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「心房細動が分かる」だけでもスゴイこと 〜apple watchの心電図〜

apple watchの心電図機能について前回記事を書きました。

 この記事内で、結局apple watchの心電図といっても、ぶっちゃけ有用性としては「心房細動」が分かるくらいだよね。と述べました。
 ですが、その「心房細動が分かる」というだけでも相当なインパクトだなぁとも感じています。今日はそこについて解説します。

「心房細動」は不整脈のなかでも異色

 「心房細動が検出できる」ことは、それだけで非常に有用です。それは、心房細動という不整脈の「特殊性」にあります。理由は3つです。

① 心房細動は、加齢とともに、誰でも発症しうる
② 心房細動は無症状のことがある(もしくは、「慣れ」てしまう)
③ 心房細動は、脳梗塞(による寝たきり)の原因となる特殊な不整脈である

 これらについて詳しく説明しましょう。

①誰でも発症しうる

 心房細動は加齢に伴い誰でも発症しうる不整脈で、特に40歳以上の方であれば、どんな方でも発症しうる不整脈です。
 アルコールやカフェイン摂取量が多い方は要注意ですが、関係なく発症する方も多いです。僕が心房細動診療に関わっていて特に感じるのが、いわゆる生活習慣病のような、「いかにも動脈硬化バリバリそう」な患者さんばかりじゃないことです。言い方は悪いですが、「ごく、ふつー」の方にも多いのです。狭心症や心筋梗塞でカテーテルを受ける患者さん(にももちろん多いと感じますが)とは、患者像が違うのです。

②気づいていない人が多い

 なぜ、心房細動を「捕まえる」ためにわざわざ心電図を記録する必要があるのでしょう?
 それは、無症状の方や、なんとなく「息切れなどの症状があるのに歳のせいだと思っていらっしゃる方多いからです。
 その上、この不整脈は「初期の頃ほど健康診断で捕まりにくい」です。理由は、「発作性に出たり引っ込んだりする」からです。

③「大きな脳梗塞」による寝たきりの原因となる

 「脳梗塞を引き起こす」という最大の特徴があるため、心配な方も多い不整脈ですね。長嶋茂雄監督が心房細動による脳梗塞に罹患されたニュースで、患者さんからの認知度は上がったと思います。

 ここで、とても大事なので強調しておきたいことがあります。

 脳梗塞は、通常、「ポックリ死」する病気ではありません。

 「脳卒中で倒れた」という言葉を良く聞きませんか?僕は、この言葉を聞いた一般の方は、「脳の病気でぽっくり逝く」イメージを持っておられるのではないかといつも心配しています。

 むしろ麻痺などで不自由になり、他者からの介護を必要とする怖い病気です。場合によっては言葉が分からなくなったり、うまく喋れなくなってしまいます。幸い、寝たきりにならなくても、数ヶ月に及ぶ入院リハビリ生活が待ち構えていることだってあります。ご飯が上手に食べられなくなって、ムセてばかりで肺炎による入退院を繰り返すかもしれません。脳梗塞は非常に失うものが大きいです。

 「ポックリあの世に逝って大往生」ではないということを知っておいてほしいのです。

 だからこそ、健康意識の高い40歳以上の方はときどきapple watchで心房細動が検出されないか、気が向いたときにチェックしてみてはどうでしょうか。前回記事にも書きましたが、apple watchが心房細動ではないと判断してくれた場合には安心感があります。

「一般向けの心房細動本はないか?」

 ちょっと古いですが、一般の方向けに大きく変わったことはありません。それよりも山下先生の語り口がたまらなく「腑に落ちる」と思います。大量のデータ・エビデンスを解釈し、その上で、実臨床において素朴な疑問を常にぶつけておられるのだと感じ尊敬できるドクターです。

apple watchによるこれらの新機能は氷山の一角

 apple watchの心電図機能や脈拍数・酸素飽和度のチェック機能などは「氷山の一角」だと思っています。
 またこれらで収集された「膨大」なデータによりさらに一気に「医学の進歩」は加速していくでしょう。これは医療従事者として確信しています。

 これから持続血糖モニタリング機能などのついたヘルスケア系ウェアラブルデバイスが台頭してくることが予想されます。

最後に(これからの時代を生きるすべての方に)

 そして自分の健康は「自分」で管理する時代になります。すでに医師でさえ処理しきれないほどの情報量が世に出回っています。

 資本主義社会において、人を不健康にする情報や効果不明なサプリがあなたを狙っています。儲かるからです。怪しいサプリ業界に魂を売っている医師がいないと断言できますか?
 病院ですら本当に必要な検査・治療を勧めてくれているか、分かりません。病院だって、「経営」のために必死です。

 これからの数年間で医療業界に起こるイノベーションは計り知れません。ですが、それに医療業界や社会的な体制は(スピード的に)ついていけない可能性が高いです。まして日本の医療業界は業界全体としての柔軟性が低いと言わざるをえません。これからの時代、「医者任せ」「病院任せ」では自分の健康を守り抜くことはできません!!

 これからの時代を変えていくという強い志のみなさんが、(健康を害することで利益を得ようとする人たちによって)健康を害され道半ばで挫折するようなことがあってはならないと思います。そんなみなさんを応援する場であり、情報提供の場であり続けたいと思います。

 そして、同じような志の医療者たちが、モチベーションを維持できるよう「わかりやすく知識・経験を噛み砕いて発信」し続けていきたいと思っています。

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