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ICUでの輸液反応性 〜SVV〜

 では、ICUシチュエーションならどのように輸液しますか?

 実は、「輸液管理(stressed volumeの管理)が大事な患者がICUに入る」といっても過言ではありません。時々刻々と変わる患者の病態に合わせて、そのつど補液が適切かどうかを考えながら管理するには、ずっと看護師さんがついていてくれるような環境でないと厳しいからです。

ICUでは、「SVV」が利用出来ることが多い

 しかしICUという環境はそれだけに輸液管理に特化した装置を沢山使用できます。資源が相対的に潤沢です。特に、前回述べた「輸液反応性」の動的指標であるSVVが利用できるのです。

 ICU入室患者では「気管挿管」され「人工呼吸器管理」されている患者が多いですね。調節呼吸下であれば、動的指標のうち「SVV」が使用できます(心房細動じゃないことは確認しておいてください)。

 SVVは動脈圧ラインにFloTracという装置を装着することで測定可能です。リアルタイムに一回拍出量SVやその呼吸性変動SVVが表示され(正確性には限界がありますが)、これらが輸液するかどうかの指標になるのです。

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※ エドワーズライフサイエンス社カタログより

SVV > 13ならおおむね輸液反応性あり

 というわけで、患者の循環動態を改善するのに、「輸液」は有効か?と考えたときに、SVV > 13(くらい)なら補液は有効と考えて良いでしょう。
 逆に、「それ以下ならあんまり意味ないよ」という感じです。

 ここで、「虜になる循環の生理学」の紹介でも述べたように、「不必要に心拍出量を上げる必要はない」ことに注意してください。
 SVVを見始めた初心者が陥りがちなミスとして、「SVV > 13なら晶質液を入れ続けてしまう」ことがあります。SVV > 13は「入れろ」ではありません。「入れてもいいよ」です。

循環動態が悪いかどうか、を見る目が必要になる

 そうならないために、循環がうまくいっているかどうかをみる「目」を養わなければなりません。それが、「虜になる循環の生理学」の冒頭で紹介されていた2項目です。思い出せますか?

酸素運搬
組織灌流

 です。後者の指標になる血圧はみなさんよくみていると思います。見えている指標には飛びつきやすいのですね。前者はどう把握するのでした?

 前者を「見える」化するにはPAカテ(スワン・ガンツカテーテル)が必要でした。いまではICUでも留置されているケースは稀です。なので、複数の指標から「推測」するしかありません。尿量が十分か?末梢は冷たくなっていないか?意識障害(興奮)はないか?脈拍数は早くなってしまっていないか?頻呼吸ではないか?などをみて「想像」するのです。動脈血ガスを採取してLac(乳酸)が上昇していませんか?
 うまくいっていないだろうな、と思ったら、以下の3つの戦略から選びましょう。

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 ここで、「輸液を選ぶかどうか」「どれくらいいくか」の指標になってくれるのが、SVVです。いかがだったでしょうか。もしICUで挿管患者を受け持つことになれば、輸液の指標にSVVを使ってみてください(くれぐれもSVVに「使われ」ないように!)。


↓生理学的に突っ込んでいるものの、臨床目線で非常に読みやすい「指南書」です。


↓輸液反応性などをみるのに実際に使われているデバイスなどの解説もわかりやすいです。こちらは「生理学<臨床」というコンセプトで書かれているというイメージです。


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