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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい… もっと読む
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#点滴

強心薬、DOBとMILどっちにしたら良い?

強心薬の使い方は難しいですよね。強心薬が必要な場面を判断し、「ちゃんと効いているか」を判断するのは経験を要すると思います。過去に記事を書いていますので、ぜひ参照していただければと思います。 では、強心薬が必要な場面が判断できたとします。 次に、強心薬のうち、β刺激薬(ドブタミン)を優先すべきか、PDE-3阻害薬(ミルリノンやオルプリノン)を優先すべきか、悩みますよね。 今日は、その話をします。 結論からいえば、まずドブタミン(DOB)を使い慣れろ いろいろ考える

体液コントロールと腎機能②

ラシックス®を打ち続けているだけでは、限界がくる 復習です。  ざっくりラシックス®のような「Na利尿薬」は、まず細胞「外」液から除水を行います。また、腎臓に作用するため、     ① 血管内volumeからまず除水される     ② 次に、間質から除水(血管内にshiftして)される  という順になります。「細胞内」のうっ血には作用しにくいイメージができたでしょうか。もちろん、じわじわと(「細胞内」もパンパンになっているため)血管内に引き込まれ、最終的には除水されるのでし

体液コントロールと腎機能①

体液コントロールの難しさは心不全でも「一緒」 心不全患者さんの体液コントロール中、Creの上昇に悩まされた経験はよくあるのではないでしょうか?特に利尿薬でコントロール中にCreが上昇してきた場合、「利尿のかけすぎかな?」と思うことも多々あると思います。  しかし、患者さんをいざ見に行くと、下腿の浮腫はまだまだ残ってるし、レントゲンを撮っても胸水はまだまだたっぷり、、、なんてケースは日常茶飯事です。唯一、エコーだけが「IVCのハリはとれて呼吸性変動も出てきている」みたいなケー

「輸液」をシンプルに理解する第一歩

「初学者が輸液をシンプルに理解するには、こう考えてみては?」という提案です。 まず、  ① 急性期の輸液  ② 慢性期の輸液 を分けて勉強することです。 「主な輸液の目的が、シチュエーションによって違う」ということをしっかり理解しておいてください! そして、① 急性期の輸液は細胞外液を使用すること。 判断が難しいことや、判断ミスが命取りになることもありますが、「循環が破綻していれば基本的にはまず細胞外液を入れる」ことを覚えておいてください。 ② 慢性期

ICUでの輸液反応性 〜SVV〜

では、ICUシチュエーションならどのように輸液しますか? 実は、「輸液管理(stressed volumeの管理)が大事な患者がICUに入る」といっても過言ではありません。時々刻々と変わる患者の病態に合わせて、そのつど補液が適切かどうかを考えながら管理するには、ずっと看護師さんがついていてくれるような環境でないと厳しいからです。 ICUでは、「SVV」が利用出来ることが多い しかしICUという環境はそれだけに輸液管理に特化した装置を沢山使用できます。資源が相対的に潤沢

輸液反応性(入れるべきか 入れぬべきか)

ショックへの戦略は補液と血管収縮薬(と強心薬) 循環動態が不安定(つまりショック)のときに、①補液と②血管収縮薬が主な戦略になると思います。強心薬の使い方は、別記事にあります(しぶい薬なので難しいかな?)。  いずれも前負荷を増やす行為ではありますが、②血管収縮は後負荷も増やします。その代表であるノルアドレナリンは若干ながら心収縮能も上昇させます。 血管収縮薬だけで戦うな(〜これはみんな知ってる〜) 血管収縮薬であるノルアドレナリンは、高流量で使用しすぎると心負荷による不整

その場が「しのげる」循環作動薬の知識

臨床で必要な知識は、その場をしのげる知識 研修医がなかなか調整を任されたり、自分の判断で開始したりすることがめったにないのが循環作動薬ではないでしょうか。これらの薬剤が必要な患者さんというのは、(補液のときも述べましたが)重症なことが多いからです。  だからこそ、いつか自分が使わなければならないときのために学びたい。そう思って熱心に勉強している人もいると思います。しかし、教科書に出てくるのはカテコラミンの分類、α刺激、β刺激、、、などなど。β1, 2まであって、「β1刺

