必要ないでしょう。次は1年後でいいですよ。」
ありがたい。
3年前。
僕が、パラグライダーで墜落。
激痛と、腰から下の違和感に、死を覚悟した。
ドクターヘリで運ばれた大学病院。
救命救急の処置室に、女性医師の声が響く。
「腰椎だけじゃないよ。骨盤も折れちゃってる。こりゃ痛いわ~。」
数人がかりで左足を引っ張られる。
割れて上下にズレた骨盤を元の位置に戻される痛み。耐えるしかない。
「固定するからね~。頑張って~。」
骨に、太いボルトがねじ込まれていく。何本も。
創外固定。
腰から固定金具が飛び出した状態で、集中治療室へ。
手術の同意書に「重篤」の文字。震える手でサインした。
警察からの電話。
「ご主人の状況はいかがですか? 亡くなったりしませんか?」
無神経だよね(笑)
思い出して、妻が笑う。
寝たきりから、車椅子、歩行器、松葉杖、一本杖。
リハビリは痛くて、辛かったけど、少しづつ回復した。
車の運転、自転車、杖なし歩行ができるようになった。
ありがたい。
転勤での引越し。7回。
それぞれの土地でお世話になった人達、住んだ部屋。
いろんなことが、あったよね。
もう全部、笑い話だ。
独身の頃、聞いた話がある。
「良い結婚か、悪い結婚か。30年我慢して続けてみればわかる。」
無責任な話だな。悪いとわかった時は、もう手遅れじゃん(笑)
その30年が、経った。
冷静になったら、結婚なんてできない。
親よりも長い時間、一緒に暮らす人を選ぶなんて、間違えたら大変だ。
来年、もっと素敵な人と出会うかも知れないし・・・。
恋愛の勢いで、プロポーズ。
婚約、結婚式、披露宴、新婚旅行、新居。
自分達だけではなく、親を巻き込んでの大騒動。
あれから30年。
よく、我慢してくれた。
ありがたい。
これからも、よろしくお願いします。
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