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「ナチュラルワイン」が好きor嫌いと言われたら?#3 

「ナチュラルワイン」と呼ばれるワインや、売り文句が世間に溢れていますよね。
完全にブームのナチュラルワインですが、「ナチュラルワインしか飲みたくない」という人と、「ナチュラルワインは受け付けない」という両極端の人がかなりの数存在している印象です。
困ったことに、テーブルを囲む仲間同士でもその両極端のスタンスの方がいることも珍しくなく、ワイン選びに苦労することが増えてきました。

私個人としては、両者の好む要素や嫌がる要素はいずれも理解できる部分が多く、もっとうまくやれないものかと日々悩んでいます。
どちらにもおいしいワインはあるし、それぞれを楽しめたらと思うのです。

そこで、今回からは「ナチュラルワイン好き」と、「ナチュラルワイン嫌い」の溝を埋めるためのヒントになる考え方を書いてみたいと思います。

まずは「ナチュラルワイン」と呼ばれているものには、どんなものがあるかを整理します。

※「自然派ワイン」という言葉もありますが、肌感覚ではナチュラルワインという言葉の方が流行っている印象で、より固有のイメージを持っているよう思います。この記事では、自然派ワインと言う言葉で語られるものも、ナチュラルワインとしてあまり区別せず書いていきます。

ナチュラルワインの定義は?

ナチュラルワインの定義は様々なところで議論されていますが、定議論と相性が良くないのか、「ああではあって、こうではない」的な話で締めくくられることが多い印象です。
これから議論が深まり、仮に「何が本物のナチュラルワインか」という定義が一部で定まったところで、世間的な合意が得られることは無いか、ずっと後になるはずです。

当然、市場や消費者もそれを待ちません。ほとんどの人は、定義論なんてどうでも良くて、今晩飲むワインが今風でイケていて、自分好みであることだけを望んでいます。

そこでこの記事では、ここ最近の市場でナチュラルワインと呼ばれているワインについて整理しようと思います。ナチュラルワインの定義論はせず、「皆がナチュラルワインをどのように認識しているのか」に焦点を当てたいと思います。

ナチュラルワインと呼ばれるワインのパターン

大橋健一MWは、日本でナチュラルワインと呼ばれているものは、以下のパターンがあると分析しています。

①慣行農法だが、亜硫酸はほとんど使用していない。
②慣行農法で、 亜硫酸も使用している。
③有機栽培で、亜硫酸もほとんど使用していなく、有機認証を保持している。
④有機栽培で、亜硫酸もほとんど使用していなく、 有機認証は保持していない。
⑤有機栽培で、 亜硫酸は使用し、 有機認証を保持している。
⑥有機栽培で、亜硫酸は使用し、 有機認証は保持していない。

「自然派ワインの定義」(Sommelier183)大橋健一MW

①有機栽培、②亜硫酸の添加、③有機認証に焦点が当てられています。

パターンが複数あるので、見逃さないために重要なポイントを強調すると、ありとあらゆるワインがナチュラルワインとして扱われている可能性があるということが示されています。
②のパターンの「慣行農法で、 亜硫酸も使用している」って、流石にナチュラルさを見出すことが難しいですよね。しかし、定義論が曖昧なので売り手の胸三寸でナチュラルワインとして扱われることもあります。(大橋MWも、このパターンを指して、現状は混乱を招いていると評しています。)

さらに重要なのは、裏を返せば、③のように最もナチュラルに見えるワインでも、あまりそうは扱われないものもあるということです。

以上の話を踏まえ、以下に挙げる銘柄のうち、どれがナチュラルワインか考えてみてください。


ニコラ・ジョリー:クロ・ド・ラ・ クーレ・ド・ セラン
マルセル・ダイス:アルテンベルグ・ド・ベルグハイム
フィリップ・パカレ:シャルム・シャンベルタン

もちろん、定議論が主眼ではないため「これがナチュラルワインか?」に対してのジャッジはしかねますが、これらはいずれも、③の「有機栽培で、亜硫酸もほとんど使用していなく、有機認証を保持している」に該当する生産者のワインです。さらには、培養酵母を用いずに、天然酵母のみで発酵を行います。

この3本が「ナチュラルワイン」という分類から漏れることがあるのは、あまりに高名な生産者やAOCで、クラシックなラベルであるためではないでしょうか。いずれもビオディナミで有名な生産者たちのワインなので、「自然派」という売り方はよく見るのですが、「ナチュラルワインです」と売り出しているのはあまり見たことがありません。

また、これの裏を返せば、小規模生産者でポップなラベルだったりすると、多少自然でないとされる要素を持つワインでも、自然派ワインとして認識されることもあるということです。

「ナチュラルワイン好き」と、「ナチュラルワイン嫌い」の溝を埋めるワイン

こういったパブリック・イメージの曖昧さには、モヤモヤを感じる人もいるかもしれません。しかし、ポジティブに考えれば希望が見える話なんじゃないかと思います。

何が言いたいかと言うと、上記の3本は「ナチュラルワイン好き」と、「ナチュラルワイン嫌い」の溝を埋めるワインになりうるということです。

上記の3本が全く受け付けないと言う「ナチュラルワイン嫌い」は多くはないでしょう。ナチュラルワインという言葉がブームになる以前からずっとトップ生産者、というか、レジェンドみたいな生産者のワインです。彼らのワインを昔から嫌いでずっと嫌いという人もいるかも知れませんが、かなりレアな存在だと思います。

反対に「ナチュラルワイン好き」も、上記の3本をナチュラルワインだと認識していなかったとしても、「このワインは有機栽培で、亜硫酸もほとんど使用していなく、有機認証を保持している」と言えば、「そりゃいいね」となってくれる人は多いんじゃないかと思います。

肝心の風味や味わい的にも、両者を満足させるようなエネルギッシュな果実風味とクリーンさを兼ね揃えており、ナチュラルワイン好きが好む柔らかい感触もあります。
これらのワインをきっかけに、「ナチュラルワイン好き」と、「ナチュラルワイン嫌い」がそれぞれの好むワインへの理解を深めてくれたら良いなと思います。

今回の記事はここまでです。何かの参考になれば幸いです。

今後、ナチュラルワインをより良く理解できるよう、ナチュラルワインによくある風味が、どのように生まれているかも書いてみたいと思います。人間、頭でっかちなもので、頭で理解できることが増えると拒否感が薄れたりするものですので。

【書きました。下のリンクを御覧ください。】

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