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「輸液について教えてください」「テキトーでいいよ」の連鎖

輸液について教えてください

 自分も含め、研修医が最初に困り、誰かに教えてもらいたい内容の上位にランクインする質問はこれでしょう。そして、みんないろんなことを勉強したり教わったりするものの「モヤモヤしたまま」だったりする。

 何度か、輸液についてのレクチャーを考えたことがある(というよりはレクチャー内容をワードにまとめたことがある)のですが、どんな本を参照しても、「ホントの初心者向けに『ざっくり』書かれた」本がないことに気づきました。やはり書物では「ぶっちゃけ」が書けないのでしょうか。だからこそ研修医なりたてのみんなは先輩に相談・質問することになる(ぶっちゃけが聞きたい)。

あれ、みんないうことが違うぞ?

 では、先輩の答えはどうでしょうか。「先輩Aのいうことと、別の先輩Bの言うことが違う」ことはみなさん経験されるでしょう。「あれ?みんな言ってること違うくない?」と。なんなら、「ぶっちゃけテキトーだよ。フィーリング?」みたいに教わることも多々ある、、、

 そして、よく分からないまま「なんとなく」輸液を自分が主治医で担当するようになって、なんだかんだうまくいく症例ばかり経験して、「やっぱフィーリングなのかな?」と思っているうちに、自分にも後輩が出来る。今まで自分が先輩にしていたのとまっっったく同じように、「輸液について教えてください。」と言われる。自分が教わってきたように「テキトーでいいよ、よっぽど外さなければだいたいうまくいくから。」と答える。なんなら、「人の腎臓は賢いから、多少間違っても修正してくれるからね。」とちょっと付け足してみたり。

 「輸液について教えてください」の答えは「ぶっちゃけみんなテキトーにやってるよ。だいたいでいいよ。」になるのでしょうか。

 このnote記事ではここにもう少し踏み込んで語ってみたいと思います。研修医になったばかりの若くて勢いのあるみなさんが、「がっかり」しないために書いていきますよ。

研修医がいきなり任されるような症例では、点滴はテキトーで良い

 で、僕もぶっちゃけると、「よほど状態が悪くない患者については、輸液はテキトーで良い。」と答えます。

 逆に状態が悪くて、「輸液ですら超厳密にやらないといけない」ような患者では、「『急性期のvolume control』について」に記載したような、「循環管理の一環としての『補液』」が必要になります。そういう症例では研修医が補液を任されることは「稀」でしょう。だから、循環動態が揺れ動くような重症患者を受け持たない限り、「突き詰めた輸液管理」を意識することがないまま、医師として学年が上がってしまうのです。このことが、上記の連鎖の原因ではないでしょうか(そして、そのこと自体に特別「大きな」問題はないと思っています)。

重症ではなく安定しているが、点滴が必要な人。任されるような症例はそんな感じですよね?

 では、よくある「輸液」を任されたのだけど、「一日に必要な水分量は、、、体重あたりどれくらいで、カロリーは、えーと、」というような場面についてはどうでしょうか。慢性期の安定している患者さんだけど、食事がとれていない、というようなケースですね。

 ぼくのぶっちゃけは、「『一日必要量』について、『だいたいどれくらいか』を知っておくことはとっても大事。だけど、厳密に計算通りの水分量・栄養量を投与しようと思っても、そんな理想の点滴液を作ることなんて現実的に無理なので、結局『ざっくりやるしかないよ』」です。

 だから、多くの場合、「ご飯が食べれてないなら3号液を3本(1,500mL)くらいいっとけば?」になります。

 まとめましょう。デビューしたての研修医へのメッセージは二つです。

デビューしたての研修医へ

① 輸液をミスると危ないような(循環動態の破綻している/しかけた)重症患者の輸液をいきなり任されることはない。先輩ももしかしたら担当したことがない。

② 最初に任されるような「ご飯が食べられてない」患者への輸液はまず、「体重×30mLくらいの3号液」を一日かけていっとけば概ね間違えない。細かいことはそのあとから考えよう。

 どうですか、初心者の方はちょっと安心しましたか?もちろん、この記事では細かいことについても「ざっくり」路線は維持しつつ、書いていきますよ。質問があればドシドシ連絡やコメントくださいね!


循環動態が不安定な患者さんへの点滴の仕方が知りたい方は、以下の記事をご参照ください!

参考になる書籍も紹介しておきます。


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