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僕が初めて身震いした究極の"マリアージュ"

マリアージュとは

この言葉を初めて知ったのは、ワイン業界に入ってからでした。ワインと料理の相性がいい事をフランス語で結婚を意味する mariage(マリアージュ)と言います。とてもオシャレでロマンチックな例えですよね。さすが、フランス人!と感心したのを覚えています。

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マリアージュに正解・不正解はあるのか?

よく聞く典型的なマリアージュを例に挙げるとすれば

・生牡蠣 × すっきりタイプのシャブリ
・Tボーンステーキ × ナパのカベルネ  など

基本は、同じ方向性の料理とワインを合わせます。味が濃いものには、しっかりとしたボディのあるワイン。和食など繊細な料理には、すっきりしたワイン。

ただ一つ申し上げたいことは、相性が良いと感じるのも悪いと感じるのも個人の感覚なので、そこに絶対的な正解はありません。

なので、「牡蠣ならシャブリ一択でしょ」のような決めつけは、本当にナンセンスだなと思います。その他にも合うワインは五万とありますし、シャブリの味わいだって生産者によってまちまちですし。

それは、まるで絶対に‘結婚’を認めない頑固な親のようです。「我が子の結婚相手は、こんな人でないと許さないぞ!」

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生牡蠣に赤ワイン。いいじゃないですか!今は多様性の時代ですし、ワインと食事の組み合わせだって、楽しむ本人の自由ですよ。

先ほどの基本例と異なる組み合わせとして、ワイン通の方は、ご存知の方も多いと思いますが、ブルーチーズ×貴腐ワイン、なんて組み合わせもあります。特にロックフォール×ソーテルヌは、個人的にかなり好きなマリアージュです。一見、お互いに似た味わいでも、同じ方向性でもないですが、ブルーチーズの独特な香りと塩気に、貴腐ワインの甘美な香りと味わいが絶妙に合います。

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例えるならば、お笑い芸人の山里亮太さんと女優の蒼井優さんのようです。一見、あれ?っていう組み合わせですが(山里さんごめんなさい笑)、記者会見を見ただけで分かる相性の良さに思わず微笑んでしまいますよね。あの会見を見た瞬間に、ロックフォールとソーテルヌだ・・・と思いました笑

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なにも全てのマリアージュがキャビアとシャンパーニュ、ブラットピットとアンジェリーナジョリーである必要はないのです。意外なマリアージュの発見にこそ、僕は魅了されます。

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話はそれますが、2016年に離婚したお2人が所有してるワイナリー「ミラヴァル」はどうなるのか?離婚当時は話題になりましたよね。今もきちんと生産が続けられており、ワイン好きとしてはホッとしています。


初めてのマリアージュ体験

僕が初めて「マリアーージュ!」と声を出してしまったのは、今から5年前。

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千葉県流山市にある京料理「かねき」さんでのことでした。


新郎:富山県氷見市の寒ブリ

日本海の冬場は海水温が下がり、その荒波に揉まれ、色々な海産物が美味しくなる季節です。その中でも、冬の魚と言えば、やはりブリですよね!(これから夏に向かう季節に、このご紹介はナンセンスかと思いますが、お付き合いください笑)

ブリは初冬になると産卵のため、北海道から九州の五島列島付近まで南下をするのですが、中間地点である氷見市近海で捕獲したものが、最も脂がのっている状態だといわれています。そのブリの王様は「ひみ寒ブリ」と呼ばれ、富山県氷見市で捕られます。

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個人的にマグロの大トロのような脂身の多いものは好みではないのですが、この寒ブリはとても身がしまっていて、脂身とのバランスが格別です。その京料理屋さんでは、お刺身で頂きました。写真左のお刺身です。


新婦:富山県氷見市のシャルドネ

ここで大将におすすめいただいたのが、2014年 SAYS FARM(セイズファーム) OJICO CARDONNAY(オジコ シャルドネ)です。富山県氷見市に位置するセイズファームさんのワインは当時から知っておりましたが、都内のワインショップを探しても売切ればかりで、飲んだことはありませんでした。

「日本産のシャルドネ!?しかも富山県!?」と印象に残っておりましたし、何よりも雑誌やウェブサイトでかなり良い評価をされていたので、ずっと気になっていました。

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しかし僕個人としては、お刺身にはどうしても日本酒が飲みたくなります。ワインの味わいが勝り、お刺身の良さを消してしまうことが多いからです。ただ、この寒ブリとセイズファームさんのワインの相性は、全く異なるものでした。

まず、銘柄の名前にもなっているオジコとは、どうやら氷見の言葉で「弟」「次男」を差すようです。なぜ「弟」なのかと思い、HPを拝見させていただいたところ、同じブドウ品種でシャルドネ造る「プライベート・リザーヴ」というワインがありました。このワインを「兄」に例えているのではないかと勝手に推測しております。(真相については、コロナウィルスが落ち着いた頃、直接ワイナリーにお伺いしてお聞きしたいと思います!)

清涼感ある花やレモンの香り。樽は一切使用しておらず、フレッシュですが上品な果実味と爽やかな酸を感じます。オリともに寝かせたことで生まれる蜜のような味わい深さもあります。

日本ワインは、後味にキレがあり余韻が短めで、飲んだ直後に次の料理を口に運べるものが多いですが、こちらは上品な酸が口の中で広がり、長めの余韻を感じます。これが氷見のテロワール※なのかと想像しながらグラスを傾けながら感動しました。

※テロワールとは、ワインの味わいを決定づける、その土地特有の地理的要因、主に気候や土壌などの性質を差します。テロワールが異なるので、一つとして同じワインはあり得ないのです。

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この夫婦の相性は

氷見産の寒ブリと、同じ産地のワインを出された瞬間に、既にハートを奪われたと言っても過言でありません笑 

大将、粋です・・・

マリアージュを楽しむには、ワインを一口飲んでから、ブリを口に入れるのがお勧め。ワインを飲み込んだ後に感じる塩味が、寒ブリやお醤油の塩味ととても相性がいいです。寒ブリの脂身も全く気にならず、むしろワインの持つ果実味が両者の旨味を引き立てました。

これ以来、「かねき」さんの大ファンで、何か特別な日やお祝い事があるときは、お邪魔しています。


まとめ

今回ご紹介した寒ブリのお刺身とシャルドネという組み合わせは、同じ富山県氷見のテロワール(土地・気候・海水)を感じ、個人的にはこれ以上の組み合わせは到底見つからないだろうと思います。

しかし、この冬どうしても「寒ブリ×シャルドネ」を合わせたい方は、やはり日本産のもので、ステレンスタンクで発酵・熟成されたものがおすすめです。樽を使用したシャルドネですと、コクが強くなり、魚が生臭く感じたり、その良さを消してしまいます。

ただ、冒頭で申し上げた通り、あくまで好みです!樽がバキバキに聞いたものに、刺身でも間違いではないですよ!自分が最高の組み合わせと感じるもの、それがマリアージュです!

教科書にある組み合わせはいったん置いておいて、自分の中のマリアージュを探し、それを共有することがワインの楽しみ方のひとつだと思います。

最後までご覧いただきありがとうございます。皆様のお勧めもお聞きしてみたいです。🤤

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