虜になる循環の生理学⑥循環作動薬

 最後の章になります。輸液や輸血以外の、いわゆる点滴薬を使った循環管理手法になります(本書でも、本項でも、内服薬については扱いません。とくにICUでは点滴薬が基本だからです)。  抗不整脈薬はすでに述べた記事が割り切りが良いのでそちらを参照ください!まず、本項で登場する薬剤グループを紹介しました。  循環管理において、心拍出量の調整が大切なことは繰り返し述べてきました。そしてその心拍出量(CO)は、 CO = HR(心拍数)× SV(一回拍出量) でした。  まず、

虜になる循環の生理学⑤前負荷

復習 前回、静脈系の圧についてはさらっと触れるだけにしました。前負荷は増やせば増やすほど心拍出量を増やしますが、(輸液によって)静脈系の圧が上がりすぎると有害事象が出るので、過剰じゃない程度にしましょう、と。  そして、前負荷のコントロール法として、輸液は何にすれば良いか?紹介しました。基本的にはラクテック(乳酸リンゲル)のような晶質液(クリスタロイド)で良いでしょう。Hbが7g/dL未満であれば輸血も検討ですが、粘稠度が上昇するため、輸血のインパクトは思ったほどではない、

虜になる循環の生理学①本の紹介

 呼吸循環に関する基本の部分(細かい知識はすべて後回しにしてきたつもりです)をいくつかの記事で述べてきました。  ここで、実は先月くらいに読んで感動した本があったので、紹介しておきます。一種の書評です。もちろん、本書が気になった方は買って読んでいただいても良いのですが、僕がいつも現場で後輩に伝えていることと一致することが沢山あったので、一部抜粋し紹介しておきます。 書名はタイトル通り「虜になる循環の生理学」です。 多くの生理学書は実践的立場から書かれていない 僕は常々、

「脱水患者を受け持ちました。『とりあえず3号液』でいいですか?」 〜『とりあえず生食』の方がいいよ」〜

 では、初期研修医でも受け持つ可能性のある患者さんで、「脱水」がある患者さんの輸液はどうしましょう?と聞かれたら、どうアドバイスするだろう?と考えてみました。いつも通り「ざっくり」いきましょう! ポイントは2点にしました。「脱『水』」 と 「脱『Na』」の違いを理解しよう! 脱「Na」は循環に影響し強い症状を起こすので、晶質液で素早く補正! これらについて解説していきましょう! 脱「水」と脱「Na」って? まず、なんでもかんでも「脱水」と呼ぶことがあまり良くないことは

「輸液について教えてください」「テキトーでいいよ」の連鎖

輸液について教えてください 自分も含め、研修医が最初に困り、誰かに教えてもらいたい内容の上位にランクインする質問はこれでしょう。そして、みんないろんなことを勉強したり教わったりするものの「モヤモヤしたまま」だったりする。  何度か、輸液についてのレクチャーを考えたことがある(というよりはレクチャー内容をワードにまとめたことがある)のですが、どんな本を参照しても、「ホントの初心者向けに『ざっくり』書かれた」本がないことに気づきました。やはり書物では「ぶっちゃけ」が書けないので

循環管理のうち「心臓」の部分

 実は、既に「急性期のvolume control」のところで述べたことですので、一部は復習になります。  ここでは、心拍出量(CO)の調整を行います。 心拍出量(CO) = 心拍数(HR) × 一回拍出量(SV)  なので、①レートの調整と、②一回拍出量の調整の2点になります。  ①レートの調整について。  特に不整脈がなければ普通、「必要なだけのレートになるように自動で調整される」はずです。ですが、その心拍数が100bpm. とかになるようであれば、それはさすがに「

「循環管理」のうち、「血液」の部分

 さて、何度か「volume control」として述べてきたことですが、循環管理についての話になります。  全身の組織が求めている酸素を不足なく届けるために循環管理が重要です。ワッサーマンの歯車でいうところの「心臓・血液」にあたります。 血液(ヘモグロビンが大事)  酸素を運ぶのは血液中のヘモグロビン(Hb)であることはほとんどの方がご存じと思います。  ややこしいのですが、酸素などの気体は「血液のような液体」にも一定量溶けることができます。しかし、その総量があまりに