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「生体防御」の基礎②

前回の復習(微生物が体内に入らないための工夫)

前回、多細胞生物であるヒトが、「細胞レベルでの外敵」からどう身を守っているか?を解説しました。

そしてそのメインは「皮膚のバリア」でした。

ただ、皮膚という丈夫なバリアのない、ヒトが外部に接している部分では物理的なバリアは脆弱です。それが、いわゆる「穴」の部分でした。

食べ物や空気の通り道、おしっこの出ていく通路は「(吸収したり分泌したりするという役目を果たすために)薄くなっている」上皮でできているため、様々な工夫で微生物に侵入されないようにしていました。しかし、それでも微生物は侵入してきます。特に高齢者ではこれらのバリアが徐々に弱ってくるため、頻度が高いですね。侵入されるとそこで外的とバトルが始まります。

体内に侵入した微生物とどう戦う?

さて、本記事では、この「細胞レベルで侵入してきた微生物とどう戦うのか?」を紹介します。

「免疫系」が病原微生物と戦う「システム」です。この主役はなんでしょうか?

ざっくり言えば、「白血球」というやつです。

では、ここで登場する白血球というのは、「血液」という科目で登場するキャラクター(細胞)です。

物流システム(血液)中を漂っている3系統の細胞たち

臓器別に学習をすると「血液」という科目が登場します。白血病やら貧血やら、いろいろ難解な科目な印象が強いですよね。その「血液」で登場する3種類のキャラクターのうちの一つがこの「白血球」です。残り2種類は「赤血球」と「血小板」です。

血液という「科目」が難しいのは、他の「肝臓」とか「胃」みたいな「実体」を伴わない見えない世界の話だからですよね。血液中を漂っている細胞について学ぶ学問だからです。ですので、まずは登場キャラクター別に役割をざっくり押さえましょう。

※厳密には血小板は「細胞からちぎれてできた破片」ですので、細胞ではありません。赤血球も、核を失っています。これらはその役目を十分に果たすために、いわゆる細胞としての機能をかなり失っています。

パトロール&外敵と実際に戦う「白血球シリーズ」

物流システムに紛れてパトロールしている白血球はまるで「警察」に例えられます。そして「警察」と一括りに言っても、いろんな部署や役割があります。若手か老練かでも役割は違うでしょう。

警察の中にもそういった細かい役割分担があるように、この白血球グループにも役割分担があります。有名なのが好中球、好塩基球、みたいな分類ですね。

いきなりこれらを覚えようとするから血液の勉強が嫌いになるわけですよね。大丈夫です。気持ちはよくわかります!ですから、今この記事を読んでいる段階では「白血球にもいろいろ種類があるんだな」で構いません!

白血球の中でも、「特攻隊」みたいなヤツがいたり、頭脳戦をするヤツがいたり、飛び道具を使うヤツがいたりと、びっくりするくらいいろんなヤツが登場します。総じて、これら白血球グループが体内に侵入した病原微生物と戦う、と覚えておいてくださいね!

交通網が傷んでいないかチェックし、応急処置をする「血小板」

では、血小板は、血液中に漂って、何をパトロールしているのでしょうか?

じつは血小板たちは「血管」という交通網に「穴が空いていないか?」をパトロールしています。

血管には血液が充満しており、ヒトの体内物流ネットワークを担っていますから、穴が空いて中身(血液)が溢れ出してしまっては困ります。ですから、この「穴」を塞ぐ仕組み(止血)があります。このトップバッターになるのが血小板です。空いた穴を見つけ、そこにベタベタッと糊のようにくっついて穴を塞ぎます。私たちがたとえば指をぶつけたり切ったりして怪我をすると出血しますが、放っておくと血は出なくなってきます。「止血」という働きのおかげです。

物流システムの主役「赤血球」

では赤血球はどうでしょうか?実は、これはすでに登場しています。

一言で言えば、「ガス専用のトラック」です。

赤血球は心肺機能に強く関係する細胞です。そう、物流システムについて解説したときにチラッと登場しました。

赤血球は酸素と二酸化炭素を運搬しています。「栄養素」や「ゴミ」については基本的に、血液中に溶かすことができるのですが、さすがにガスである酸素や二酸化炭素はほとんど血液中に溶け込めません。ですから、専用のトラックが必要なのです。そのトラックが、「赤血球」です。「ヘモグロビン(Hb)」というすごい巧みな構造の物質を含んでおり、これが酸素や二酸化炭素と上手に結合・解離してくれるおかげで、全身の細胞に酸素を送り届け、二酸化炭素を回収してくることができます。


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