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体液コントロールと腎機能①

体液コントロールの難しさは心不全でも「一緒」

 心不全患者さんの体液コントロール中、Creの上昇に悩まされた経験はよくあるのではないでしょうか?特に利尿薬でコントロール中にCreが上昇してきた場合、「利尿のかけすぎかな?」と思うことも多々あると思います。

 しかし、患者さんをいざ見に行くと、下腿の浮腫はまだまだ残ってるし、レントゲンを撮っても胸水はまだまだたっぷり、、、なんてケースは日常茶飯事です。唯一、エコーだけが「IVCのハリはとれて呼吸性変動も出てきている」みたいなケースです。

Cre上昇の正体は、Na利尿薬がもたらす「血管内hypovolemia(stressed volumeの低下)」

 体液分画を復習してみましょう。

 そして、その分画のうち、みなさんがよく使う「ループ利尿薬」のような「Na」利尿薬はどこに作用するのでしょうか?

 一度、想像してみてください。そして、想像できたら下の図をみて答え合わせをしてみてください!

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 さらには、利尿薬のターゲットとなる腎臓への血流(尿細管に作用する利尿薬は、「糸球体で濾過された血液」にしか作用できませんよね)は、心拍出量に影響されます。この心拍出量を決める因子が「stressed volume(≒前負荷」でした。
 Na利尿薬は、腎臓に流れた血液から、「Naと水」を排泄することで、体液をマイナスバランスにしますが、その結果、心拍出量も低下しやすいです(もちろん、「うっ血性心不全」の患者さん(フランク・スターリング曲線で、水平部に位置しているはずの患者さん)ではその影響は小さいはずですが、徐々に心拍出量は低下するはずです。その結果、腎血流も低下し、利尿薬が効きにくくなってきます。そして、それが「GFR低下→Cre上昇」という形で現れてきます。

Na利尿薬は、まず血管内から除水してしまう

 つまり、「Na」利尿薬というのは、どうしても、まず「血管内」から体液を引っ張ってきてしまうのです。これをイメージしやすくするとこんな図になります。いかがでしょうか?

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 心不全患者さんに「見た目の体液貯留が残存しているのに、血管内はhypoでCreも上昇してしまっている」状態は、こうして生じます。心不全患者さんでは、Naと同時に(もしくはそれ以上に)水も貯留しています。その「水」まで効率よく引っ張ってくるには、どうしても「浸透圧利尿」という手段をとるしかありません。

僕が「水利尿薬」や「高張食塩水+Na利尿薬」を使う理由

 そのため、「胸水」や「下腿浮腫」のような、「引っ張ってきにくそうだなあ」と思うような体液貯留のある患者さんでは、僕は早期から水利尿薬(トルバプタン)などを使用します。もしくは、「あえてNa濃度の高い食塩水」を投与しながらNa利尿薬を使用します。そうすることで、効率的に除水が図れて、かつ「Creの早期上昇」も抑えられるからです。


 水利尿」と「Na利尿」について利尿薬一式を復習したい方、突っ込んで勉強したい方へ下記をよくオススメしています。



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