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「生体防御」の基礎①

外的から身を守る仕組み(イメージしやすいケース)

ここまで、われわれヒトは、多細胞から成る「ムラ(街?)」だということ、そしてその「ムラ」内に優れた物流システムがあり、絶えず新鮮な酸素や栄養素が全員に供給され、二酸化炭素やゴミ(代謝産物)が回収・排泄されることを学んできました。

ところで、単細胞生物は、外的を認識すると、逃げ回っていたと思います。

多細胞である我々はどうでしょうか?

イメージしやすいのは、万が一、山でクマに遭遇した場合ですね。目と耳、鼻など五感を通じて「外的(この場合、クマ)」を認識し、気づかれないように、全身の骨格筋をフル動員して、逃げると思います。これは、「個体」レベルでの「外的から身を守る手段」ですね。「ムラごと逃げる」という仕組みですね。これについてはイメージしやすいと思います。ですが、これについてはまた「神経系」や「筋骨格系」などで確認しましょう。

われわれの「細胞レベル」の外的は?病原微生物たち。

では、われわれヒトの体内の細胞たちが、小さな病原体に襲われることはないのでしょうか?

答えはすでにみなさん、うんざりするほどご存じの通り。むしろ(クマや恐竜と戦うことのほとんど必要なくなった現代の)われわれの敵は、「見えない病原体」ばかりです。

この病原体はざっくり①「ウイルス」と②「細菌」と③「カビ・その他」に分けられる、と覚えておいてください!(これ以上の細かい分類は、今は無理して覚えなくて良いです。)

※ ちなみに、ウイルスはもともと外来語なのですが、一応医学的にカタカナ表記する場合「ウイルス」と「イ」を小さく書かないのが正解です。これは「いわゆるルール(決まりごと)」なので覚えてしまいましょう。ウィルス(×)なので気をつけてください。素人だと思われてしまいかねないので注意ですよ!(逆に、「イ」を小さい「ィ」にしている人は素人だとすぐ見抜くこどができました。)

病原体が侵入しないための仕掛け①「皮膚という分厚い壁」

では、われわれの「ムラ」に外的が入らないためにどんな仕組みがあるのでしょうか?まず、わかりやすいのが「皮膚」です。皮膚からは普通病原体は侵入できません。というのも、皮膚というのは細胞が何重にも積み重なり、蜜になっていて病原体が侵入する「スキマ」がありません。よほどの微生物でない限り、皮膚から体内への侵入は難しいんです。

病原体が侵入しないための仕掛け②トラップ

だからこそ、皮膚以外のところから病原体が侵入するわけですね。さて、それはどこでしょう。

ヒトの「穴」に注目してください(食べ物の通る「穴」と、空気の通る「穴」と、そして尿の出ていく「穴」に注目しましょう)。

以前の記事で「消化管」は「外の世界」だと説明しました。食べ物に付着した微生物は、そのまま消化管の中に食餌と一緒に入ってきます。

消化管は栄養を吸収したり消化液を分泌したりするため、皮膚のように分厚い構造ではダメなのです(分厚すぎると本来の役目が果たせません)。だからこそ微生物が侵入しやすい。そこでトラップを用意しています。本来は「消化」が目的の「消化液」ですが、微生物も一緒にやっつけます。特に胃の中で強力な胃酸をの中で生き残る微生物は稀です(それでも生きて胃に寄生する菌としてはピロリ菌が有名ですね)。

また、腸の中には「共生」している善玉菌たちがいます。侵入してきた微生物は、この善玉菌ワールドで勢力争いをすることになります。善玉菌がしっかりしている場合、病原菌は住み着いたり体内に侵入したりすることはできません(多少負けてしまうと、一時的に下痢をしたりすることはありますが)。

他に、「穴」といえば、空気の通り道(食べ物は、口から「食道」を通って胃に送られますが、一方、口から吸った空気は「気管」を通って肺に行きます。この通り道を「気道」と呼びます)です。

「気道」は、絶えず外界の微生物にさらされています。ですから上手に微生物が侵入しないよう工夫がなされています。

まず、鼻には鼻毛という物理的なバリアがあります。もちろんそれだけでは防ぎきれませんから、気道には細かい毛が生えていたり、粘液というのが分泌されていたりして、「侵入してきた微生物を追い出そう、追い出そうとする仕組みがあります(痰が出るのはこのためです)。

そして、「尿路」も注意しましょう。ここも体外から微生物が侵入してくるルートです。

特に尿路の長さが相対的に短い女性は、ちょっとおしっこを我慢すると膀胱炎になったりします(看護師さん多いですよね)。

尿路も、絶えずおしっこをすることで「侵入してこようとする微生物」が尿と一緒に押し出されるようになっています。

細胞レベルで、侵入した病原体から身を守る仕組み(免疫)

では、これらのバリアを潜って微生物に侵入された場合、どんな仕組みがあるのでしょうか?
長くなってきたので、ここから先は、次回にしましょう!お楽しみに!

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